第4章 国有林野の管理経営











1. 国有林野の役割
(1)国有林野の分布と役割
➢ 国有林野(758万ha)は、我が国の国土面積の約2割、森林面積の約3割を占め、奥地脊梁(せきりょう)山地や水源地域に広く分布しており、国土の保全、水源の涵(かん)養等の公益的機能を発揮
➢ 多様な生態系を有する国有林野は、生物多様性の保全を図る上でも重要であり、我が国の世界自然遺産(知床(しれとこ)、白神(しらかみ)山地、小笠原(おがさわら)諸島、屋久島(やくしま))の陸域の95%は国有林野

(2)国有林野の管理経営の基本方針
➢ 国有林野は重要な国民共通の財産であり、国有林野事業として一元的に管理経営
➢ 国有林野事業では、2013年度の一般会計化等を踏まえ、公益重視の管理経営を一層推進するとともに、林業の成長産業化に向けた貢献等の取組を推進
2. 国有林野事業の具体的取組
(1)公益重視の管理経営の一層の推進
➢ 個々の国有林野を、重視すべき機能に応じて「山地災害防止」「自然維持」「森林空間利用」「快適環境形成」「水源涵(かん)養」の5つのタイプに区分し管理経営
➢ 国有林野の約9割は「水源かん養保安林」等の保安林であり、国民の安全・安心の確保のため、治山事業により荒廃地の整備等を実施
➢ 大規模な災害復旧については、民有林でも直轄で復旧事業を実施したほか、被災した地方公共団体に対する技術者の派遣等の協力・支援を実施
➢ 森林吸収源対策として、間伐等の森林整備、治山施設等における木材利用等を推進
➢ 生物多様性の保全を図るため、「保護林」や「緑の回廊」を設定、希少な野生生物の保護、シカ等の鳥獣による森林被害への対策等を実施
➢ 「公益的機能維持増進協定」により、国有林に隣接・介在する民有林を一体的に整備・保全
2019年3月末現在までに20件(595 ha)の協定を締結


事例 流木災害防止緊急治山対策プロジェクトの推進
➢ 中部森林管理局は、既存の治山ダムを活用した流木捕捉工の実証的施工に取り組んでおり、2019年度は、富山森林管理署管内において着手
➢ 本工法は、既存の治山ダムに手を加えずに、上流側に近接して流木捕捉施設を単独で設置する工法で、経済性及び施工性の面で優れていることを確認
(2)林業の成長産業化への貢献
➢ 国有林野事業の組織、技術力及び資源を活かし、コンテナ苗の活用や伐採と造林の一貫作業システム等、林業の低コスト化に向けた技術を実証・普及
➢ 技術開発の成果を普及するため、国有林野事業技術開発総合ポータルサイトを2019年6月に開設
➢ 地域における施業集約化の取組を支援するため、民有林と連携して全国168か所に「森林共同施業団地」を設定し、民有林と国有林を接続する路網整備や森林施業等を実施
➢ 製材・合板工場等と協定を締結し、国有林材を安定供給する「システム販売」を実施(2018年度には国有林からの素材販売量の70%)
➢ 森林経営管理制度の要となる林業経営者の育成を図るため、2019年6月5日、「国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律」が成立(2020年4月施行)
➢ 国有林野の一定区域で、公益的機能の維持増進や地域の産業振興等を条件に、一定期間、安定的に樹木を採取できる「樹木採取権」を創設

事例 県と連携した林業の低コスト化の取組
➢ 青森森林管理署は、青森県と連携して、伐採から育林まで各段階における低コスト化のための取組を実施
➢ 同森林管理署が中心となって、作業システムセミナー、下刈り省略の現地検討会を開催し、一方で、青森県の主催により循環型林業を担う林業事業体育成のためのセミナー、一貫作業システムの現地研修会を開催
➢ 互いに連携することによって県内関係者が育林に関する様々な情報を共有する機会を提供
(3)「国民の森林(もり)」としての管理経営等
➢ 森林環境教育や森林(もり)づくり等に取り組む多様な主体に対して、「遊々(ゆうゆう)の森」、「ふれあいの森」、「木の文化を支える森」、「法人の森林」等を設定し、フィールドを提供。また、地域の関係者や自然保護団体等と連携した「モデルプロジェクト」を実施
➢ 地方公共団体や地元住民等に対して国有林野の貸付け等を実施。また、「レクリエーションの森」(自然休養林など6種類)においては、地域関係者と連携して管理運営
➢ 「レクリエーションの森」のうち特に観光資源としての潜在的魅力がある93か所を「日本美(にっぽんうつく)しの森 お薦め国有林」として選定しており、標識類等の多言語化、施設整備等の重点的な環境整備やウェブサイト等による情報発信の強化に向けた取組を実施
➢ 東日本大震災からの復旧・復興に向け、海岸防災林の再生や避難指示解除区域における森林整備事業の再開等の取組を実施


事例 「日本美(にっぽんうつく)しの森 お薦め国有林」で初のオフィシャルサポーター協定を締結
➢ 2019年6月、中部森林管理局北信(ほくしん)森林管理署管内の「戸隠(とがくし)・大峰(おおみね)自然休養林」では、「日本美しの森お薦め国有林」としては全国で初めて、資金や資材等について、民間企業等から支援を受ける「サポーター制度」を導入
➢ 4団体が木道改修資材、資金又は労力を提供
➢ 地域関係者で構成される戸隠大峰自然休養林保護管理協議会と同森林管理署が連携し、「戸隠・大峰自然休養林」にある「戸隠森林植物園」内の老朽化した木道について、2020年4月から、地元ボランティアの協力も交えた改修作業を実施予定
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