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林野庁

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第1部 特集1 第1節 令和3(2021)年の木材不足・価格高騰(いわゆるウッドショック)の状況


(北米の木材市場と海上輸送運賃の動向(*1))

令和2(2020)年は、新型コロナウイルス感染症の影響により世界各国で経済活動が縮小し、我が国では新設住宅着工戸数が減少したことなどから、林業・木材産業にも大きな影響が及んだ。一方で、同年後半からは北米の製材品価格や、コンテナの海上輸送運賃の上昇が始まり、令和3(2021)年には、我が国の木材輸入価格が上昇し、それに伴う形で国産材の価格も大きく上昇する中で、林業・木材産業に多大な影響を及ぼした。

米国では、令和2(2020)年5月以降、在宅勤務の増加や住宅ローン金利の低下により、新設住宅着工戸数が急増し、令和3(2021)年も高い水準が続いた。これにより、北米の製材品価格も、令和2(2020)年夏頃から急激に上昇し、令和3(2021)年5月には、過去最高の1,514ドル/mbf(*2)を記録した。その後、急落したものの、同年夏以降は、再び上昇傾向に転じ、同年12月には1,038ドル/mbfに達した。

また、令和2(2020)年末から、米国での輸入貨物の急増や港湾処理能力の低下等により、米国にコンテナが滞留した。これにより、海上輸送に混乱が生じるとともに、コンテナの海上輸送運賃は、急上昇した。さらに、令和3(2021)年夏以降は、中国での港湾作業員の不足により、中国でもコンテナが滞留した。その結果、令和3(2021)年12月には、日本向けの海上輸送運賃は、米国発が前年同月比1.5倍の2,750ドル/個、欧州発が前年同月比1.9倍の4,290ドル/個に達した(*3)。


(*1)令和2(2020)年12月17日付け日刊木材新聞2面、令和3(2021)年10月26日付け日刊木材新聞1面、令和3(2021)年2月15日付けNHKビジネス特集「コロナ禍の異変 コンテナはどこへ?」、令和3(2021)年2月24日付け日経新聞電子版「コンテナ不⾜、資材価格押し上げ」、令和3(2021)年5月21日付けRandom Lengths Vol. 77 Issue 20、令和3(2021)年12月29日付けRandom Lengths Vol. 77 Issue 52、公益財団法人日本海事センター「主要航路コンテナ運賃動向」

(*2)1mbf=約2.4m3

(*3)40フィートコンテナの海上輸送運賃を記載。



(我が国の木材輸入)

令和2(2020)年は我が国の新設住宅着工戸数の減少等により、我が国の木材輸入量は減少し、令和3(2021)年に入って新設住宅着工戸数が前年同月比増となっても、前年同月の輸入量を下回る品目が見られた(資料 特1-1)。


特に製材品について、主要な輸入元であるEUとカナダからの輸入量は、高価格が期待できる米国への供給増加等の影響により、令和3(2021)年前半まで前年を大幅に下回った。その後、カナダからの輸入については、夏にかけて回復を見せたが、夏に発生した山火事による生産減やコンテナ不足による出荷遅れ等により、令和3(2021)年後半は再び減少傾向に転じた(*4)。一方、EUからの輸入については、産地価格の上昇と海上輸送の混乱により、同年後半まで減少傾向が続いた(*5)。年末には、輸入量は増加したものの、依然として供給遅れが深刻な状況にある(*6)。

集成材についても、米国や欧州域内における需要の高まり、産地価格の急激な上昇、海上輸送の混乱等により、EUからの輸入量が減少した(*7)。

一方、丸太については、令和元(2019)年に、カナダ最大の丸太輸出業者が自社有林の伐採を停止したため、カナダからの輸入量が大幅に減少したが、令和2(2020)年6月に伐採が再開され、令和3(2021)年には輸入量が回復した(*8)。

合板の輸入量は、令和元(2019)年以降、産地価格の上昇等により減少傾向にあったが、令和3(2021)年6月以降は、我が国の国内在庫不足のため、前年同月比が増加に転じている。合板の主な輸入元であるマレーシアやインドネシアでは、海上輸送運賃の高騰や人手不足の深刻化、原木(*9)不足等により令和2(2020)年に比べ産地価格が更に上昇した(*10)。

この結果、令和3(2021)年の木材輸入量は、製材品で前年比2%減、集成材で同5%減、丸太で同15%増、合板で同12%増となった(*11)。

輸入木材の平均単価は、産地価格と海上輸送運賃の上昇を受け、令和3(2021)年を通して上昇傾向が続いた。同年12月の平均単価は、製材品で前年同月比106%増の80,149円/m3(資料 特1-2)、合板で同51%増の77,556円/m3、集成材で同114%増の107,247円/m3等と大幅な上昇となった(*12)。


(*4)令和3(2021)年12月20日付け日刊木材新聞1面

(*5)令和3(2021)年11月17日付けRandom Lengths「Japanese imports rebounded in the third quarter, still lag」、令和3(2021)年12月13日付け木材建材ウイクリー:No.2331.

(*6)令和4(2022)年1月24日付け木材建材ウイクリー:No.2335.

(*7)令和3(2021)年12月13日付け木材建材ウイクリー:No.2331.

(*8)令和2(2020)年7月2日付け日刊木材新聞1面、令和3(2021)年12月13日付け木材建材ウイクリー:No.2331.

(*9)製材・合板等の原材料となる丸太のことであり、素材と同義。「令和3年度森林及び林業の動向」において、木材産業関連で記述する場合は、統計上、「素材」としているものも含め基本的に「原木」として表記し、林業関連で記述する場合は「素材」として表記。ただし、「素材生産者」等、慣用的に「素材」を使用する場合は「素材」として表記。また、輸出入では、「丸太」と表記。

(*10)令和3(2021)年3月15日付け木材建材ウイクリー:No.2294、令和3(2021)年12月13日付け木材建材ウイクリー:No.2331.

(*11)財務省「貿易統計」

(*12)財務省「貿易統計」より算出。輸入平均単価は、総輸入額を総輸入量で割った値。



(新設住宅着工戸数の動向)

我が国の令和2(2020)年の新設住宅着工戸数は、4月から5月にかけての緊急事態宣言により、住宅展示場の来場者数が落ち込むなど、特に大手・注文住宅事業者の受注機会が大幅に減少したが、緊急事態宣言解除後は、より広い住まいへのニーズの高まりという新たな需要等もあり、全体としてはリーマンショック時ほどの急減(*13)は見られず、前年比約1割減の82万戸となった。令和3(2021)年は、令和元(2019)年の水準には至らないものの、需要は回復し、新設住宅着工戸数は86万戸(前年比5%増)、このうち木造住宅は50万戸(前年比7%増)となった(*14)(資料 特1-3)。


(*13)リーマンショックの影響を受けた平成21(2009)年の新設住宅着工戸数は、前年比約3割減となった。

(*14)国土交通省「住宅着工統計」



(製材品、合板の出荷量等の動向)

我が国の製材品出荷量は、令和2(2020)年4月以降、新設住宅着工の遅れや住宅の受注減により生産調整が行われ大幅に減少したが、8月以降は経済の持ち直しに伴い回復傾向に転じた。住宅需要が回復する中、令和3(2021)年3月から輸入木材不足により、輸入木材の代替としての国産材の需要が高まり、製材工場等が稼働率を上げて対応した結果、同月の製材品出荷量は平成31(2019)年同月と同程度となった。3月以降も製材品出荷量は令和元(2019)年の水準を維持し、令和3(2021)年の製材品出荷量は907万m3(令和元(2019)年比1%減)となった(*15)(資料 特1-4)。


普通合板出荷量も、同様に令和2(2020)年4月以降、大幅に減少したが、8月以降は回復傾向に転じ、令和3(2021)年3月以降は令和元(2019)年と同程度となった。出荷量が回復して以降も、住宅を中心に旺盛な需要が続いたことから、出荷量が生産量を上回る時期もあり、普通合板在庫量は減少傾向となっている。令和3(2021)年の普通合板出荷量は326万m3(令和元(2019)年比3%減)となった(*16)(資料 特1-5)。


(*15)農林水産省「令和3年木材需給報告書」。年間の出荷量は、月別出荷量の合計値。

(*16)農林水産省「令和3年木材需給報告書」。年間の出荷量は、月別出荷量の合計値。



(木材価格の動向)

令和3(2021)年に入ってから輸入木材製品の不足が顕著となり、国産材への代替需要が高まったが、原木の生産から製品として利用されるまでの木材の流通には一定程度の期間が必要であることなどから、需給が逼(ひっ)迫し国内生産の製材品や集成材の価格が春から急上昇した。その後の価格も高い水準で推移している(資料 特1-6)。


針葉樹合板の国内生産については、令和2(2020)年は、新型コロナウイルス感染症の影響により木材需要の減少を受けて減産していたため、同年5月から製品在庫が減少傾向で推移していた。その後、令和3(2021)年の新設住宅着工戸数が前年と比較し回復傾向で推移したことから、国内合板メーカーは稼働率を上げて対応してきたものの、令和3(2021)年夏頃から需給が逼(ひっ)迫し始め、価格が上昇した。

製品価格が上昇したことにより、国産原木の価格についても、同年の春から上昇が見られた(資料 特1-7)。原木価格の上昇幅には地域による違いが生じたが、これは地域の工場配置により原木の需給構造が異なる等のためと推察される。製材工場が多い九州等では、春の原木価格の上昇が顕著に表れた(資料 特1-8、9)。また、製材、集成材は製品価格の上昇幅が大きかったため、原木についても製材用は価格の上昇幅が大きかった。合板用原木価格についても、同年4月頃から徐々に上昇し始めている。


また、製材・合板用材としての需要が多く、西日本を中心に主要な生産地も限られるヒノキは原木価格の上昇幅が大きく、九州から東北まで各地で生産されるスギの原木価格も上昇している。さらに、特に合板需要が多い東北では、合板に用いられるカラマツの原木価格の上昇幅は大きなものとなっている。


(過去の輸入材不足時の状況)

過去にも木材輸出国の規制強化等により輸入材が不足し、原木や木材製品の原産国が置き換わってきている。

平成4(1992)年から平成5(1993)年にかけて、米国とマレーシアでの資源保護や野生動物保護のための規制強化の影響等から、米材と南洋材(*17)の丸太価格が上昇し、その後、北洋材(*18)丸太や欧州材製材品等の輸入が増加した。

平成18(2006)年には、インドネシアが違法伐採対策を強化したため、南洋材合板の輸入価格が上昇し、以後、輸入量も減少した。さらに、平成19(2007)年には、ロシアが針葉樹丸太の輸出税を引き上げたことで、北洋材丸太の輸入量が激減し、我が国の合板製造において、国産材への原料転換が進展した。このように、平成4(1992)年の時と異なり、国産材への転換が進展したのは、平成14(2002)年頃から国産材を合板に利用するため、技術開発や間伐材等の安定供給体制の構築に取り組み、技術的、資源的に需要に応えられる状況を作り出したことが大きい。


(*17)マレーシア、フィリピン、インドネシア、パプアニューギニア等の南方地域から輸入される木材。

(*18)ロシアから輸入される木材。



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