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林野庁

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第1部 第1章 第2節 森林整備の動向(2)

(2)優良種苗の安定的な供給

(優良種苗の安定供給)

我が国の人工林は本格的な利用期を迎えており、主伐の増加が見込まれる中、再造林に必要な苗木の安定供給が一層重要となっている。令和3(2021)年度の山行(やまゆき)苗木(*18)の生産量は、約6,500万本となり、このうち約4割をコンテナ苗(*19)が占めるようになっている(資料1-11)。また、苗木生産事業者数は、全国で844となっている(*20)。


(*18)その年の造林に用いる苗木。

(*19)コンテナ苗については、第2章第1節(4)100ページを参照。

(*20)林野庁整備課調べ。



(成長等に優れた苗木の供給に向けた取組)

国立研究開発法人森林研究・整備機構では、収量の増大と造林・保育の効率化に向けて、林木育種によりエリートツリーの選抜が行われており、更に改良を進めるため、エリートツリー同⼠を交配した次世代の精英樹の開発も進められている。

間伐等特措法に基づき、成長や雄花着生性等に関する基準(*21)を満たすものが特定母樹に指定されており、令和5(2023)年3月末現在、492種類(うちエリートツリー344種類)が指定されている(資料1-12)。林野庁では、特定⺟樹を増殖する事業者の認定や採種園・採穂園の整備を推進している。


また、特定苗木は、従来の苗木と比べ成長に優れることから、下刈り期間の短縮による育林費用の削減及び伐期の短縮による育林費用回収期間の短縮とともに、二酸化炭素吸収量の向上も期待される。

農林水産省は、みどりの食料システム戦略において、特定苗木の活用を、令和12(2030)年までに林業用苗木の3割(*22)、令和32(2050)年までに9割とする目標を設定している。

令和3(2021)年度(2021年秋から2022年夏まで)の特定苗木の出荷本数は、スギが九州を中心とした13県で約374万本、グイマツ(クリーンラーチ)が北海道で約35万本、合計が約409万本となっており、全苗木生産量の約6%となっている(資料1-13)。


(*21)成長量が同様の環境下の対照個体と比較しておおむね1.5倍以上、材の剛性や幹の通直性に著しい欠点がなく、雄花着生性が一般的なスギ・ヒノキのおおむね半分以下等の基準が定められている。

(*22)林野庁では、3,000万本程度を想定。



(花粉発生源対策)

国民の約4割が罹(り)患しているといわれる花粉症については、関係省庁が連携し、総合的な対策を進めている。林野庁では、(ア)花粉を飛散させるスギ人工林等の伐採・利用、(イ)花粉症対策に資する苗木(*23)による植替えや広葉樹の導入、(ウ)スギ花粉の発生を抑える技術の実用化による花粉発生源対策に取り組んでいる。

令和5(2023)年3月に改正された「スギ花粉発生源対策推進方針(*24)」では、スギ苗木の年間生産量に占める花粉症対策に資する苗木の割合を令和14(2032)年度までに約7割に増加させるなどの目標を掲げている。このほか、林野庁では、スギ花粉の発生を抑える技術の実用化に向け、スギ林への効果的な薬剤散布方法の確立や薬剤散布による生態系への影響調査等を進めている。

コラム 花粉の少ない苗木の開発・普及

花粉の少ない苗木については、国立研究開発法人森林研究・整備機構と都府県が連携して、全く花粉を作らない無花粉スギ25品種、雄花の着花量が従来品種の約1%以下である少花粉スギ147品種などが開発されているほか、一般的なスギよりも花粉の少ない特定母樹275種類が指定されている。また、少花粉ヒノキも56品種が開発されている。

花粉の少ない苗木の生産拡大に向けては、採種園・採穂園や苗木生産施設の整備等に取り組んでいる。このような取組により、花粉の少ないスギ苗木の生産量は1,512万本まで増加し(令和3(2021)年度)、10年前と比べ約10倍、スギ苗木の年間生産量の約5割に達している(図表)。一方、花粉の少ないスギ苗木によるスギ人工林の面積はスギ人工林全体の面積に比べてまだ僅かであることから、今後は、花粉の少ない苗木の生産量の更なる拡大、スギ人工林等の伐採・植替え等を進めることが必要となっている。



(*23)花粉症対策品種(ほとんど、又は、全く花粉を作らない品種)の苗木及び特定苗木。

(*24)国、都道府県、市町村、森林・林業関係者等が一体となってスギ花粉発生源対策に取り組むことが重要であるとの観点から、関連施策の実施に当たっての技術的助言を林野庁が定めたもの。



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