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林野庁

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第1部 特集 第4節 人と森林のより調和した関係を目指して(2)

(2)花粉発生源対策を含む多様なニーズを踏まえた森林づくり

(多様な森林づくりを通じた花粉発生源対策への寄与)

森林・林業基本計画の目指す多様な森林づくりを加速化することは花粉発生源対策につながると同時に、花粉発生源対策を強化することは森林・林業基本計画の目指す森林の姿の実現を進めることにもつながる。

林業に適した森林では、森林資源の充実を図りながら循環的な利用を促進するとともに、成⾧に優れ花粉の少ない苗木に植え替えることで、地球環境保全機能や木材等生産機能に優れ、かつ花粉の少ない森林に転換することが可能である。このような資源の循環利用を持続的に進めることは2050年カーボンニュートラルの実現にも貢献するものである。なお、地域の文化や伝統産業等と深く結びついている在来の品種等については、森林の文化機能を構成するものとして、各地域で適切に維持されるよう留意が必要である。

また、林業を継続するための条件が厳しい森林では、植栽されたスギの抜き伐り等により針広混交林等に誘導することで、公益的機能を持続的に発揮し、将来の森林管理コストの低減にも寄与する森林になると同時に、花粉発生源となる樹木の割合を減らし、花粉の少ない森林へ転換させることにつながる。


(人と森林のより調和した状態を目指して)

戦中戦後の乱伐により荒廃した森林の回復や、戦後復興・高度経済成⾧に併せた木材供給力の増大といった社会的要請を背景として誕生した広大なスギ等の人工林は、⾧い育成期間において、国土保全機能や地球環境保全機能等の多面的機能を高め、我が国の安定的な発展に大きな役割を果たしてきた。一方で、当初予期されていなかった花粉症という社会問題を生じたが、近年それらの森林がようやく利用期に入り、新たな森林づくりを進めるタイミングに入ったといえる。

今後は、この機運を捉え、国や地方公共団体、森林・林業・木材産業関係者の適切な役割分担の下、スギ花粉症を何とかしてほしいという国民の要請を踏まえ、花粉発生源の着実な減少と林業・木材産業の成⾧発展のために必要な取組を集中的に実施することが求められている。また、同時に、幅広く国民全体の理解・参画をいただきながら、木材需要の更なる拡大などに、一般消費者も含めた社会全体として取り組んでいく必要がある。

その際、行政や森林・林業関係者は、多面的機能の恩恵を受ける国民と幅広くコミュニケーションをとり、個々の森林の状況に応じて適切に整備・保全し、多様な森林がバランス良く形成されるよう取組を進めていく必要がある。

森林・林業基本計画においては、森林を適正に管理して、林業・木材産業の持続性を高めながら成⾧発展させることで、2050年カーボンニュートラルも見据えた豊かな社会経済を実現する「森林・林業・木材産業によるグリーン成⾧」を掲げている。森林・林業基本計画に基づく施策を着実に進め、花粉の発生による国民生活に対するマイナスの影響を減らすとともに、森林・林業が国民生活を支える上で果たす役割を高めることで、国民が森林や林業、木材利用に親しみを持って積極的に関わり、森林からより多くの恩恵を受けられる社会につなげていくことが可能になる。同時に、社会全体が森林・林業の価値を認め積極的に関わっていくことで、森林もその姿をより望ましいものに変えていくことができる。

このように、⾧期的な視点を持って、花粉発生源対策を含め国民の多様なニーズに対応した森林を育み、人と森林のより調和した状態を目指すことが求められている。

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