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林野庁

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第1章 森林の整備・保全

1. 森林の適正な整備・保全の推進

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(1)我が国の森林の状況と多面的機能

➢ 森林は、国土保全、水源涵(かん)養、地球温暖化防止等の多面的機能を通じて、国民生活・国民経済に貢献

➢ 森林面積は国土面積の3分の2
 このうち約4割を占める人工林は、半数が50年生を超え、本格的な利用期

➢ 森林蓄積は人工林を中心に年々増加し、 2020年4月末時点で約54億m3

➢ 森林の多面的機能や、林業・木材産業等の森林の利用が産み出す経済・社会的効果がSDGsや2050年カーボンニュートラル等の様々な目標達成に寄与


(2)森林の適正な整備・保全のための森林計画制度

➢ 2021年6月、森林・林業に関する施策の基本的な方針となる新たな「森林・林業基本計画」を閣議決定

➢ 同計画では、森林の整備・保全や林業・木材産業等の事業活動等の指針とするための「森林の有する多面的機能の発揮」及び「林産物の供給及び利用」に関する目標や、森林及び林業に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策等を規定

➢ 森林法に基づく「全国森林計画」(2021年6月変更)、「森林整備保全事業計画」(2019年策定)により、森林の整備・保全を推進


(3)研究・技術開発及び普及の推進

➢ 2020年12月、政府は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定
 同戦略では、森林吸収量の向上と炭素の長期・大量貯蔵や、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現させることを重要分野に位置付け
 また、農林水産省は、中長期的な視点で環境負荷軽減のイノベーションを推進するため、2021年5月、「みどりの食料システム戦略」を策定
 同戦略では、森林・林業分野に関して、エリートツリー等の開発・普及、自動化林業機械の開発、ICT等の活用、高層建築物等の木造化の推進、改質リグニン等を活用した材料開発等を記載

➢ 研究・技術開発の成果等は、林業普及指導員を通じて地域に普及

➢ 森林・林業について高度な知識・技術を有する森林総合監理士を育成し、市町村の森林行政や地域の森林整備の推進を支援


2.森林整備の動向

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(1)森林整備の推進状況

➢ 森林の多面的機能の発揮を図りつつ、資源の循環利用を進めていくため、間伐や主伐後の再造林等の森林整備等を着実に推進
 また、自然条件等に応じて針広混交林化を図るなど多様で健全な森林への誘導を推進

➢ 2030年度の森林吸収量目標約2.7%(2013年度総排出量比)の達成や、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、森林吸収源対策の継続・強化が必要

➢ 森林所有者等による再造林、間伐、路網整備等に対して「森林整備事業」等により支援

➢ 伐採造林届出制度について、伐採権者と造林権者の役割の明確化を図るために届出様式を改正するなど、運用を見直し

➢ 我が国における2020年度(2020秋~2021春)の山行(やまゆき)苗木の生産量は、約6,600万本
 再造林を推進するため、苗木の安定供給が一層重要

➢ 成長に優れたエリートツリー等について、成長量、材質、花粉量が一定の基準を満たす樹木を特定母樹として、2013年からの9年間で456種類を指定

➢ 特定母樹由来の苗木の2020年度(2020秋~2021春)の生産量は、スギが九州を中心に約280万本、グイマツ(クリーンラーチ)が北海道で約20万本、合計約304万本(全苗木生産の5%)

➢ 林野庁では、特定母樹を増殖する事業者の認定や採種園・採穂園の整備を推進

➢ スギ花粉発生源対策として花粉症対策に資する苗木の生産を拡大
 2020年度の同苗木の割合は、スギ苗木全体の約5割


(2)森林経営管理制度及び森林環境税

森林経営管理制度

➢ 2019年4月に森林経営管理法が施行され、「森林経営管理制度」がスタート

➢ 適切な経営管理が行われていない森林について、市町村が主体となって、林業経営者等に経営管理の集積・集約化を図る制度

➢ 国は地域林政アドバイザーの活用推進により市町村の体制整備を支援
 全ての都道府県において、森林環境譲与税も活用しつつ、地域の実情に応じた市町村の支援を実施

➢ 2020年度末までに私有林人工林のある市町村の約5割(778市町村)において、約40万haの意向調査が実施され、意向調査の準備も含めると、これまで約8割の市町村が森林経営管理制度に係る取組を実施

➢ また、市町村は所有者から経営管理の委託を受ける経営管理権集積計画を策定(2020年度末 3,458ha)し、順次、市町村による間伐の実施や林業経営者に再委託(経営管理実施権配分計画の策定面積:2020年度末 322ha)

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事例 愛知県岡崎(おかざき)市 ~境界の確認から意向調査、森林整備までの円滑な実施~


〈境界確認の状況〉

➢ 岡崎市では、航空写真を活用した森林資源解析により、人工林資源がまとまっている15地区を制度の対象に選定。所有者が将来的に森林の管理をしていけるよう地区全体の境界確認と測量を実施し、その後に意向調査を行うことで、円滑な意向確認と経営管理の受託につなげている

➢ 2020年度は、約57haの森林について市が所有者から経営管理の委託を受け、このうち約23haを林業経営者に再委託
 2021年度には市が約24haの 間伐に着手するなど取組を展開


森林環境税・森林環境譲与税

➢ 2019年3月に「森林環境税」及び「森林環境譲与税」が創設
 「森林環境譲与税」については、「森林経営管理制度」の導入に合わせて2019年度から譲与開始、「森林環境税」は2024年度から課税

➢ 森林環境譲与税は、市町村においては、間伐等の森林整備や人材育成・担い手の確保、都市部における木材利用の促進や普及啓発等の「森林整備及びその促進に関する費用」に充当

➢ 2020年度は、間伐等の森林整備関係に取り組んだ市町村が全国の市町村の7割、人材育成が2割、木材利用・普及啓発が3割。地域の実情に応じた様々な取組を実施

コラム:森林環境譲与税の取組状況

(3)社会全体で支える森林(もり)づくり

➢ 「第71回全国植樹祭」は島根県、「第44回全国育樹祭」は北海道で開催

➢ NPOや企業等の多様な主体が森林づくり活動を実施
 SDGsの機運やESG投資の流れが拡大する中で、森林づくりに関わろうとする企業が増加


3.森林保全の動向

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(1)保安林等の管理及び保全

➢ 公益的機能の発揮が特に要請される森林を「保安林」に指定し、伐採、転用等を規制。保安林以外の森林が転用される場合は、「林地開発許可制度」を適切に運用


(2)山地災害等への対応

➢ 本年に発生した山地災害等に伴う被害額は、約676億円

➢ 大規模な被害が発生した地域には、林野庁の技術系職員の派遣やヘリ調査等の技術的支援及び災害復旧事業等を実施

➢ 近年、気候変動による降水形態の変化に伴い、渓流の縦横侵食の激化や、これによる大量の土砂・流木の流出など、山地災害が激甚化する傾向

➢ 2020年12月に閣議決定された「防災・減災、国土強靱(じん)化のための5か年加速化対策」等に基づき、治山対策や森林整備対策を推進

➢ 大雨や短時間強雨の発生頻度が増加傾向にある中、各地の治山施設が減災効果を発揮



(3)森林における生物多様性の保全

➢ 針広混交林化、長伐期化等による多様な森林づくり、原生的な森林生態系の保護・管理等を推進。世界遺産、ユネスコエコパーク等においても森林の厳格な保護・管理等を推進


(4)森林被害対策の推進

野生鳥獣被害の状況及び対策

➢ 野生鳥獣による森林被害は依然として深刻であり、約7割がシカによる被害

➢ 防護柵の設置等による植栽木の防護、捕獲等の対策を総合的に推進。2020年度は67万頭(対前年度比12%増)のシカを捕獲したが、2023年度までの半減目標達成に向けて、引き続き捕獲強化が必要


その他の森林被害の状況及び対策

➢ 松くい虫被害は、近年は減少傾向にあるものの、最大の森林病害虫被害であり、抵抗性マツの苗木生産、薬剤等による「予防対策」や、被害木くん蒸等の「駆除対策」等の取組を実施

4. 国際的な取組の推進

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(1)持続可能な森林経営の推進

➢ 2020年の世界の森林面積は41億ha(陸地面積の31%)で、アフリカ、南米等の熱帯林を中心に世界全体としては依然として減少

➢ 我が国は、国連森林フォーラム(UNFF)、モントリオール・プロセス等の国際対話に積極的に参画し、持続可能な森林経営に向けた取組を推進

➢ 持続可能な森林経営がされていることを認証する森林認証は、国際的なFSC認証とPEFC認証、我が国独自のSGEC認証(2016年にPEFC認証と相互承認)等が存在
 オーストリアでは85%の森林で認証を取得するなど、欧州では取得が進展
 我が国は1割程度であるが、認証面積は増加傾向


(2)地球温暖化対策と森林

我が国の温室効果ガス排出削減と森林吸収量の目標(地球温暖化対策計画)

➢ 2050年カーボンニュートラル等の実現に向け、2021年10月に改訂された地球温暖化対策計画では、2030年度の日本の温室効果ガス排出削減目標を引き上げて46%(2013年度総排出量比)とし、森林吸収量についても約2.7%に目標を引上げ

➢ この目標の達成に向け、間伐やエリートツリー等も活用した再造林等の森林整備、木材利用の推進等の森林吸収源対策を着実に実施する必要

➢ 開発途上国の森林減少及び劣化に由来する排出の削減等(REDD+)の取組や、「気候変動適応計画」(2021年10月)等に基づく適応策を推進

(3)生物多様性に関する国際的な議論

➢ 2021年10月、COP15の第一部が開催。2022年7~9月に開催予定の第二部において、「愛知目標」に代わる新たな目標(ポスト2020生物多様性枠組)が議論・採択される予定


(4)我が国の国際協力

➢ JICAを通じた技術協力や、資金協力等の二国間協力、国際機関(FAO、ITTO)を通じたプロジェクトの実施等の多国間協力等により、持続可能な森林経営、木材生産国における合法性・持続可能性が確保された木材等の流通体制の構築、気候変動対策、生物多様性の保全、山地災害対策等の推進に貢献



お問合せ先

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担当者:年次報告班
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