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林野庁

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第1部 第1章 第4節 国際的な取組の推進(2)

(2)地球温暖化対策と森林

(国連気候変動枠組条約と京都議定書)

地球温暖化防止に向けて

地球温暖化は、人類の生存基盤に関わる最も重要な環境問題の一つとなっている。気候変動に関する政府間パネル(IPCC(*105))は、第6次評価報告書を前回評価報告書以来8年ぶりに発表しており、2021年8月に発表した「第1作業部会報告書(自然科学的根拠)」では、地球温暖化が人間の影響で起きていることを初めて「疑う余地がない」と評価した。また、2022年2月に発表した「第2作業部会報告書(影響・適応・ぜい弱性)」では、人為起源の気候変動は極端現象の頻度と強度の増加を伴い、広範囲にわたる悪影響を自然の気候変動の範囲を超えて引き起こしているとし、さらに同年4月に発表した「第3作業部会報告書(気候変動の緩和)」では、COP26より前に発表・提出された各国の対策を行ったとしても、21世紀中に温暖化が1.5℃を越える可能性が高いとの見通しを示している。

「気候変動に関する国際連合枠組条約(国連気候変動枠組条約(UNFCCC(*106)))」は、地球温暖化防止のための国際的な枠組みであり、大気中の温室効果ガス濃度を安定化させることを目的としている。

1997年に京都で開催された国連気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)では、先進国に対して法的拘束力のある温室効果ガスの排出削減目標等を定めた「京都議定書」が採択された。我が国は、同議定書の第二約束期間(2013年から2020年まで)に参加せず目標を設定していないが、この間も、累次のCOP合意に基づき、森林経営活動や国内の森林から搬出された後の木材(伐採木材製品(HWP(*107)))に由来する温室効果ガス吸収量・貯蔵量を含め、国連気候変動枠組条約事務局に対して2013年以降の吸収量の報告を行っている。令和2(2020)年度における森林吸収量は約4,050万CO2トン、このうちHWPによる貯蔵量は約285万CO2トンとなっている(*108)。


(*105)気候変動に関する最新の科学的知見(出版された文献)について取りまとめた報告書を作成し、各国政府の気候変動に関する政策に科学的な基礎を与えることを目的として、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)の下に設立された組織。IPCCは「Intergovernmental Panel on Climate Change」の略。

(*106)「United Nations Framework Convention on Climate Change」の略。

(*107)「Harvested Wood Products」の略。京都議定書第二約束期間以降、搬出後の木材における炭素量の変化を温室効果ガス吸収量又は排出量として計上することができる。

(*108)二酸化炭素換算の吸収量(CO2トン)については、環境省プレスリリース「2020年度(令和2年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について」(令和4(2022)年4月15日付け)による。CO2トンは、炭素換算の吸収量(炭素トン)に44/12を乗じて換算したもの。



(2020年以降の法的枠組みである「パリ協定」等)

2020年以降の新たな法的枠組みについては、2015年のCOP21において、先進国、開発途上国を問わず全ての締約国が参加する公平かつ実効的な法的枠組みである「パリ協定(*109)」が採択された(*110)(資料1-28)。

資料1-28 「パリ協定」の概要

2018年のCOP24では、パリ協定の実施指針が採択され、これまでと同じ方法により温室効果ガスの排出・吸収量を計上することが認められたため、パリ協定の下でも、我が国の森林が吸収源として排出削減目標の達成に貢献することが可能となった。

また、パリ協定の実施に必要な「パリルールブック」(実施指針)のうち、パリ協定第6条(市場メカニズム)の実施ルール等の重要議題はCOP24では合意に至らず継続議題となっていたが、2021年のCOP26において、これらを含む継続議題の全てが合意に至り、「パリルールブック」が完成した。


(*109)「Paris Agreement」の日本語訳。

(*110)パリ協定の採択については、「平成27年度森林及び林業の動向」トピックス4(5ページ)を参照。



(新たな「地球温暖化対策計画」)

令和3(2021)年10月に改訂された「地球温暖化対策計画」では、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、令和12(2030)年度の日本の温室効果ガス排出削減目標を引き上げ、平成25(2013)年度⽐46%削減を目指し、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けることとしている。森林吸収量についても、目標を約2.7%に引き上げている(資料1-29)。

資料1-29 我が国の温室効果ガス排出削減と森林吸収量の目標

この目標達成に向けては、森林・林業基本計画等に基づき、適切な間伐の実施等の取組に加え、人工林において「伐って、使って、植えて、育てる」循環利用の確立を図り、炭素を貯蔵する木材の利用を拡大しつつ、エリートツリー等の再造林等により成長の旺盛な若い森林を確実に造成していくことが重要であり、地方公共団体、森林所有者、民間の事業者、国民など各主体の協力を得つつ、取組を進めていくこととしている。なお、新たな目標値は、森林の成長に関する最新の調査データも反映して設定している。


(開発途上国の森林減少・劣化に由来する排出の削減等(REDD+)への対応)

開発途上国の森林減少・劣化に由来する温室効果ガスの排出量は、世界の総排出量の約1割を占めるとされていることから(*111)、パリ協定においては、開発途上国における森林減少・劣化に由来する排出の削減並びに森林保全、持続可能な森林経営及び森林炭素蓄積の強化(REDD+(レッドプラス)(*112))の実施及び支援が奨励されている。

我が国は、緑の気候基金(GCF(*113))等への資金拠出を通じた支援や技術支援のほか、二国間クレジット制度(*114)(JCM(*115))の下でのREDD+活動を推進しており、令和3(2021)年12月現在、カンボジア及びラオスとの間でガイドライン類が策定されている。

また、国立研究開発法人森林研究・整備機構に開設されたREDDプラス・海外森林防災研究開発センターでは、REDD+の実施に必要な技術解説書や独立行政法人国際協力機構(JICA)と共に立ち上げた「森から世界を変えるプラットフォーム」による情報提供等により、開発途上国や民間企業等のREDD+活動を支援している。


(*111)IPCC(2022)IPCC Sixth Assessment Report: Climate Change 2022: Mitigation of Climate Change, the Working Group 3 contribution, Summary for Policymakers: 6.

(*112)「Reducing emissions from deforestation and forest degradation, and the role of conservation, sustainable management of forests and enhancement of forest carbon stocks in developing countries」の略。

(*113)「Green Climate Fund」の略。

(*114)開発途上国等への優れた脱炭素技術、製品、システム、サービス、インフラ等の普及や対策実施を通じ、実現した温室効果ガス排出削減・吸収への日本の貢献を定量的に評価するとともに、日本のNDC(国が決定する貢献)の達成に活用する制度。

(*115)「Joint Crediting Mechanism」の略。



(気候変動への適応)

気候変動への適応については、令和2(2020)年12月に公表された「気候変動影響評価報告書」で示された最新の科学的知見を勘案しつつ、「気候変動適応法(*116)」に基づき、令和3(2021)年10月に「気候変動適応計画」が改定された。同計画では、森林・林業分野では異常な豪雨による土石流等の災害の発生に備え、保安林等の計画的な配備や、治山施設の整備、路網の強靱(じん)化・長寿命化等のほか、渇水等に備えた森林の水源涵(かん)養機能の適切な発揮に向けた森林整備、高潮や海岸侵食に対応した海岸防災林の整備、気候変動による影響の継続的なモニタリング、病害虫対策、気候変動の影響に適応した品種開発等の調査・研究の推進等に取り組むこととしている。

このほか、開発途上国における持続可能な森林経営や森林保全等の取組を支援するとともに、森林の防災・減災機能の強化に資する技術開発等を推進することとしている。


(*116)「気候変動適応法」(平成30年法律第50号)



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