第1部 第3章 第1節 木材需給の動向(1)



(1)世界の木材需給の動向
(ア)世界の木材需給の概況
(世界の木材消費量及び生産量)
国際連合食糧農業機関(FAO)によると、世界の産業用丸太の消費量は、近年おおよそ20億m3で推移しており、2022年は前年比2%減の20億2,606万m3であった。産業用丸太以外の燃料用丸太については、2022年の世界の消費量は前年比1%増の19億6,518万m3であり、99%以上が生産国内で消費されている。
世界の産業用丸太の2022年の生産量は、前年比2%減の20億1,604万m3であった。また、製材の生産量は、前年比2%減の4億8,126万m3、合板等の生産量は、前年比3%減の3億7,529万m3であった(*1)。
(*1)FAO「FAOSTAT」(2023年12月21日現在有効なもの)。消費量は生産量に輸入量を加え、輸出量を除いたもの。
(世界の木材輸入量の動向)
2022年における世界全体の木材輸入量は、産業用丸太については、前年比17%減の1億1,858万m3であった。中国が世界最大の輸入国で、2012年と比べると、輸入量は3,781万m3から4,360万m3に15%増加した。世界の輸入量に占める中国の割合も33%から37%に上昇した。一方、我が国の輸入量は451万m3から253万m3に44.0%減少した。
製材については、前年比7%減の1億3,733万m3であった。米国が世界最大の輸入国で、2012年と比べると、輸入量は1,741万m3から2,700万m3に55%増加した。一方、我が国の輸入量は656万m3から490万m3に25.3%減少した。
合板等については、前年比7%減の9,289万m3であった。米国が世界最大の輸入国で、2012年と比べると、輸入量は858万m3から1,693万m3に97%増加した。一方、我が国の輸入量は447万m3から390万m3に12.6%減少した(資料3-1)。
(世界の木材輸出量の動向)
2022年における世界全体の木材輸出量は、産業用丸太については、前年比18%減の1億856万m3であった(*2)。ニュージーランドが世界最大の輸出国で、2012年と比べると、中国の需要増加により、輸出量が1,376万m3から2,018万m3に47%増加した。
製材については、前年比8%減の1億4,310万m3であった。カナダが世界最大の輸出国で、2012年と比べると、2,537万m3から2,461万m3に3%減少した。
合板等については、前年比6%減の9,414万m3であった。中国が世界最大の輸出国で、2012年と比べると、1,362万m3から1,385万m3に2%増加した(資料3-2)。
(*2)輸入量と輸出量の差は、輸出入時の検量方法の違い等によるものと考えられる。
(イ)2022年の各地域における木材需給の動向(*3)
(北米の動向)

新型コロナウイルス感染症の影響下で好調だった北米の住宅市場は、住宅ローン金利の上昇による需要減などの影響で、2022年後半から供給過剰となり、米国の住宅着工件数は最終的に前年比3%減の約155万戸となった。また、2021年に歴史的な水準まで高騰した針葉樹製材価格は、2022年後半には下落し、新型コロナウイルス感染拡大以前の水準まで戻った。
2022年の米国における針葉樹製材生産量は前年から微増の6,400万m3、カナダの生産量は前年比9.5%減の3,640万m3となり、特にブリティッシュコロンビア州の生産量は州政府の森林政策の影響等により大幅に減少し14.6%減となった。また、米国の針葉樹製材消費量は、前年からほぼ横ばいの8,800万m3、カナダの消費量は生産量の減少により前年比9.5%減の1,300万m3となった。貿易取引に関しては、米国はカナダからの輸入量が減少したが、欧州からの輸入量が増加した。カナダは中国や日本への輸出量が減少した。
(*3)各地域における木材需給の動向の記述は、UNECE/FAO(2023)Forest Products Annual Market Review 2022-2023による。
(欧州の動向)
2022年の欧州の針葉樹製材生産量は、前年比2.9%減の1億1,520万m3となった。針葉樹製材消費量は、特にドイツと英国で大幅な減少がみられたことから、前年比7.2%減の9,600万m3となり、過去5年間で最低となった。欧州産の針葉樹製材の需要は、前年と比較して米国や北アフリカなど海外で特に旺盛であったものの、欧州内の貿易取引は大幅に減少した。
(ロシアの動向)
2022年のロシアの針葉樹製材輸出額は、前年比17%減の45億ドルとなった。この減少は、欧州連合(EU)が、ロシア・ウクライナ情勢に伴う輸入禁止措置等の経済制裁を行った影響によるものと考えられる。また、ロシアの針葉樹製材輸出市場では、欧州のシェアが減少し、中国のシェアが拡大した。
(中国の動向)
中国の針葉樹製材需要は、国内の不動産市場の動向が不透明な点や、新型コロナウイルス感染症に関連したロックダウンによる行動制限の影響などから、2022年は低調に推移した。
(ウ)国際貿易交渉の動向
我が国は、多くの国や地域との間で経済連携協定等の締結に取り組んできた。平成30(2018)年に「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP協定)」、平成31(2019)年に「経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定(日EU・EPA)」、令和2(2020)年に「日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定(日米貿易協定)」、令和3(2021)年に「包括的な経済上の連携に関する日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の協定(日英EPA)」、令和4(2022)年に「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」が発効した。これらの協定の締結においては、林産物の関税率の引下げが我が国及び相手国の持続可能な森林経営に悪影響を及ぼすことがないよう配慮して交渉を行い、合意に至ったものである。
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