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林野庁

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第1部 第1章 第2節 森林整備の動向(3)

(3)社会全体で支える森林(もり)づくり

(全国植樹祭と全国育樹祭)

国土緑化運動の中心的な行事である「全国植樹祭」が、天皇皇后両陛下の御臨席を仰いで毎年春に開催されている。令和3(2021)年5月には、「第71回全国植樹祭」が島根県で開催された。天皇皇后両陛下はオンラインで御臨席になり、お手植えやお手播(ま)きに加え、天皇陛下による初めての御収穫も行われた。令和4(2022)年には、「第72回全国植樹祭」が滋賀県で開催される予定である。また、「全国育樹祭」は、皇族殿下の御臨席を仰いで毎年秋に開催されている。令和3(2021)年10月には、「第44回全国育樹祭」が秋篠宮皇嗣同妃両殿下のオンラインでの御臨席の下、北海道で開催された。令和4(2022)年には、「第45回全国育樹祭」が大分県で開催される予定である。


(多様な主体による森林(もり)づくり活動が拡大)

NPOや企業等の多様な主体により、森林(もり)づくり活動が行われている。例えば、ボランティア団体等の森林(もり)づくり活動を実施している団体数は、令和3(2021)年度現在3,671団体となっている(資料1-14)。


さらに、SDGsやESG投資(*40)の流れが拡大する中、企業の社会的責任(CSR(*41))活動として、森林(もり)づくりに関わろうとする企業が増加しており、顧客、地域住民、NPO等との協働、基金等を通じた支援、企業の所有森林を活用した地域貢献など多様な取組が行われている。企業による森林(もり)づくり活動の実施箇所数は増加しており、令和2(2020)年度は1,765か所であった(資料1-15)。


このほか、平成20(2008)年に開始された「フォレスト・サポーターズ」登録制度は、個人や企業などが日常の生活や業務の中で自発的に森林整備や木材利用に取り組む仕組みとなっており、その登録数は令和3(2021)年12月末時点で、約6.9万件となっている。


(*40)従来の財務情報に加え、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)を判断材料とする投資手法。The Global Sustainable Investment Alliance “2020 Global Sustainable Investment Review”によると、世界全体のESG投資額は、2016年から2020年までの4年間で55%増加し、35兆3,010億ドルとなった。

(*41)「Corporate Social Responsibility」の略。



(森林環境教育を推進)

現在、森林内での様々な体験活動等を通じて、森林と人々の生活や環境との関係についての理解と関心を深める「森林環境教育」の取組が進められている。

その取組の一例として、学校林(*42)の活用が挙げられる。学校林を保有する小中高等学校は、全国の6.8%に相当する約2,500校で、全国の合計面積は約1万7千haである。学校林では、植栽、下刈り、枝打ち等の体験や、植物観察、森林の機能の学習等が行われている(*43)。

さらに、子供たちが心豊かな人間に育つことを目的として、「緑の少年団」による森林(もり)づくり体験・学習活動、緑の募金等の奉仕活動等が行われている(*44)(令和4(2022)年1月現在、全国で3,122団体、約32万名が加入)。

また、高校生が造林手や木工職人等の名人を訪ね、一対一で聞き書き(*45)し技術や生き方を学び、その成果を発信する「聞き書き甲子園(*46)」については、令和3(2021)年9月に「聞き書き甲⼦園20周年企画「聞く」と「書く」のあいだ展」が東京都渋谷区で実施された(資料1-16)。

このほか、林野庁においては、林野図書資料館が、森林の魅力や役割、林業の大切さについて分かりやすく表現した漫画やイラストを作成・配布しており、地方公共団体の図書館等と連携した企画展示等や地域の小中学校等の森林環境教育に活用されている。


(*42)学校が保有する森林(契約等によるものを含む。)であり、児童及び生徒の教育や学校の基本財産造成等を目的に設置されたもの。

(*43)公益社団法人国土緑化推進機構「学校林現況調査報告書(平成28年調査)」(平成30(2018)年3月)

(*44)公益社団法人国土緑化推進機構ホームページ「緑の少年団」

(*45)話し手の言葉を録音し、一字一句全てを書き起こした後、一つの文章にまとめる手法。

(*46)農林水産省、文部科学省、環境省、関係団体及びNPOで構成される実行委員会の主催により実施されている取組。平成14(2002)年度から「森の聞き書き甲子園」として始められ、平成23(2011)年度からは「海・川の聞き書き甲子園」と統合し、「聞き書き甲子園」として実施。



(「緑の募金」による森林(もり)づくり活動の支援)

「緑の募金(*47)」には、令和2(2020)年に総額約19億円の寄附金が寄せられた。寄附金は、(ア)水源林の整備や里山林の手入れ等、市民生活にとって重要な森林の整備及び保全、(イ)苗木の配布や植樹祭の開催、森林ボランティア指導者の育成等の緑化推進活動、(ウ)熱帯林の再生や砂漠化の防止等の国際協力に活用されているほか、東日本大震災等の地震や、台風、豪雨等の被災地における緑化活動や木製品提供等に対する支援にも活用されている(*48)。


(*47)「緑の募金による森林整備等の推進に関する法律」(平成7年法律第88号)に基づき、森林整備等の推進に用いることを目的に行う寄附金の募集。昭和25(1950)年に、戦後の荒廃した国土を緑化することを目的に「緑の羽根募金」として始まり、現在では、公益社団法人国土緑化推進機構と各都道府県の緑化推進委員会が実施主体。

(*48)緑の募金ホームページ「災害復旧支援」



(森林関連分野のクレジット化等の取組)

農林水産省、経済産業省及び環境省は、平成25(2013)年から省エネ設備の導入、再生可能エネルギーの活用等による温室効果ガスの排出削減量や森林管理による吸収量をクレジットとして国が認証する「J-クレジット制度」を運営している。企業や団体等が森林由来のクレジットを購入することにより、地域の森林保全活動等に資金が還流するため、地球温暖化対策と地域振興を一体的に後押しすることができる。この場合、企業等のクレジット購入者は、入手したクレジットを「地球温暖化対策の推進に関する法律(*49)」に基づく報告やカーボン・オフセット等に利用することができるとともに、我が国の森林整備や生態系保全に貢献したことを、非財務情報として対外的に示すこともできる。他方、森林クレジットの発行者は、クレジットの販売収入でさらに森林整備を加速することが可能となる。これらの取組により、経済と環境の好循環が図られることが期待される(事例1-3)。

現在、森林分野については、森林経営活動と植林活動の2つの方法論(*50)が承認されており、令和4(2022)年3月現在で51件が登録されているほか、旧制度(*51)から48件が移行されている。また、再生可能エネルギー分野の方法論として木質バイオマス固形燃料の活用が承認されており、81件が登録されているほか、旧制度から84件のプロジェクトが移行されている。

事例1-3 J-クレジット制度を活用した森林整備促進の取組事例

(1)長崎県林業公社の取組

公益社団法人長崎県林業公社は、公社が管理する森林のうち約700haを対象として、これまでに、29,100CO2トンのクレジット認証を取得している。このうち、14,500CO2トンについて、営業による木材市場や地域ビルダー等への販売、プロバイダー経由による食品メーカーや出版社等への販売など、様々な販売チャンネルを活用し、6年間(平成28(2016)年~令和4(2022)年3月)で4,770万円の収入を得ている。なお、その収益を基金化し、更なる森林整備促進のための財源として活用している。さらに、ながさきカーボン・オフセット推進協議会員としても活動し、長崎大学環境科学部と連携協定を締結するなど、カーボン・オフセットや、森林の環境に関する研究、人材育成等、新たな取組も模索している。



(2)ENEOSホールディングス(株)、愛媛県久万高原町(くまこうげんちょう)及び久万広域森林組合の取組
3者による連携協定締結式

ENEOSホールディングス株式会社、愛媛県久万高原町(くまこうげんちょう)及び久万広域森林組合の3者は、森林を活用した脱炭素社会の実現に向けた連携協定を締結した。久万広域森林組合が管理する久万高原町の町有林を対象とするクレジットを創出し、当該クレジットをENEOSが全量買い取ることで、その販売益を更なる森林の管理・経営に必要な対策に充て、森林の循環利用を目指す計画である。



(*49)「地球温暖化対策の推進に関する法律」(平成10年法律第117号)

(*50)排出削減・吸収に資する技術ごとに、適用範囲、排出削減・吸収量の算定方法及びモニタリング方法を規定したもの。

(*51)「国内クレジット制度」と「J-VER制度」であり、この2つを統合して「J-クレジット制度」が開始された。



(森林吸収量等森林のカーボンニュートラル貢献価値の見える化)

各地域において、企業等が自ら又は支援をして行う森林整備の取組が見られる。このような企業等が実施する森林整備の取組について、その成果を二酸化炭素吸収量として認証する取組が34都府県で実施されている。

林野庁では、このような企業等の取組の意義や効果を消費者やステークホルダーに訴求することの一助となるよう、森林による二酸化炭素吸収量の算定方法の周知を行った(*52)。

さらに、企業等が実施した森林整備の認知度を高めるとともに、更なる取組の拡大を図るため、この算定方法等を活用した新たな顕彰制度「森林×脱炭素チャレンジ」を創設し、企業等が森林整備に取り組みやすい環境整備を進めている。

このような中、令和3(2021)年4月に「農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法(*53)」が改正され、林業分野にも投資対象が拡大されたほか、令和4(2022)年2月に国会に提出された「地球温暖化対策推進法の一部を改正する法律案」では、新たな脱炭素出資制度の創設が盛り込まれるなど、森林の整備や利用をテーマとした投資の可能性が広がりつつある。このような動向を踏まえ、林野庁では、令和4(2022)年1月から有識者による「森林・林業・木材産業への投資のあり方に関する検討会」を開催し、森林・林業・木材産業への投資が、森林・林業基本計画の推進上望ましい形で行われるよう、その判断の助けとなる仕組みについて検討を進めている。


(*52)「森林による二酸化炭素吸収量の算定方法について」(令和3(2021)年12月27日付け3林政企第60号林野庁長官通知)

(*53)「農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法」(平成14年法律第52号)。改正後の法律名は「農林漁業法人等に対する投資の円滑化に関する特別措置法」。



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