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林野庁

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第1部 第2章 第1節 林業の動向(3)

(3)林業労働力の動向(*36)

森林の施業は、主に、山村で林業に就業して森林内の現場作業等に従事する林業労働者が担っている。林業労働力の確保は、林業のみならず、地域資源を活用した雇用の創出や、定住化による山村の活性化の観点からも重要である。


(*36)林業労働力の動向については、特集1も参照。林業従事者の動向については特集1第1節(2)15-18ページ、林業従事者の確保・育成については第3節(1)39-40ページ、労働環境の向上については、第3節(2)40-43ページを参照。



(林業労働力の現状)

人が直接作業する工程の多い林業において、育林や伐採に携わる林業従事者は、平成27(2015)年は4.5万人で、10年前の平成17(2005)年から7千人減少した。これは、伐木・造材等の従事者が増加したのに対し、育林従事者が1万人減少したためである(資料2-17)。

一方で、林業従事者の常時雇用化は進展している。主要な就業先である森林組合での就業日数の内訳をみると、1年間に210日以上就業した者の割合は、平成20(2008)年には40%に過ぎなかったものが、平成30(2018)年には65%にまで伸びており、常時雇用される者の割合が増加している。

これを就業者数でみると、210日以上就業した者は1割減にとどまるのに対し、210日未満の者は7割減となっている。この間、森林組合は合併により組合数が711から617に減少したものの、事業規模2,400億円を維持しており、森林組合を始めとする林業経営体が林業従事者を定着させるに当たり、年間を通じた事業量の確保が重要であることがうかがえる(*37)。

また、林業従事者の高齢化率(65歳以上の従事者の割合)は、平成12(2000)年以降は低下し、平成22(2010)年には21%となった。その後、我が国全体の65歳以上の就業者が増加し、全産業の高齢化率が上昇する中で、林業従事者についても上昇し、平成27(2015)年には25%となっている。

これに対し、若年者率(35歳未満の従事者の割合)は、平成2(1990)年以降は上昇して平成22(2010)年には18%となった。その後も全産業の若年者率が低下する中で、林業従事者についてはほぼ横ばいで推移し、平成27(2015)年には17%となっている(資料2-17)。


林業従事者の平均年齢は、平成27(2015)年には52.4歳であり、全産業の平均年齢46.9歳と比べると高い水準にあるが、平成17(2005)年の54.4歳からは下がるなど、若返り傾向にある。

林業従事者は、昭和40(1965)年に21.6万人(*38)いたが、平成27(2015)年には4.5万人となるなど、この50年で2割に減少した。この間、人工林の面積が約250万ha増加したが(*39)、新たな造林面積の減少や森林資源の成熟化により、育林従事者が必要とされる場面が減少し、また、伐木・造材・集材従事者についても、高性能林業機械の普及による生産性向上等により、必要とされる場面が減少した。なお、特集1でも紹介したように、労働環境の改善に向けては、引き続き課題が残されている。

一方、近年、事業基盤となる伐採や造林が可能な森林が増加していることは、大胆な生産・流通システムの見直しによる現場の生産性向上、造林方法の見直しによる事業の効率化を図る機会と捉えることもできる。

このため、林業従事者の確保に当たっては、林業経営の将来見通しを行いつつ、現場の多能工化や、現場部門と管理部門の連携による効率的な事業実施により収益機会を拡大するなど、林業経営の視点からも取り組む必要がある。


(*37)林野庁「平成30年度森林組合統計」

(*38)昭和40年国勢調査「産業と職業(20%抽出集計結果)」第4表に計上されている「育林夫」、「伐木夫」、「運材夫」及び「炭焼夫、製薪夫」の総数の計。

(*39)人工林面積の推移については、特集1第1節(1)資料特1-1(12ページ)を参照。



(林業活性化に向けた女性の取組)

林業に従事する女性の割合は、男性と比較して著しく低いことから(資料2-17)、女性の林業従事者の一部は地域的に孤立している状況も見られる。そのため、森林・林業に関する知見や悩みを、近しい境遇にある女性同士で共有し、それぞれの活動を促進するための任意団体が各地で発足している。

女性の森林所有者や林業従事者等による林業研究グループは、1970年代から各地で設立され、森林づくりの技術や経営改善等の研究活動を実施してきたほか、子供たちへの環境教育、特用林産物の加工・販売など森林資源を活用した地域づくりを展開している。また、都道府県の女性林業技術系職員による「豊かな森林づくりのためのレディースネットワーク・21」は、SNSを活用したネットワークを構築し、会員相互の情報共有や技術研鑽を続けており、全国フォーラムや交流会等を通じ、森林・林業の発展に向け、活動を実施している。

学生や様々な職業の女性らから成る「林業女子会(*40)」については、平成22(2010)年以降、全国各地で結成されており、林業や木材利用について語り合うワークショップや野生鳥獣被害の減少にも貢献するジビエ料理の普及促進、森林空間を利用しリラックス効果が期待できる「森ヨガ」など、活動の輪が各地に広がっている。

令和2(2020)年には、これらの団体や個人の枠を越えて、林業に関わりのある全ての女性が気軽に集い、学び・意見を交わしあうことを目的としたオンラインネットワーク「森女もりじょミーティング(*41)」が発足した。森女ミーティングでは、メンバー間の交流だけにとどまらず、メンバーが企業と連携し、様々な企業課題から新たなモノ・コトを生み出す「森女×企業プロジェクト」も進められており、女性の視点と地域資源を活かした生産活動を推進している。

第1期目となる令和2(2020)年度の成果発表会では、地域の森を見える化する教材「森のミッションノート」(連携企業:株式会社シード(東京都文京区))、ホテルの庭園を利用した森林と持続可能性が学べる木育ツアー「日本の森とつながるリトリート&スタディプログラム」(連携企業:ホテル椿山荘東京(藤田観光株式会社)(東京都文京区))、木材の端材の新しい活用をテーマに考えた「端材のたまてばこ」シリーズ(連携企業:野地木材工業株式会社(三重県熊野市))が発表され、令和3(2021)年から、各企業が保有する施設での導入実践や、流通に向けた商品化を進めることとしている。


(*40)平成22(2010)年に京都府で結成されて以降、令和元(2019)年末現在、25グループが活動している(海外1グループを含む)。

(*41)全国林業研究グループ連絡協議会が、林野庁補助事業を活用して創設。一般社団法人全国林業改良普及協会が企画運営を実施。



お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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