第1部 第1章 第2節 森林整備の動向(1)






(1)森林整備の推進状況
(森林整備による健全な森林づくりの必要性)
森林の有する多面的機能の適切な発揮に向けては、間伐や主伐後の再造林等を着実に行いつつ、森林資源の適切な管理・利用を進めることが必要である。また、自然条件等に応じて、複層林化(*8)、⾧伐期化(*9)、針広混交林化や広葉樹林化(*10)を推進するなど、多様で健全な森林へ誘導することも必要となっている。
特に、山地災害防止機能・土壌保全機能を発揮させるためには、樹冠や下草が発達し、樹木の根が深く広く発達した森林とする必要がある。このため、植栽、保育、間伐等の森林整備を適切に行う必要がある。
(*8)針葉樹一斉人工林を帯状、群状等に択伐し、その跡地に人工更新する等により、複数の樹冠層を有する森林を造成すること。
(*9)従来の単層林施業が40~50年程度以上で主伐(皆伐等)することを目的としていることが多いのに対し、これのおおむね2倍に相当する林齢以上まで森林を育成し主伐を行うこと。
(*10)針葉樹一斉人工林を帯状、群状等に択伐し、その跡地に広葉樹を天然更新等により生育させることにより、針葉樹と広葉樹が混在する針広混交林や広葉樹林にすること。
(地球温暖化対策としての森林整備の必要性)
我が国におけるパリ協定下の森林吸収量の目標(令和12(2030)年度で約3,800万CO2トン(平成25(2013)年度総排出量比約2.7%))達成や、2050年カーボンニュートラルの実現への貢献のため、森林吸収量の確保・強化が必要となっている。
他方、我が国の人工林は、高齢林の割合が増え、二酸化炭素吸収量は減少傾向にあるとともに、主伐後の再造林が進んでいないことも課題となっている(資料1-10)。
このため、全国森林計画(令和5(2023)年10月閣議決定)に基づく伐採及び伐採後の再造林を着実に進めていくこととしているほか、「森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法」(以下「間伐等特措法」という。)により、間伐等の実施や成⾧に優れた種苗の母樹(特定母樹(*11))の増殖を促進するとともに、特定母樹から採取された種穂から育成された苗木(特定苗木)を積極的に用いた再造林を推進している。
(*11)エリートツリー等のうち、成⾧や雄花着生性等の基準を満たすものを「特定母樹」として指定。
(森林整備の実施状況)
林野庁では森林整備事業により、森林所有者等による間伐や再造林、路網整備等を支援するとともに、国有林野事業においては、間伐や再造林、針広混交林化等の多様な森林整備を実施している(*12)。また、国立研究開発法人森林研究・整備機構では、水源林造成事業により奥地水源地域の保安林を対象として、森林の造成等を実施している。
このような取組の結果、令和4(2022)年度の主な森林整備の実施状況は、人工造林面積が3.3万haであったほか、保育等の森林施業を行った面積が47万ha、うち間伐の面積が33万haであった(資料1-11)。
林野庁は、令和3(2021)年度から令和12(2030)年度までに、年平均で人工造林7万ha、間伐45万haとする目標を設定している。
(*12)国有林野事業の具体的取組については、第4章第2節(1)168-173ページを参照。
(適正な森林施業の確保等のための措置)
森林の立木の伐採行為の実態や伐採後の森林の更新状況を把握することは、適正な森林施業の確保を図る上で重要となるため、森林所有者等が立木の伐採を行おうとするときは、あらかじめ、市町村⾧に対して伐採及び伐採後の造林の届出を行うこととされている。林野庁では、令和4(2022)年9月に、適正な伐採と更新の確保を一層図るため、権利関係や境界関係等を確認できる添付書類を規定する伐採造林届出制度の見直しを行い、令和5(2023)年4月から運用を開始している。
また、無断伐採の未然防止を図るため、衛星画像を活用して伐採状況をインターネット上で把握するシステムを令和4(2022)年6月から全都道府県・市町村に提供するなど、関係機関と連携した対策に取り組んでいる。
(造林適地の選定)
林野庁では、自然的・社会的条件等を勘案し再造林を行うべき森林のゾーニングを促進している。具体的には、市町村森林整備計画における「特に効率的な施業が可能な森林の区域」や、間伐等特措法に基づく、特定苗木を積極的に用いた再造林を計画的かつ効率的に推進する「特定植栽促進区域」の設定を促進している。
さらに、都道府県や市町村が造林適地を適切にゾーニングし、これらの区域設定や路網計画の効率的な策定につなげられるよう、ICT等の新たな技術を活用した補助ツールの開発・普及に取り組んでいる。なお、令和7(2025)年度までに補助ツール等を活用した造林適地の判別が全都道府県で行われることを目標としている。
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