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林野庁

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第1部 第2章 第2節 特用林産物の動向(2)

(2)薪炭・竹材・漆の動向

(薪炭の動向)

木炭は、日常生活で使用する機会が少なくなっているが、飲食店、茶道等では根強い需要があるほか、電力なしで使用できる等の利点から災害時の燃料としても期待できる。また、多孔質(*64)の木炭について、浄水施設のろ過材や消臭剤としての利用も進められている。さらに、近年、土壌改良材として農地に施用する「バイオ炭(*65)」が注目されている。J-クレジット制度(*66)においては、難分解性の炭素を土壌に貯留させる効果があるバイオ炭の農地施用は、温室効果ガスの排出削減量をクレジットとして認証できるようになっている。木炭(黒炭、白炭、粉炭、竹炭及びオガ炭)の国内生産量は、長期的に減少傾向にあり、令和3(2021)年は前年比11.8%減の約1.7万トンとなっている(資料2-25)。


販売向け薪の生産量についても、石油やガスへの燃料転換等により、減少傾向が続いていたが、平成19(2007)年以降は、ピザ窯やパン窯用等としての利用、薪ストーブの販売台数の増加(*67)等を背景に増加傾向に転じ、近年は5万m3程度で推移している(事例2-7)。令和3(2021)年の生産量はキャンプブーム等の影響もあり前年比9.9%増の約5.7万m3となっている(資料2-26)。

事例2-7 株式会社ディーエルディーにおける薪の宅配サービス

薪ストーブの販売事業者である株式会社ディーエルディー(長野県伊那(いな)市)は、顧客からの「薪ストーブを導入したいが継続的に薪を入手できるか心配」との声を受けて、平成19(2007)年から薪の宅配サービス事業を行っている。当初は年1万束(約140m3)ほどの販売量であったが、東日本大震災以降、電気やガスに頼らない暖房として薪ストーブへの注目が高まったこと等の影響もあり徐々に取扱量が増加し、令和4(2022)年は23万束(約3,200m3)へと販売量を伸ばしている。

薪の販売を開始した当初は、広葉樹薪(ナラ等)を中心に扱っていたが、間伐材の利用促進による森林の活性化や薪の地産地消の観点から針葉樹薪(カラマツ、アカマツ、スギ等)の販売を開始し、令和4(2022)年には、おおよそ広葉樹2割、針葉樹8割と、針葉樹薪が大部分となっている。原木の仕入れに当たっては、生産者が各地の土場に持ち込んだものを買い取っている。

宅配事業では、販売契約を結んでいる顧客の自宅に薪を収納する専用のラックを設置し、各戸を巡回し、顧客が使用して減少した分を補充する。薪の利用者にとっては、広い薪置き場や倉庫を設置する必要がなく、事業者にとっては、薪ストーブ販売促進につながる等の利点がある。

同社は、薪ストーブや薪の普及にも取り組んでおり、薪割りや着火の方法、調理への利用法などを説明する薪ストーブ体験会を毎年開催している。今後は、この取組を各地に広げていくことを検討している。


(*64)木炭は表面に無数の微細な孔を持つ。孔のサイズ分布や化学構造によって、水分子やにおい物質等の吸着機能や、孔内に棲息した微生物による分解機能を有し、湿度調整や消臭、水の浄化等の効果を発揮する。これらの効果は、木炭の原材料や炭化温度により異なる。

(*65)燃焼しない水準に管理された酸素濃度の下、350℃超の温度でバイオマスを加熱して作られる固形物。

(*66)J-クレジット制度については、第1章第2節(5)58-59ページを参照。

(*67)一般社団法人日本暖炉ストーブ協会ホームページ「公表販売台数」



(竹材の動向)

竹材は従来、身近な資源として、日用雑貨、建築・造園用資材、工芸品等様々な用途に利用されてきた。このような利用を通じて整備された竹林は、里山の景観を形作ってきたのみならず、食材としてのたけのこを供給する役割を果たしてきた。しかし、プラスチックなどの代替材の普及等により、竹材の需要は減退してきた。このため、管理が行き届かない竹林の増加や、周辺森林への竹の侵入等の問題も生じている。

竹材の生産量は、製紙原料としての利用の本格化等を背景に、平成22(2010)年から増加に転じたものの、平成29(2017)年以降再び減少し、令和3(2021)年は前年比11.1%減の約92万束(*68)となっている(資料2-27)。

このため、竹資源の有効利用に向けて、家畜飼料等の農業用資材や、竹材の抽出成分を原料にした日用品等の新需要の開発が進められている。また、成長したたけのこをメンマに加工・販売することで竹林整備につなげる取組も行われている。


(*68)2.8万トン(1束当たり30kgとして換算)。



(漆の動向)

漆は、樹木であるウルシから採取された樹液と樹脂の混合物を精製した塗料で、食器、工芸品、建築物等の塗装や接着に用いられてきた。令和3(2021)年の国内消費量は約23.9トンであるが、中国からの輸入が大部分を占めており、国内生産量は8.5%に当たる約2.0トンである(資料2-28)。一方、平成26(2014)年度に文化庁が国宝・重要文化財建造物の保存修理に原則として国産漆を使用する方針としたことを背景に、国産漆の生産量は増加傾向で推移しており、岩手県などの各産地においてウルシ林の育成・確保、漆搔き職人の育成等の取組が進められている(*69)。


(*69)例えば、「令和3年度森林及び林業の動向」第2章第2節(2)の事例2-4(120ページ)を参照。



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