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第1部 第2章 第2節 特用林産物の動向(1)


「特用林産物」とは、一般に用いられる木材を除き、森林原野を起源とする生産物の総称であり、食用のきのこ類、樹実類や山菜類等、漆や木ろう等の伝統工芸品の原材料、竹材、桐材、木炭等が含まれる。特用林産物は、林業産出額の約5割を占めており、木材とともに、地域経済の活性化や雇用の確保に大きな役割を果たしている(*110)。以下では、きのこ類を始めとする特用林産物の動向について記述する。


(*110)林業産出額における栽培きのこ類等の産出額(庭先販売価格ベース)については、第2章第1節(1)108ページを参照。なお、以下では、林野庁「平成30年特用林産基礎資料」等による、東京都中央卸売市場等の卸売価格等をベースにした生産額を取り扱う。


(1)きのこ類の動向

(きのこ類は特用林産物の生産額の8割以上)

平成30(2018)年の特用林産物の生産額は、前年比2%増の2,828億円であった。このうち、「きのこ類」は前年比4%増の2,454億円となり、全体の8割以上を占めている。このほか、樹実類、たけのこ、山菜類等の「その他食用」が279億円、木炭やうるし等の「非食用」が95億円となっている。

きのこ類の生産額の内訳をみると、生しいたけが676億円で最も多く、次いでぶなしめじが506億円、まいたけが453億円の順となっている。

また、きのこ類の生産量は、長期的に増加傾向にあったが、近年は46万トン前後で推移しており、平成30(2018)年は前年比2.0%増の46.7万トンとなった。内訳をみると、えのきたけ(14.0万トン)、ぶなしめじ(11.8万トン)、生しいたけ(7.0万トン)で生産量全体の約7割を占めている(*111)(資料2-43)。


きのこ生産者戸数は、減少傾向で推移しており、きのこ生産者戸数の多くを占める原木しいたけ生産者戸数についても同様の傾向となっている(資料2-44)。


(*111)林野庁プレスリリース「平成30年の特用林産物の生産動向について」(令和元(2019)年8月30日付け)



(輸入も輸出も長期的には減少)

平成30(2018)年のきのこ類の輸入額は、前年比3%減の139億円となった。このうち、乾しいたけが前年比1%減の61億円(4,998トン)、まつたけが同11%減の44億円(798トン)、生しいたけが同6%減の6.4億円(1,942トン)、乾きくらげは前年比8%増の26億円(2,611トン)となっている。これらのきのこ類の輸入元のほとんどは中国である(*112)。生しいたけの輸入量は、ピーク時の平成12(2000)年には4万トンを超えたものの、平成13(2001)年のセーフガード暫定措置の影響等により大幅に減少した。その後も減少傾向で推移し、平成30(2018)年度は前年比8%減の1,942トンとなっている(資料2-45)。

一方、輸出について乾しいたけをみると、平成30(2018)年は、主要な輸出国である台湾、香港、アメリカ及びシンガポール向けが減少した影響により、輸出額は前年比16%減の1.4億円(24トン)となっている。乾しいたけは、戦後、香港やシンガポールを中心に盛んに輸出され、昭和59(1984)年には216億円(4,087トン)に上ったが、中国産の安価な乾しいたけが安定的に供給されるようになったことから、日本の輸出額は長期的に減少してきている。


(*112)林野庁「特用林産基礎資料」



(きのこ類の消費拡大・安定供給に向けた取組)

きのこ類の消費の動向を年間世帯購入数量の推移でみると、他のきのこが増加傾向であるのに対し、生しいたけはほぼ横ばい、乾しいたけは下落傾向で推移している(資料2-46)。


平成30(2018)年のきのこ類の価格は、品目によって異なる傾向となった。しいたけとなめこについては2年連続で下落したが、他の品目は全体的に上昇傾向となり、まいたけは前年比20%増と大きく上昇した。乾しいたけについては平成21(2009)年から下落が続いていたが、平成27(2015)年に大幅に上昇した後は、東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響により生産量が少ない状況が続いていることなどにより、高い水準で推移していたが、平成29(2017)年から再び下落傾向となっている(資料2-47)。


きのこ類の消費拡大のため、林野庁は、きのこ類のおいしさや機能性(*113)を消費者に伝えるPR活動を関係団体と連携して実施している。きのこの生産団体等においても様々な取組が行われている(事例2-6)。

また、きのこの安定供給に向けて、林野庁は、効率的で低コストな生産を図るためのほだ場等の生産基盤や生産・加工・流通施設の整備に対して支援している。

事例2-6 原木しいたけサミットの開催

原木しいたけサミットの様子

令和元(2019)年8月29日に茨城県つくば市内のホテルで、初の「全国・原木しいたけサミット」が開催され、20道県から約220人が参加した。同サミットは、原木しいたけ生産者を取り巻く需要の低迷、後継者不足等の様々な課題に対し、全国の関係者が共同で取り組むことを目指して開催された。

サミット宣言として、「(ア)安心・安全な原木しいたけの生産拡大、(イ)後継者の育成や新規参入者の確保、(ウ)原木しいたけの味力を発信する消費宣伝活動や機能性の表示などに関係者一丸となって取り組むこと」が採択された。分科会では、6つのテーマに参加者が分かれて意見交換を行い、新規就農者や後継者からは、原木しいたけの存続を心配する声や、「ブランド化を進めてはどうか」との声等が上がった。

この取組を契機として、原木しいたけを取り巻く様々な課題に関係者が一丸となって対応する原木しいたけの「輪」が広がることが期待される。


(*113)低カロリーで食物繊維が多い、カルシウム等の代謝調節に役立つビタミンDが含まれているなど。



お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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