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林野庁

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第1部 特集 第3節 生物多様性を高める林業経営と木材利用に向けて(4)

(4)森林・林業施策全体を通じた生物多様性の確保

我が国の恵まれた気候条件の下で、森林とそこに生育・生息する多種多様な生物は、一部は厳格に保護・管理され、それ以外では継続的に保全管理・利用されることにより、⾧い年月をかけて、変化しながらもその多様性を育んできた。近年は、戦後造成された人工林資源が育成段階から利用可能な段階を迎え、林業生産活動が活発化しているほか、利用の縮小により特有の生物多様性が損なわれつつある里山林においても、人による働き掛けを強める取組が始まっている。

このような森林生態系から生み出される木材等の資材や良質な水、大気中の酸素の供給、気候の安定といった多岐にわたる恩恵が、これまで絶えずもたらされてきたのは、森林資源を利用すると同時に造成してきた林業経営を含む人の営みがあったからこそである。これらの恩恵を将来にわたり享受していくため、原生的な天然林などは引き続き保護・管理を行いつつ、人工林のうち、林業に適した森林では、森林資源の循環利用を促進し、林業を継続するための条件が厳しい森林では、侵入広葉樹を残しながら針広混交林等への誘導を図っていくこととしている。このような考え方の下、人手を加えていく森林では、「森林の生物多様性を高めるための林業経営の指針」等も踏まえ、森林の生物多様性を確保する形で持続的な林業経営が行われていくことが重要であり、林業事業体等による一層積極的な取組が期待される。また、このような林業経営が行われていくためには、そこから生産される木材を利用することが社会的にも評価され、木材を介した経済的な循環が促進されることで、更なる木材利用につながることが不可欠であり、木材需要者・消費者も含め、幅広い関係者の理解・参画が望まれる。

その際、行政や森林・林業関係者は、森林生態系からもたらされる恩恵を受ける国民のニーズも踏まえながら、個々の森林の状況に応じた森林管理が行われ、多様な森林がバランス良く形成されるよう取組を進めていく必要がある。

森林・林業基本計画においては、森林を適正に管理して、林業・木材産業の持続性を高めながら成⾧発展させることで、豊かな社会経済を実現する「森林・林業・木材産業によるグリーン成⾧」を掲げている。また、全ての森林は、豊かな生物多様性を支える重要な構成要素であるとの認識に立ち、森林が多様な生物の生育・生息の場として機能し、持続的な林業生産活動を通じて、空間的にも時間的にも多様な森林が形成されるよう、各般の施策を展開していくこととしている。

今後も、森林・林業・木材産業関係者、木材需要者、消費者等の関係者が、森林の保続と生物多様性の重要性、林業経営の意義や貢献について認識し、理解を深めていくことが重要である。また、それに対する相互の責任を認識しながら、生物多様性を高める林業経営と、持続可能な木材利用の実践を通じて、我が国の森林を将来にわたり受け継いでいくことが求められている。


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