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林野庁

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第1部 特集2 第1節 木材需要拡大と木材産業の競争力強化によるグリーン成長の実現(2)

(2)グリーン成長の実現に向けて

(平成28(2016)年の森林・林業基本計画の成果と課題)

平成28(2016)年5月に閣議決定された「森林・林業基本計画(*6)」では、我が国の豊富な森林資源を適切に活用し、循環利用していくことで、林業・木材産業の成長産業化を実現することとしていた。

この間、木材の総需要量は、平成26(2014)年の7,580万m3から、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前の令和元(2019)年には8,191万m3まで増加した。特に燃料材の需要量は、同計画における令和2(2020)年の見通しを上回る増加をしている。また、令和元(2019)年の国産材の利用量は3,099万m3まで増加し、同計画における令和2(2020)年の目標値である3,200万m3をおおむね達成した。一方で、国産材の製材用材の利用量は微増しているものの、令和2(2020)年の1,500万m3の目標値に対し、令和元(2019)年は1,288万m3にとどまっている(資料 特2-5)。

資料 特2-5 森林・林業基本計画における国産材利用量の目標と実績

また、林業経営体(*7)の規模拡大や生産性の向上は徐々に進み、伐採と造林の一貫作業等の造林コストを低減する取組も拡大し、原木(*8)生産量も増加した。一方で、近年の主伐面積に対する再造林面積の割合は約3割にとどまっている。このため、我が国の木材利用ニーズに照らして森林資源の循環利用を進めていくことに加え、森林の二酸化炭素吸収量の目標を達成するためにも、再造林の推進が課題となっている。


(*7)林業経営体については、第2章第1節(2)94-101ページを参照。

(*8)製材・合板等の原材料となる丸太。



(新たな森林・林業基本計画)

令和3(2021)年6月に閣議決定された新たな森林・林業基本計画では、再造林等により森林の適正な管理を図りながら、森林資源の持続的な利用を一層推進して引き続き林業・木材産業の成長産業化に取り組むことにより、社会経済生活の向上とカーボンニュートラルに寄与する「グリーン成長」を実現していくこととしている。

このためには再造林の推進が課題となるが、これに向けては、新技術の活用により伐採から再造林・保育に至る収支のプラス転換を可能とする「新しい林業(*9)」等に取り組み、造林コストに加え、素材生産(*10)コストの低減も図ることが重要である。また、収益拡大のため、木材の安定的な需要を確保していくことが重要である。新たな森林・林業基本計画では、期待する機能の発揮に向け森林の整備・保全が行われた場合の木材の供給量と、それに対応した用途別の利用量の目標を定めており、令和7(2025)年の木材の総需要量を8,700万m3と見通した上で、国産材の利用量について4,000万m3を目指すこととしている(資料 特2-5)。特に建築物等に用いられ、比較的価格の高い製材用材の利用拡大を進めていくことが重要となっている。

グリーン成長の実現に向けた木材利用の拡大に当たっては、関係者が協力し、効率的なサプライチェーンを構築して相互利益を拡大しつつ、再造林につなげるとの視点を共有し努力していくことが期待される。

木材産業は、サプライチェーンにおいて、山元から原木を購入しマーケットニーズに応じて木材を加工・販売して需要先につなぐ立場にあることから、まさに森林・林業の持続性の確保と木材の適切な利用の推進の両面において重要な存在であり、その競争力強化は、グリーン成長のカギとなる。


(*9)新しい林業については、第2章第1節(4)112-115ページを参照。

(*10)林内又は山土場において、素材(原木)を生産すること。立木の伐倒(伐木)、枝払い及び玉切り(造材)、林道沿いの土場への運搬(集材)等の工程を含む。


挿絵2

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