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林野庁

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第1部 特集2 第1節 木材需要拡大と木材産業の競争力強化によるグリーン成長の実現(1)

(1)木材利用の公益的意義

我が国は、国土の約3分の2を森林が占める世界でも有数の森林国である。特に森林面積のうち約4割を占める人工林は、50年生を超える人工林面積が10年前の2.4倍に増加し過半となっており、利用期を迎えている(*1)。

森林の樹木は、大気中の二酸化炭素を吸収し、炭素を貯蔵しているが、人工林の高齢化に伴い、森林吸収量は減少傾向で推移している。今後、森林吸収量を確保していくためには、利用期を迎えた人工林について「伐って、使って、植えて、育てる」ことにより、炭素を貯蔵する木材利用の拡大を図りつつ、成長の旺盛な若い森林を確実に造成していくことが必要である(資料 特2-1)。

資料 特2-1 森林資源の循環利用(イメージ)

また、森林から搬出された木材を建築物等に利用することにより、炭素を長期的に貯蔵することが可能である。木材には再加工しやすいという特徴もあるため、建築物等として利用した木材をパーティクルボード等として再利用すれば、再利用後の期間も含めて炭素が貯蔵される(資料 特2-2)。

資料 特2-2 木材利用における炭素ストックの状態

その際、建築物等に利用される国産材は、伐採木材製品(HWP(*2))として国連気候変動枠組条約の京都議定書第二約束期間以降、パリ協定(*3)においても森林の二酸化炭素排出・吸収量の算定に計上できることとされている。我が国の令和2(2020)年度の二酸化炭素吸収量において、HWPを含む森林吸収量は91%を占めており、地球温暖化防止対策の中で森林は重要な役割を果たしている(資料 特2-3)。

資料 特2-3 我が国の二酸化炭素吸収量(令和2(2020)年度)

また、木材は、製造・加工時のエネルギー消費が鉄やコンクリート等の建築資材よりも比較的少ないことから、建築物に木材を利用することは、建築に係る二酸化炭素の排出削減に貢献する。例えば、建築物の床面積当たりの二酸化炭素排出量を木造、非木造で比較すると、木造は、鉄筋コンクリート造や鉄骨造等の非木造よりも少ないことが知られている(資料 特2-4)。


さらに、資材として利用できない木材を化石燃料の代わりにエネルギー利用すれば、化石燃料の燃焼による大気中への二酸化炭素の排出を抑制することにつながる。

カーボンニュートラルの実現に貢献する木材利用の公益的な意義は、令和3(2021)年6月に改正された「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律(*4)」に新たに法定されるとともに、「地球温暖化対策計画(*5)」(令和3(2021)年10月22日閣議決定)にも反映されている。

このほか、国産材が利用され、森林所有者が収益を上げることによって、再造林を始めとした安定的・持続的な森林整備が可能となり、この森林資源の循環利用を通じて、地域経済の活性化や、国土の保全、水源涵(かん)養等の森林の有する多面的機能の発揮にもつながる。


(*1)林野庁「森林資源の現況」

(*2)「Harvested Wood Products」の略。HWPについては、第1章第4節(2)87ページを参照。

(*3)「Paris Agreement」の日本語訳。パリ協定については、第1章第4節(2)87ページを参照。

(*4)「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(平成22年法律第36号)

(*5)地球温暖化対策計画については、第1章第4節(2)87-88ページを参照。


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