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林野庁

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第1部 第1章 第1節 森林の適正な整備・保全の推進(3)

(3)研究・技術開発及び普及の推進

(研究・技術開発のための戦略及び取組)

林野庁では、森林・林業・木材産業分野の課題解決に向けて、研究・技術開発における対応方向及び研究・技術開発を推進するために一体的に取り組む事項を明確にすることを目的として、「森林・林業・木材産業分野の研究・技術開発戦略」をおおむね5年ごとに策定している。令和4(2022)年3月に策定された同戦略では、高度なセンシング技術等の応用による造林・育林作業の省力化・低コスト化、花粉発生源対策や気候変動適応等に対応した優良品種の開発、気候変動が国内外の森林・林業に及ぼす影響の予測、我が国の森林吸収量算定手法の改善に資するモニタリング技術の高度化、CLTの更なる利活用技術の開発、改質リグニンやCNF(セルロースナノファイバー)(*5)等の用途開発や製造技術の高度化、森林における放射性セシウムの動態解明と予測技術の高度化等の研究・技術開発を推進することとしている。


(*5)改質リグニンやCNFについては、第3章第2節(3)139-140ページを参照。



(林業イノベーションの推進)

林野庁は、森林資源調査から木材の生産・流通・利用に至る分野の課題解決に向けて、令和4(2022)年7月にアップデートした「林業イノベーション現場実装推進プログラム」(令和元(2019)年12月策定)に基づき、令和7(2025)年までのタイムラインに沿って、情報通信技術(ICT)等を活用した森林資源管理や生産管理等の実証・普及、林業機械の自動化・遠隔操作化技術の開発・実証、改質リグニンを活用した材料開発等に取り組んでいる。

また、同プログラムを着実に進めるため、令和3(2021)年から林業イノベーションハブセンター(*6)(通称:森ハブ)を設置している。森ハブでは、令和5(2023)年6月から、デジタル林業戦略拠点に対するコーディネーター派遣等の伴走支援を開始し、同年9月には、林業イノベーションを推進するために必要な組織・人材・情報が集まる場として「森ハブ・プラットフォーム」を開設した。


(*6)産学官の様々な知見者等の参画により、異分野の技術探索や先進技術方策の検討・実施などを行う組織。



(「グリーン成⾧戦略」や「みどりの食料システム戦略」による取組)

政府は、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成⾧戦略」(令和2(2020)年12月策定)において、成⾧が期待される産業(14分野)ごとに高い目標を掲げて2050年カーボンニュートラルの実現を目指す実行計画を示している。食料・農林水産業分野はその一つに位置付けられており、スマート農林水産業等の実装の加速化による化石燃料起源の二酸化炭素のゼロエミッション化、森林及び木材・農地・海洋における炭素の⾧期・大量貯蔵の技術確立等に取り組んでいく必要があるとされている。

林野庁では、同戦略に基づいて造成されたグリーンイノベーション基金を活用し、高層建築物等の木造化をより一層進めるため、縦・横の両方向に同等の強度を有し設計の自由度を高めることに資する新たな大断面部材の開発等を推進している。また、農林水産省は「みどりの食料システム戦略」(令和3(2021)年5月策定)において、第2世代精英樹(*7)(エリートツリー)等の開発・普及、自動化林業機械の開発等を進めることとしている。


(*7)国立研究開発法人森林研究・整備機構が成⾧や材質等の形質が良い精英樹同士の人工交配等を行って得られた個体の中から成⾧等がより優れたものを選抜して得られた精英樹のこと。



(林業普及指導事業の実施等)

各都道府県に設置された林業普及指導員は、林業普及指導事業として、関係機関等との連携の下、地域全体の森林の整備・保全や林業・木材産業の成⾧産業化を目指した総合的な視点に立ち、森林所有者や林業従事者、これらの後継者、市町村の担当者等に直に接して、森林・林業に関する技術及び知識の普及や、森林の施業等に関する指導等を行っている。林業普及指導員には、林業普及指導員資格試験の合格者等資格を有する者が任命されており、令和5(2023)年4月現在、全国で活動する林業普及指導員は1,236名となっている。また、林業普及指導事業の効果的な推進を図るため、森林整備や林業経営等の各分野において先進的な技術や知識を有している林業研究グループ等の人材を林業普及指導協力員とするなど、関係組織等との役割分担や連携強化が進められている。

さらに、林野庁では、森林・林業に関する専門知識・技術について一定の資質を有する「森林総合監理士(フォレスター)」の育成を進めている。森林総合監理士は、⾧期的・広域的な視点に立って地域の森林づくりの全体像を示すとともに、市町村森林整備計画の策定等の市町村行政を技術的に支援し、また、施業集約化を担う「森林施業プランナー」等に対し指導・助言を行う人材である。林野庁では、森林総合監理士を目指す技術者の育成を図るための研修や、森林総合監理士の技術水準の向上を図るための継続教育等を行っている。なお、令和6(2024)年3月末現在で、都道府県職員や国有林野事業の職員を中心とした1,686名が森林総合監理士として登録されている(事例1-1)。

事例1-1 森林総合監理士・林業普及指導員の取組

(1)愛媛県の取組

愛媛県南予(なんよ)地域では、市町、林業事業体ともに人手不足の中、森林経営管理法に基づく新たな森林管理システムを推進するため、3市町が一般社団法人南予森林管理推進センターを設置するとともに、県と国(森林管理局)の森林総合監理士が連携して、県の林業普及指導員の協力も得て同センターを支援している。森林GISを活用した施業履歴情報や森林所有者への意向調査情報などの関連情報の一元化に取り組んでおり、市町や林業事業体の施業集約化の推進や労務の軽減につながるものと期待されている。

また、ドローンを活用した森林計測によって得られた森林資源状況を表す各因子を点数化し、その組合せにより林業経営の適・不適や間伐の要否を判定する「森林区分判定システム」を林業普及指導員が試作した。林業事業体への個別指導や技術研修会においてその活用を提案しており、専門的な知識や技術、人手を要する標準地調査に代わるものとして期待されている。


(2)山口県の取組

山口県の萩(はぎ)市川上(かわかみ)地域では、平成30(2018)年度から、県の森林総合監理士が森林組合及び市に働き掛けて、地域の実情と課題を整理し、地域全体の目標(木材供給量、再造林面積等)を達成するために必要な基本方針を取りまとめた。同時に、計画的・継続的な森林整備の実施のため集約化を行い、主伐・再造林等の森林整備を集中的に行う「森林団地」を約231ha設定した。取組を継続した結果、計画していたトラック道580mを令和5(2023)年度までに全線整備できたほか、当該地区の主伐・再造林を6年間で約24ha実施する計画に対して令和5(2023)年度までの3年間で約7ha実施した。今後は整備したトラック道を活用し、計画した主伐・再造林を着実に実行することとしている。




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