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林野庁

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第1部 第1章 第4節 国際的な取組の推進(1)

(1)持続可能な森林経営の推進

(世界の森林は依然として減少)

森林・林業分野の国際的取組

国際連合食糧農業機関(FAO)の「世界森林資源評価2020」によると、2020年の世界の森林面積は約41億haであり、世界の陸地面積の31%を占めている(*71)。世界の森林面積は、アフリカ、南米等の熱帯林を中心に依然として減り続けている(資料1-32)。

森林減少面積について、2010年から10年間の年平均は470万haとなっている。また、新規植林等による増加を考慮しない場合における年平均の森林減少面積(2015-2020年)は1,020万haとなっており、引き続き森林減少を止めるための積極的な取組が求められている。


(*71)FAO(2020)Global Forest Resources Assessment 2020 Main report: 14.



(「持続可能な森林経営」に関する国際的議論)

国際連合では、1992年に国連環境開発会議(地球サミット)において「森林原則声明(*72)」が採択されて以降、2000年に「森林に関する国際的な枠組(IAF)(*73)」が採択され、これに基づき、経済社会理事会の下に設置された国連森林フォーラム(UNFF)において森林問題の解決策を議論している。

2015年には、国連サミットにおいて「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、SDGsが示された。森林に関しては、目標15において「持続可能な森林の経営」が掲げられているほか、17の目標の多くに関連している。

2017年には、IAFの戦略計画である「国連森林戦略計画2017-2030(UNSPF)」がUNFFでの議論を経て国連総会で採択された。UNSPFには、SDGsを始めとする国際的な目標等における森林分野の貢献を目的に、2030年までに達成すべき6の「世界森林目標」及び26のターゲットが掲げられている。

このほか、2023年に我が国で開催された「G7広島サミット」や2024年6月にイタリアで開催された「G7プーリアサミット」において、「持続可能な森林経営と木材利用の促進へのコミット」等が盛り込まれた成果文書が採択され、従来からその重要性が共有されてきた持続可能な森林経営のみならず、木材利用の促進の重要性についても認識されている。また、2024年5月にニューヨークの国連本部で開催されたUNFF第19回会合(UNFF19)においても、ハイレベル会合の成果文書として、世界森林目標の達成に向けた決意を示す「ハイレベル会合宣言」が採択され、持続可能な木材利用を含む持続可能な森林経営の推進について明記された。


(*72)正式名称は「Non-legally binding authoritative statement of principles for a global consensus on the management, conservation and sustainable development of all types of forests(全ての種類の森林の経営、保全及び持続可能な開発に関する世界的合意のための法的拘束力のない権威ある原則声明)」。世界の全ての森林における持続可能な経営のための原則を示したものであり、森林に関する初めての世界的な合意である。

(*73)UNFF及びそのメンバー国、「森林に関する協調パートナーシップ」、森林の資金動員戦略の策定を支援する「世界森林資金促進ネットワーク」及びUNFF信託基金から構成される。2015年5月に開催されたUNFF第11回会合(UNFF11)において、IAFを強化した上でこれを2030年まで延⾧することなどが決定された。



(持続可能な森林経営の基準・指標)

地球サミット以降、森林や森林経営の持続可能性を客観的に把握するものさしとして、国際的な基準・指標(*74)の作成及び評価に関する取組が、自然条件や社会条件等の違いに応じて複数の枠組みで進められている。そのうち、我が国が参加する「モントリオール・プロセス(*75)」においては、温帯林及び亜寒帯林を有する12か国が7基準54指標を定めている(資料1-33)。

2024年12月には、林野庁主催で国際シンポジウム「温帯林・亜寒帯林における生物多様性の保全と調和した林業経営とそのモニタリング」を開催し、同プロセス参加国や関連する国際機関等の協力を得て、優良事例の共有やモニタリングの在り方等について議論が行われた。

資料1-33 モントリオール・プロセスの7基準54指標(2008年)

(*74)「基準」とは、森林経営が持続可能であるかどうかをみるに当たり森林や森林経営について着目すべき点を示したもの。「指標」とは、森林や森林経営の状態を明らかにするため、基準に沿ってデータやその他の情報収集を行う項目のこと。

(*75)アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、チリ、中国、日本、メキシコ、ニュージーランド、韓国、ロシア、米国、ウルグアイの12か国が参加し、1994年から、基準・指標の作成と改訂、指標に基づくデータの収集、国別報告書の作成等に取り組んでいる。



(森林認証の取組)

森林認証制度は、第三者機関が、森林経営の持続性や環境保全への配慮に関する一定の基準に基づいて当該基準に適合した森林を認証するとともに、認証された森林から産出される木材及び木材製品(認証材)を非認証材と分別し、表示管理することにより、消費者の選択的な購入を促す仕組みである。

国際的な森林認証制度として、世界自然保護基金(WWF)を中心に発足した森林管理協議会(FSC)の「FSC認証」と、ヨーロッパ11か国の認証組織により発足した森林認証制度相互承認プログラム(PEFC)の「PEFC認証」の2つがあり、それぞれ1億6,045万ha(*76)、2億9,722万ha(*77)の森林を認証している。我が国独自の森林認証制度としては、一般社団法人緑の循環認証会議(SGEC/PEFC-J)の「SGEC認証」があり、PEFC認証との相互承認を行っている。

また、加工及び流通の過程において、認証材を他の木材と分別管理できる体制が必要であり、これらの認証の一部として、その体制を審査して承認する制度(CoC(*78)認証)が導入されている。2024年12月時点で、FSC認証とPEFC認証のCoC認証は、世界で延べ7万7千件以上取得されている(*79)。


(*76)FSC「Facts & Figures」(2024年12月1日時点)

(*77)PEFC「PEFC Global Statistics」(2024年12月時点)

(*78)Chain of Custody(管理の連鎖)の略。

(*79)FSC「Facts & Figures」、PEFC「PEFC Global Statistics」



(我が国における森林認証の状況)

我が国における森林認証は、主にFSC認証とSGEC認証によって行われている。

令和6(2024)年12月時点の国内における認証面積は、FSC認証は42万ha、SGEC認証は220万haとなっている。我が国の森林面積に占める認証森林の割合は1割程度と、欧州の国々に比べ低位にあるが、SGEC認証を中心に認証面積は増加傾向にある(資料1-34、資料1-35)。CoC認証の取得件数については、我が国でFSC認証が2,234件、SGEC認証(PEFC認証を含む(*80)。)は472件となっている(*81)。

林野庁では、川上から川下までの連携による認証材の需要拡大や供給体制の構築の取組等を促進している。


(*80)相互承認によりいずれかのCoC認証を受けていれば、SGEC認証森林から生産された木材を各認証材として取り扱うことができる。

(*81)FSC「Facts & Figures」(2024年12月1日時点)、SGEC/PEFC-J「SGEC/PEFC-COC認証事業体リスト」(令和7(2025)年1月13日時点在)



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