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第1部 第2章 第1節 林業の動向(1)

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我が国の林業は、長期にわたり木材価格の下落等の厳しい状況が続いてきたが、近年は国産材の生産量の増加、木材自給率の上昇など、活力を回復しつつある。また、林業の持続的かつ健全な発展を図るため、施業の集約化、林業労働力の確保・育成等に向けた取組が進められている。

以下では、林業生産の動向、林業経営の動向、林業労働力の動向及び林業経営の効率化に向けた取組について記述する。

(1)林業生産の動向

(木材生産の産出額は近年増加傾向で推移)

林業産出額は、国内における林業生産活動によって生み出される木材、栽培きのこ類、薪炭等の生産額の合計である。我が国の林業産出額は、平成17(2005)年以降は4,000億円程度、平成26(2014)年以降は4,500億円以上で推移しており、令和元(2019)年は、前年比1%減の4,976億円となった。

このうち木材生産の産出額は、近年は、丸太輸出、木質バイオマス発電等の新たな木材需要により増加傾向で推移しており、令和元(2019)年は、前年比2%増の2,700億円となり、4年連続で増加している。また、林業産出額全体に占める木材生産の割合は、平成14(2002)年以降は5割程度で推移している。

これに対して、栽培きのこ類生産の産出額は、昭和58(1983)年以降は、2,000億円程度で推移しており、令和元(2019)年は前年比4%減の2,170億円となっている(資料2-1)。


(国産材の素材生産量は近年増加傾向で推移)

令和元(2019)年の我が国の国産材総供給量は、前年比3%増の3,099万m3(*1)となっている。令和元(2019)年に製材、合板及びチップ用材に供給された素材生産量をみると、前年比1%増の2,188万m3となっており、平成14(2002)年以降増加傾向にある。素材生産量を樹種・用途別にみると、スギは前年比2%増の1,274万m3でその67%が製材用、23%が合板等用(*2)、10%がチップ用に、ヒノキは前年比7%増の297万m3でその74%が製材用、16%が合板等用、10%がチップ用に、カラマツは前年比2%減の222万m3でその47%が製材用、38%が合板等用、15%がチップ用に、広葉樹は前年比8%減の201万m3でその9割以上がチップ用となっている(*3)。この結果、令和元(2019)年の国産材の素材生産量の樹種別割合は、スギが58%、ヒノキが14%、カラマツが10%、広葉樹が9%となっている(資料2-2)。


また、主要樹種の都道府県別素材生産量をみると、令和元(2019)年は多い順に、スギでは宮崎県、秋田県、大分県、ヒノキでは高知県、熊本県、岡山県、カラマツでは北海道、岩手県、長野県、広葉樹では北海道、岩手県、福島県となっている(資料2-3)。


国産材の地域別素材生産量をみると、令和元(2019)年は多い順に、東北(25%)、九州(24%)、北海道(15%)となっている。国産材の素材生産量が最も少なかった平成14(2002)年と比較すると、資源量の増加、合板への利用拡大等により、全ての地域で素材生産量が増加しており、特に東北、九州で伸びている(*4)(資料2-2)。


(*1)林野庁「令和元年木材需給表」。パルプ用材、その他用材、しいたけ原木、燃料材、輸出を含む数量。

(*2)LVL(単板積層材)用を含む。以下同じ。

(*3)農林水産省「木材需給報告書」。平成29(2017)年調査から単板製造用素材に合板用に加えてLVL用を含めることとしたため、平成28(2016)年以前の数値とは比較できない。

(*4)平成29(2017)年値から、素材生産量には、LVL用の単板製造用素材を含む。



(森林蓄積量に対する木材生産量の比率)

我が国は、国土の3分の2を森林が占めるなど世界的にも森林率が高く、その森林も着実に蓄積を増加させており森林資源の豊富な国であるが、一方で、自国の木材資源をあまり利用していない国でもある。経済協力開発機構(OECD)加盟国37か国のうち森林蓄積量上位15か国について、2017年時点の森林蓄積量に対する年間の木材生産量の比率をみると、我が国は他国に比べて低位な状況にある(資料2-4)。これら15か国のうち12か国は、2010年から2017年の間、蓄積量を減らしておらず、生産力を維持しつつ我が国よりも蓄積量に対して多くの木材を生産している。


(素材価格は近年横ばいで推移)

スギの素材価格(*5)は、昭和55(1980)年をピークに下落してきた。昭和62(1987)年から住宅需要を中心とする木材需要の増加により若干上昇したものの、平成3(1991)年からは再び下落したが、近年は13,000~14,000円/m3程度でほぼ横ばいで推移している。

ヒノキの素材価格は、スギと同様に、昭和55(1980)年をピークに下落、昭和62(1987)年から上昇、平成3(1991)年から再び下落し、近年は18,000円/m3前後でほぼ横ばいで推移している。

カラマツの素材価格は、昭和55(1980)年の19,100円/m3をピークに下落してきたが、平成16(2004)年を底にその後は若干上昇傾向で推移し、近年は12,000円/m3前後で推移している。

令和2(2020)年の素材価格は、スギ及びヒノキについては下落し、スギは12,700円/m3、ヒノキは17,200円/m3となった。一方でカラマツについてはほぼ横ばいで、12,500円/m3となった。


(*5)製材工場着の価格。素材価格については、第3章第1節(3)162-164ページを参照。



(山元立木価格も近年横ばいで推移)

山元立木価格(*6)の推移を、国内企業物価指数(*7)(総平均、2015年基準)と比較してみると、山元立木価格は昭和55(1980)年までは物価全体と同様に上昇した。その後、国内企業物価指数は緩やかに低下した後、この20年ほどは物価全体が横ばいで推移する中、山元立木価格は下落傾向が続き、近年はほぼ横ばいで推移している。

令和2(2020)年3月末現在の山元立木価格は、スギが前年同月比5%減の2,900円/m3、ヒノキが6%減の6,358円/m3、マツ(トドマツ、エゾマツ、カラマツ)が4%増の4,412円/m3であった(資料2-5)。


(*6)一般財団法人日本不動産研究所「山林素地及び山元立木価格調」による価格。林地に立っている樹木の価格で、樹木から生産される丸太の材積(利用材積)1m3当たりの価格で示される。最寄木材市場渡し素材価格から、伐採や運搬等にかかる経費(生産諸経費等)を控除することにより算出される。

(*7)企業物価指数は、日本銀行が作成している物価指数で、企業間で取引される財を対象として、商品(財)の価格を継続的に調査し、現時点の価格を、基準時点の価格を100として、指数化したもの。国内企業物価指数は国内で生産した国内需要家向けの財を対象とした物価指数で、国内市場における財の価格や需要の動向を把握できるほか、名目金額から価格要因を除去して実質値を算出する際のデフレーターとしての機能も有している。



お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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