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林野庁

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第1部 第3章 第1節 木材需給の動向(4)

(4)違法伐採対策

(世界の違法伐採木材の貿易の状況)

2022年に英国王立国際問題研究所(チャタムハウス)が公表した報告書(*14)によると、主要な木材由来製品輸出国37か国について調査した結果、木材由来製品の違法取引の割合は、過去20年間で輸出量、輸出額共に減少しているものの、国際貿易の全体的増加に伴い、その数量及び金額は増加している。調査対象以外の全ての国の輸出が完全に合法であると仮定すると、調査対象37か国による2018年の違法伐採に係る貿易は、材積ベース(丸太換算値)で世界の輸出の少なくとも4%(約4,000万m3)、金額ベースで3%(約70億ドル)を占めたと推定している。違法伐採や違法伐採木材の流通は、森林の有する多面的機能に影響を及ぼすおそれや、木材市場における公正な取引を害するおそれがある。EU、オーストラリア等の諸外国では、木材の取引に当たり、市場における最初の出荷者等に対し、木材等の違法伐採のリスクの確認やそのための体制整備等について義務を課している。


(*14)CHATHAM HOUSE(2022)Establishing fair and sustainable forest economies



(政府調達において合法性・持続可能性が確保された木材等の利用を促進)

我が国では、まずは政府調達において合法性・持続可能性が確保された木材等の利用を促進するため、平成18(2006)年に、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」(以下「グリーン購入法」という。)に基づく基本方針において、合法性や持続可能性が証明された木材・木材製品を政府調達の対象とするよう明記した。同基本方針の策定に併せて林野庁が作成した「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」の証明方法を活用し木材を供給する事業者として、令和7(2025)年3月末時点で、149の業界団体により12,002の事業者が認定されている。


(「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」による合法伐採木材等の更なる活用)

クリーンウッド法に関する情報提供ホームページ「クリーンウッド・ナビ」

民間需要においても、平成29(2017)年に施行された「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」(以下「クリーンウッド法」という。)により、全ての事業者は合法伐採木材等(*15)を利用するよう努めることが求められ、特に木材関連事業者(*16)は、扱う木材等について「合法性の確認」等の合法伐採木材等の利用を確保するための措置を実施することとなった。この措置を適切かつ確実に行う木材関連事業者は、国に登録された第三者機関である登録実施機関に申請して登録を受けることができる。登録木材関連事業者は、令和7(2025)年3月末時点で、729件登録されている。第一種登録木材関連事業者(*17)により合法性が確認された木材は、令和5(2023)年度は約3,600万m3と令和5(2023)年の木材需要量の約4割となっている。

林野庁では、情報提供ウェブサイト「クリーンウッド・ナビ」を公開し、これを通じて合法伐採木材等に関する情報提供や、木材関連事業者の登録促進等の取組を行っている。

なお、政府調達については、グリーン購入法に基づく基本方針の下、木材関連事業者は、クリーンウッド法に則し、合法性の確認や分別管理等をすることとなっている。

このような中、クリーンウッド法の施行状況等を踏まえ、違法伐採対策の取組を強化することを目的として、川上・水際の木材関連事業者が合法性確認等に確実に取り組むよう義務付けることなどを内容とするクリーンウッド法の一部改正法が、令和5(2023)年4月に成立し、令和7(2025)年4月に施行されることとなった(資料3-9)。林野庁では、円滑な施行に向け、全国各地で説明会や研修を実施し制度について周知しているほか、事業者による合法性確認の取組に対する支援やシステムの整備等を行った。

資料3-9 我が国の木材価格の推移

(*15)我が国又は原産国の法令に適合して伐採された樹木を材料とする木材等。

(*16)木材等の製造、加工、輸入、販売等を行う者。

(*17)樹木の所有者から丸太を受け取り、加工、輸出等の事業を行う木材関連事業者又は木材等の輸入を行う木材関連事業者のうち、登録を受けた者。



(国際的な取組)

我が国は、木材生産国における合法性・持続可能性が確保された木材等の流通及び利用に向けた国際支援に取り組んでいる。2024年には、国際熱帯木材機関(ITTO)を通じて支援していた、グアテマラにおける木材サプライチェーンのトレーサビリティ向上のためのプロジェクトが完了し、同国での合法で持続可能な木材サプライチェーンの構築が促進された(事例3-1)。

また、「アジア太平洋経済協力(APEC)」の「違法伐採及び関連する貿易専門家グループ(EGILAT)会合」では、2024年2月及び8月に違法伐採対策の取組状況についての情報交換が行われた。我が国からは改正したクリーンウッド法の概要等について報告を行った。

事例3-1 国際熱帯木材機関(ITTO)への拠出によるグアテマラの木材サプライチェーンのトレーサビリティ向上プロジェクト

グアテマラでは、小規模な森林所有者や木材関連事業者の多くにとって法令遵守は労力とコストを投じる動機づけに乏しいこと、伐採地から搬出される木材に対する行政当局の管理・監視体制が脆弱なことなどから、木材流通の実態が不透明で潜在的に違法伐採が起きやすい状況にあった。

同国の国立森林研究所(INAB)がこれらの課題解決に向けて実施するプロジェクトに対し、林野庁はITTOへの資金拠出を通じて支援を行い、木材トレーサビリティの向上を図る様々な取組を推進した。このプロジェクトの成果の一つとして、従来の方法では時間・労力・コストの面で非効率であった木材の材積計測が、写真撮影と簡単な測定だけで可能となるスマートフォンアプリが開発された。このアプリの活用により、林業会社の在庫管理能力の強化、木材輸送に係る許認可取得の迅速化、行政当局の関係者による確認の効率化が図られた。アプリ使用者からは好評を得られており、INABは現在、現場への更なる普及に取り組んでいる。

本プロジェクトでは、このようなアプリ導入による効果に加え、小規模な森林所有者向けの簡易な森林計画策定や、零細な木材関連事業者が法規制の下で適切に事業を行うための支援等を実施しており、これにより、同国内における合法で持続可能な木材サプライチェーンの構築が促進された。

なお、2024年7月にFAOが公表した「世界森林白書2024(注)」において、森林部門のイノベーションに関する18の優良事例の一つとして本アプリを活用した取組が紹介されるなど、他の木材生産国での活用も期待されている。

(注)FAO(2024)The State of the World's Forests 2024: Forest-sector innovations towards a more sustainable future



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