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第1部 第2章 第2節 特用林産物の動向(2)

(2)漆、木炭、竹、薪等の特用林産物の動向

(漆の動向)

漆は、ウルシの樹液を採取して精製したもので、古来、食器、工芸品、建築物等の塗装や接着に用いられてきた。漆の国内消費量は平成30(2018)年には37.7トンであるが、そのうち国内生産量は5%に当たる1.8トンとなっており(資料2-48)、中国からの輸入が大部分を占めている。文化庁は、国宝・重要文化財建造物の保存修理に原則として国産漆を使用する方針としており、年平均で約2.2トンの国産漆が必要と予測している(*114)ことから、漆の増産が必要な状況となっている。このため、国産漆の産地においてウルシ林の育成・確保(*115)や漆き職人の育成等の取組が進められている。さらに、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所を始めとする研究グループにより、漆の増産技術や未利用漆の改質・利用技術等について研究が行われた。


(*114)文化庁プレスリリース「文化財保存修理用資材の長期需要予測調査の結果について(国宝・重要文化財建造物の保存修理で使用する漆の長期需要予測調査)」(平成29(2017)年4月28日)

(*115)国有林野における取組については、「平成28年度森林及び林業の動向」第5章第2節(3)の事例5-17(197ページ)を参照。



(木炭の動向)

木炭は、日常生活で使用する機会が少なくなっているが、電源なしで使用できる、調理だけでなく暖房にも利用できる、長期保存が可能であるなどの利点があり、災害時の燃料としても期待できる。このため、木炭業界では、木炭の用途に関する周知や家庭用木炭コンロの普及等により、燃料としての需要の拡大を図っている。また、木炭は多孔質(*116)であり吸着性に優れるという特性を有することから、燃料用以外に土壌改良資材、水質浄化材、調湿材等としての利用も進められている。なお、農地へ施用されるバイオ炭(*117)については、土壌中に炭素を貯留させることから、温暖化対策に寄与する資材としての活用が期待されている(*118)。

木炭(黒炭、白炭、粉炭、竹炭、オガ炭)の国内生産量は、1990年代半ば以降長期的に減少傾向にあり、平成30(2018)年は前年比6%減の2.2万トンとなっている。一方で、近年、木炭生産における生産者の育成、ブランド化等に取り組む動きもみられる。

木炭の輸入量は、近年11万~13万トンで推移しており、平成30(2018)年は前年比4.4%減の11.9万トンとなった。国別にみると、主な輸入先国である中国、マレーシア、インドネシアで全体の約8割を占めている。

また、木炭等を生産する際に得られる木酢液等は、主に土壌改良用として利用されている。その国内生産量は、長期的に減少傾向が続く中で、近年は2,000~3,000kLで推移しており、平成30(2018)年の生産量は前年比1.7%増の2,647kLとなっている。


(*116)木炭に無数の微細な穴があることで、水分や物質の吸着機能を有し、湿度調整や消臭の効果がある。

(*117)生物資源を材料とした、生物の活性化及び環境の改善に効果のある炭化物のこと(日本バイオ炭普及会ホームページ)。

(*118)「2006年IPCC(国際的な専門家による気候変動に関する政府間パネル)国別温室効果ガスインベントリガイドラインの2019年改良」において、新たにバイオ炭に係る算定方法が提示された。



(竹材の動向)

竹は我が国に広く分布し、従来、身近な資材として、日用雑貨、建築・造園用資材、工芸品等に利用されてきたが、代替材の普及や安価な輸入品の増加等により、竹材の生産量は減少傾向で推移してきた。こうした竹材需要の減退等により、管理が行き届かない竹林の増加や、周辺森林への竹の侵入等の問題も生じている。

近年、竹紙の原料としての利用の本格化等を背景に、平成22(2010)年の96万束(*119)を底に増加傾向に転じたが、平成30(2018)年は前年比4.4%減の114万束(*120)となっている。

このため、これまで竹資源の有効利用に向けて、竹材の低コストな伐採・集材システムの構築に向けた取組や、竹チップをきのこ菌床用資材、バイオマス燃料(*121)、パルプ等に利用する技術の研究開発、竹チップを原料とする建築資材(ボード)等の製造技術の開発が行われてきた。

また、近年、竹チップボイラーの導入、竹を原料とした建材の製造、竹を燃料とするバイオマス発電所の建設等の取組も進んでいる。

このような中、林野庁は、竹の生態、伐採・搬出を含む竹林の整備、利用等に関する情報収集等を行い、竹の利活用の現状や利用拡大に向けたアプローチ等について取りまとめた報告書「竹の利活用推進に向けて」を、平成30(2018)年10月に公表した。


(*119)1束は人が持ち運びするためひとまとめにしたサイズ。例えば、マダケでは直径8cmのマダケ3本分。

(*120)3.4万トン相当(束当たり30kgとして換算)

(*121)平成29(2017)年には、林野庁の補助事業により、竹をバイオマス発電用燃料として木質と同等品質に改質する技術が国内企業によって開発された。



(薪の動向)

薪は、古来、煮炊きや風呂等に利用され、生活に欠くことのできないエネルギー源であったが、昭和30年代以降、石油やガスへの燃料転換等により利用が減少し、全国の販売向け薪の生産量は、平成18(2006)年まで減少傾向が続いた。

しかし、平成19(2007)年以降は、従来のかつお節製造用に加え、ピザ窯やパン窯用等としての利用や、薪ストーブの販売台数の増加(*122)等を背景に、薪の生産量は増加傾向に転じた。平成24(2012)年には東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響等により大きく減少したが、平成30(2018)年には4.8万m3(丸太換算(*123))となり、近年は5万m3程度で推移している。平成30(2018)年の生産量を都道府県別にみると、多い順に鹿児島県(8,964m3)、長野県(8,459m3)、北海道(7,932m3)となっている。価格については、長期的に上昇傾向で推移しており、平成30(2018)年は26,100円/層積m3となっている(資料2-49)。

薪は、近年は、備蓄用や緊急災害対応用の燃料としても販売されている(*124)。このほかにも、自家消費用に生産されるものが相当量あると考えられる(*125)。


(*122)一般社団法人日本暖炉ストーブ協会調べ。一般家庭や団体等による薪ストーブの購入を地方公共団体等が支援する動きもみられる。

(*123)1層積m3を丸太0.625m3に換算。

(*124)「平成26年度森林及び林業の動向」第3章第2節(2)の事例3-7(125ページ)を参照。

(*125)長野県が平成21(2009)年度に行った調査では、県内の約4%の世帯が薪ストーブや薪風呂を利用していた。また、薪ストーブ利用世帯における年間の薪使用量は平均9.0m3で、使用樹種は広葉樹が76%、針葉樹が24%であり、使用全量を購入せずに自家調達している世帯が約半数を占めた。



(その他の特用林産物の動向)

樹実類やわさび、山菜類等は、古くから山村地域等で生産され、食用に利用されてきた。平成30(2018)年には、樹実類のうち「くり」の収穫量は16,500トン、また、「わさび」については2,080トンとなっている。山菜類のうち「わらび」は762.6トン、「乾ぜんまい」は38.7トン、「たらのめ」は142.2トンとなっている。

また、漢方薬に用いられる薬草等として、滋養強壮剤の原料となる「くろもじ」(平成30(2018)年の生産量108.6トン)、胃腸薬の原料となる「きはだ皮」(同4.6トン)、「おうれん」(同0.6トン)等が生産されている。

林野庁では、山村独自の資源を活用する地域の取組への支援を通じ、このような特用林産物の振興を図っている。

挿絵6

お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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