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林野庁

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第1部 森林及び林業の動向 トピックス


1. 平成30年7月豪雨や北海道胆振東部地震による災害の発生と復旧への取組

2. 国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24)

3. ますます進んでいく非住宅・中高層建築物の木造化・木質化の取組

4. 森林・林業・木材産業と持続可能な開発目標(SDGs)

5. 「第69回全国植樹祭」が福島県で開催

6. 「農林水産祭」における天皇杯等三賞の授与


1. 平成30年7月豪雨や北海道胆振(いぶり)東部地震による災害の発生と復旧への取組

平成30(2018)年6月28日から7月8日にかけて、西日本において停滞した前線や台風第7号の影響により、西日本を中心に広い範囲で記録的な大雨となりました。この一連の大雨(以下「平成30年7月豪雨」という。)による人的・物的被害は、33道府県に及び、死者237名、行方不明者8名を数えました。この記録的な大雨により、近畿、中国、四国、九州地方の各地で山腹崩壊や土石流などの山地災害が多数発生し、林野関係の被害は林地荒廃2,954か所、治山施設114か所、林道施設等9,595か所、森林被害3ha、木材加工・流通施設42か所、特用林産施設等29か所に及び、被害額は約1,659億円と、ここ10年で東日本大震災に次ぐ被害額となりました。

林野庁では、発災直後の7月2日から、10府県と合同でのヘリコプターによる緊急調査等を延べ33回実施しました。7月6日からは各地の現地災害対策本部に「災害対策現地情報連絡員(リエゾン)」を派遣し、各被災地における状況の把握と、災害復旧等についての技術指導を行いました。特に大規模な被害を受けた広島県、愛媛県、高知県に対して、林野庁や近畿中国、四国森林管理局を始めとした全国の森林管理局の技術職員で構成する「山地災害対策緊急展開チーム」を派遣し、災害復旧等事業に向けた調査・設計の支援等に精力的に取り組みました。また、今後の降雨等によって崩壊するおそれのある危険箇所を航空レーザ計測により把握し、警戒避難体制の整備等に活用してもらうため、山地災害の発生した関係各県及び市町村に調査結果を情報提供しました。さらに、林業・木材産業関係団体に対して、愛媛県、広島県、岡山県における木造応急仮設住宅の建設時の木質資材の優先供給についての協力要請を行うとともに、各地で被災した木材加工流通施設や特用林産施設等の復旧を支援しました。

山腹崩壊地等の早期復旧に向けては、「災害関連緊急治山事業」等による緊急的な対策を実施しており、特に山地災害が集中した広島県東広島市において、広島県知事からの要請を受けて、10月に「広島森林管理署山地災害復旧対策室」を開設し、国の直轄事業による早期復旧に取り組んでいます。


平成30(2018)年9月6日未明、北海道胆振地方中東部を震源としたマグニチュード6.7の地震が発生し、厚真町で震度7、安平町、むかわ町で震度6強を記録しました。この地震(以下「北海道胆振東部地震」という。)では、死者42名、北海道全域で停電が発生するなど大きな被害が発生しました。この地震により、特に揺れの大きかった厚真町北部を中心に約13km四方の範囲で山腹崩壊が集中的に発生し、林野関係の被害は、林地荒廃171か所、治山施設18か所、林道施設等221か所、木材加工・流通施設7か所、特用林産施設等29か所に及び、被害額は約475億円と甚大な被害が発生しました。

林野庁では、地震発生直後から、被害状況の把握に向けて現地へ職員を派遣するとともに、発生当日に北海道と合同でのヘリコプターによる調査を実施しました。9月8日から9日にかけては、国立研究開発法人森林研究・整備機構と北海道との合同による現地調査等を実施し、災害原因及び二次災害防止対策を取りまとめ、公表しました。さらに、9月18日からは、北海道森林管理局を中心に民有林の災害復旧事業に向けた調査・設計等を支援するため、北海道に職員の派遣を行いました。災害を受けた被災地の一日も早い復旧・復興に向けて、現在、被災箇所のうち、特に緊急に復旧を図るべき箇所については、「災害関連緊急治山事業」等による復旧整備を実施しています。また、木材の仕入れが滞った製材工場等を支援するため、林野庁は近隣の国有林において立木販売の前倒しなどの措置を講じたほか、北海道森林組合連合会等に対して原木確保についての協力要請を行い、早期の復旧・復興に向けた対応を行いました。

今般の地震により、極めて大きな面積の森林が被害を受けたことから、こうした緊急対策に加えて、中長期的な森林の再生に向けて、治山施設の設置や航空緑化等による計画的な復旧を進めていきます。


こうした一連の対応とともに、平成30年7月豪雨の発生直後の7月12日に学識経験者等からなる「平成30年7月豪雨を踏まえた治山対策検討チーム」を設置して、今回の山地災害の実態把握や山腹崩壊の発生メカニズムの分析・検証等を行いました。11月には、北海道胆振東部地震などの各種災害への対応も含めた今後の事前防災・減災に向けた効果的な治山対策の在り方について、「中間取りまとめ」として公表しました。また、こういった相次ぐ自然災害の発生を受けて、昨年12月に「防災・減災、国土強靱(じん)化のための3か年緊急対策」が取りまとめられ、さらに、これを踏まえて改定された「国土強靱化基本計画」に基づき、地方自治体のみならず、地域住民や地域コミュニティの関係者等と一丸となって、事前防災・減災に向けた「国土強靱化」の取組を推進していきます。


平成30年7月豪雨による被災状況

北海道胆振東部地震による被災状況

災害発生地における木造応急仮設住宅の整備

2. 国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24)

2018年12月にポーランド・カトヴィツェにおいて国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24)が開催されました。COP24では、パリ協定の実施指針が採択され、2020年以降のパリ協定の本格運用に向けたルールが整備されました。実施指針では、排出削減目標の設定並びに進捗及び達成状況の把握に際して、これまでに気候変動枠組条約や京都議定書の下で使用してきた方法を用いて、温室効果ガスの排出・吸収量を計上することが認められました。

「京都議定書」の下では、各国の温室効果ガスの削減量のうち、間伐等の適切な森林経営が行われている森林による二酸化炭素の吸収量(以下「森林吸収量」という。)を含めることができることとされています。また、2013年からは、木材製品として利用されている間は引き続き、炭素をストックし続けているものとして取り扱われています。温室効果ガス排出目標の達成に、森林吸収源等が引き続き重要な役割を果たしていくことが期待されます。

COPは、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを目的に、1992年に採択された「気候変動枠組条約」(UNFCCC)に基づき、1995年から毎年開催されている年次会議です。これまで、1997年に京都で開催されたCOP3では、先進国の温室効果ガスの排出削減目標等を定める「京都議定書」が採択され、2015年にフランスのパリで開催されたCOP21では、「パリ協定」が採択されました。

これまで我が国は、「第1約束期間」である2008年から2012年までの間に、基準年(1990年)比6%の削減目標を達成しています。このうち、森林吸収量については、目標であった基準年比の3.8%分(4,767万CO2トン)を確保しました。また、2013年から2020年までの「第2約束期間」においては、京都議定書の目標は設定していませんが、COP16で採択されたカンクン合意に基づき、2020年度の温室効果ガス削減目標を基準年(2005年)比3.8%減以上として気候変動枠組条約事務局に登録しました。森林吸収量については、約3,800万CO2トン(2.7%)以上の吸収量を確保することを目標としています。

また、COP24において、「気候を守るための森林に関するカトヴィツェ閣僚宣言(森林宣言)」が発表されました。この宣言は、パリ協定の長期目標の達成に向けて、森林及び林産物の世界全体の貢献を確実なものとするための活動を加速化すること、科学コミュニティがこれまで進めてきた、森林による温室効果ガスの吸収や貯留の貢献を定量化する取組について評価するとともに、今後、この貢献を増大するための方法を検討すること、そして、都市、地域、企業、投資家等の非政府主体が、森林関連の活動に対する決意を発信していくとの趣旨となっており、我が国もこの宣言に賛同しました。

今後とも、地球温暖化対策として森林吸収源対策が引き続き重要な役割を果たしていくことが期待されています。


3. ますます進んでいく非住宅・中高層建築物の木造化・木質化の取組

経済界を中心に、貴重な地域資源である森林を活用し、これまで木材が余り使われてこなかった非住宅、中高層建築物の木造化・木質化を進める様々な取組が各地で進行しています。

我が国では古くから、木材を建築、生活用品、燃料等の様々な用途に使ってきました。木材は、調湿性に優れる、断熱性が高い、リラックス効果があるとともに、再生産可能な省エネ素材でもあります。我が国の人工林の多くが本格的な利用期を迎えている現在、木材の利用を推進し、「伐(き)って、使って、植える」という形で資源の循環利用を進めることは、森林の有する多面的機能の発揮に加えて、循環型社会の形成や地域経済の活性化にも資するものです。


平成30(2018)年3月には、公益社団法人経済同友会から、「地方創生に向けた“需要サイドからの”林業改革~日本の中高層ビルを木造建築に!~」と題した提言が発表されました。この中では、林業の革新と地方での雇用創出に向けて、中高層建築物を中心に国産材利用を喚起するために、企業・地方公共団体・政府に対して、(ア)企業(施主)は、木の良さを理解し、木造建築を積極的に採用すること、(イ)設計者・施工者は、先端デジタル技術を用いた木造建築モデルを創造すること、(ウ)地方公共団体及び供給者(加工業者、林業事業体、山林所有者)は、生産性向上と積極投資を図ること、(エ)政府は、需要側からの構造改革に踏み込むことがそれぞれ求められています。また、同年10月には「国産材・CLTシンポジウム」を開催し、会員企業による中高層のCLTや木質耐火部材を使用した建築事例の発表等がなされています。

また、鉄鋼、金融、大手ゼネコンその他の主要企業等が参加している「一般社団法人日本プロジェクト産業協議会(JAPIC(ジャピック))」は、日本創生委員会(*1)とともに、平成25(2013)年12月に「林業復活・森林再生を推進する国民会議」を立ち上げ、経済界を挙げて国産材需要拡大の国民運動を展開することにより、地域の雇用を創出し、地域を活性化するための活動を続けてきました。平成30(2018)年3月には、「第5回林業復活・地域創生を推進する国民会議」を開催し、産官学が連携して推進すべき取組についての提言を発表しています。この中で、林業成長産業化の推進のため、地域活性化の拠点となる建物の木造・木質化等の小さな積み重ねと実践を拡げていくことなどが盛り込まれています。

こうした動きに加えて、「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会」における選手村ビレッジプラザに、全国63の地方自治体から提供された木材を使用する取組や、平成30(2018)年には、全国知事会において国産木材活用推進を目指すプロジェクトチームが結成され、国産木材の新たな分野での利用や魅力発信など、各地方公共団体の国産木材の需要創出に向けた取組を更に全国的に加速させることの必要性などを内容とした緊急提言がなされています。


こうした中で、本年2月に民間非住宅建築物等における木材利用の促進に向け、林野庁と建設事業者、設計事業者、実際にこれら建築物の施主となる企業等が、木材利用に関する課題の特定や解決方策、木材利用に向けた普及の在り方等について協議、検討を行い、木材が利用しやすい環境づくり、日本全国に木材利用を広げていくプラットフォームづくりに取り組む「ウッド・チェンジ・ネットワーク」が始動しました。

また、平成30(2018)年度から、木材の利用分野の拡大や特色ある木材利用の推進に資する優良な施設を対象とする木材利用優良施設コンクール(*2)に、新たに内閣総理大臣賞が創設されました。本コンクールは、木材の利用分野の拡大や特色ある木材利用の推進に資する優良な施設の表彰を通じ、新たな木材利用の可能性を示し、国内における木材利用の拡大を目的とするものです。初めての内閣総理大臣賞は、木造と非木造(鉄骨造・鉄筋コンクリート造)を組み合わせた地上5階建ての江東区立有明西学園(東京都)が受賞しました。

令和元(2019)年度からは、「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」(*3)に基づき、市町村及び都道府県に、間伐や人材育成・担い手の確保、木材利用の促進や普及啓発等を使途とする森林環境譲与税が譲与されることや、「建築基準法の一部を改正する法律」(*4)が施行され、木造建築物の防耐火に係る制限の合理化が図られることから、都市における木材利用等の取組が更に進むことが期待されています。

今後とも、林野庁として、民間企業や関係団体、行政等が連携し、非住宅、中高層建築物の木造化、木質化が進んでいくように取り組んでまいります。



(*1)JAPIC会長の諮問機関として平成20(2008)年2月に設立。

(*2)木材利用推進中央協議会が実施。ホームページ: http://www.jcatu.jp/concours/

(*3)「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」(平成31年法律第3号)

(*4)「建築基準法の一部を改正する法律」(平成30年法律第67号)



4. 森林・林業・木材産業と持続可能な開発目標(SDGs)

持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)は、2015年9月の国連サミットにおいて採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(2030アジェンダ)に含まれるもので、持続可能な世界を実現するための17の目標・169のターゲットから構成されています。

森林については、SDGsの目標15「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、並びに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」を始め、多くの目標に関連しています。また、森林が有する国土保全機能や水源涵(かん)養機能は目標6「安全な水とトイレを世界中に」及び目標11「住み続けられるまちづくりを」に貢献し、地球温暖化防止機能は目標13「気候変動に具体的な対策を」に貢献しています。林業の成長産業化を通じて、林業の現場における賃金の増加は目標8「働きがいも経済成長も」に、木材流通の改革によるウッドマイレージ(物流距離)の短縮は目標12「つくる責任つかう責任」に、木材利用の推進による森林資源の循環利用は目標8、目標11、目標15等の様々な目標の達成に貢献しています。

SDGsの目標達成のためのプロセスは、従来の国際条約のようにルールありきの交渉を最初に行うのではなく、まずは野心的な目標を提示し、先進国、開発途上国がそれぞれの立場で取ることのできる対応を実施し、効果の測定、フォローアップとレビューを行うものとなっています。政府としては、SDGsの実施を総合的かつ効果的に推進するため、平成28(2016)年5月に、内閣総理大臣を本部長とし全閣僚を構成員とする「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」を設置し、平成28(2016)年12月に「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」を決定しました。その後、平成29(2017)年12月に「SDGsアクションプラン2018」、平成30(2018)年12月に「SDGsアクションプラン2019」を決定し、具体的な取組の方向性を明らかにしています。この中では、森林・林業・木材産業に関連するものとして、林業の成長産業化と森林の多面的機能の発揮のための取組を始めとして、山村活性化支援、スマート林業構築推進、林業への新規就業者の育成、治山対策の推進と国土強靱(じん)化への対応、バイオマス利活用の推進、気候変動対策、世界の持続可能な森林経営の推進及びREDD+(*5)の支援等様々な対応を行うこととしています。

さらに、平成29(2017)年12月には、SDGsのオールジャパンの取組を推進するために創設された「ジャパンSDGsアワード」の第1回「SDGs推進本部長(内閣総理大臣)表彰」に北海道下川町(しもかわちょう)が選ばれました。下川町では、情報通信技術を用いた川上の伐採・造林から川下の木材加工・流通までのシームレスな生産加工流通システムの構築や、森林バイオマスによる地域熱供給といった森林総合産業の構築等に取り組んでいます。さらに、平成30(2018)年6月には、SDGs達成に向けた優れた取組を提案する都市が「SDGs未来都市」として29都市選定されるとともに、その中でも特に先導的な取組である「自治体SDGsモデル事業」の10事業に、下川町のほか、木質バイオマス発電の推進やCLTなどに取り組む岡山県真庭(まにわ)市、未利用の間伐材等を活用して熱や発電利用に取り組む熊本県小国町(おぐにまち)などが選定されました。また、経済団体等が構成メンバーとなっている「美しい森林(もり)づくり全国推進会議」等の主催により、『官民共同で拓く「森林×SDGs」シンポジウム』が開催されるなど官民による様々な取組がなされています。


今後とも、行政や民間を通じてあらゆる主体が、「林業の成長産業化と森林の多面的機能の発揮」、「世界の持続可能な森林経営の推進及びREDD+の支援」等を通じて、我が国の森林・林業・木材産業がSDGsの達成に向けて貢献していくよう努めていくことが重要です。

SDGsの目標17

SDGs未来都市(下川町、真庭市、小国町)の取組

(*5)REDD+とは、途上国における森林減少・森林劣化からの排出の削減、及び森林保全、持続可能な森林経営、森林炭素蓄積の強化の役割(Reducing emissions from deforestation and forest degradation and the role of conservation, sustainable management of forests and enhancement of forest carbon stocks in developing countries)の略。



5. 「第69回全国植樹祭」が福島県で開催

全国植樹祭は、国土緑化運動の中心的な行事であり、天皇皇后両陛下の御臨席を仰ぎ、両陛下によるお手植えや参加者による記念植樹等を通じて、国民の森林に対する愛情を培うことを目的として、毎年春に行われています。

平成最後の全国植樹祭となる第69回全国植樹祭は、平成30(2018)年6月10日、「育てよう 希望の森を いのちの森を」を大会テーマとし、福島県南相馬(みなみそうま)市原町(はらまち)区雫(しどけ)地内の海岸防災林整備地で開催されました。今回の全国植樹祭は、復興に向けて力強く歩み続ける姿と国内外からの支援に対する感謝の気持ちを発信できること、県民参加の森林(もり)づくりを広く展開できることから、南相馬市の海岸防災林整備地を式典会場としました。記念式典では、天皇陛下によるお手植えとして、海岸防災林として多く植樹されるクロマツ、福島県の「県の木」であり南相馬市の「市の木」であるケヤキ、福島県浜通り地方の常緑広葉樹を代表するスダジイの苗木が植樹されました。また、皇后陛下によるお手植えとして、県民に広く親しまれているアカマツ、ヤマザクラ、浜通り地方沿岸部に見られるヤブツバキが植樹されました。式典会場に隣接する約4.6haの植樹会場ではクロマツ、コナラ等の苗木約1万5千本の記念植樹が行われるなど、復興に向けた姿や国内外からの支援に対する感謝の気持ち、未来につなぐ「希望の森林(もり)づくり」への思いが広く発信されました。

式典で使用された、お手播き箱、御鍬、演台等の木製品には、昭和45(1970)年に、福島県猪苗代町(いなわしろまち)において開催された第21回全国植樹祭において、昭和天皇がお手播きになられた飯豊(いいで)スギが使用されました。この第21回全国植樹祭の会場では、平成12(2000)年に第24回全国育樹祭が開催され、この際に昭和天皇がお手植えされたアカマツを、皇太子同妃両殿下がお手入れをされており、昭和、平成と時代をつないだ大会となりました。

全国植樹祭への御臨場に併せ、天皇皇后両陛下は、いわき市において福島県復興公営住宅に居住する被災者との御懇談、南相馬市において東日本大震災津波犠牲者慰霊碑への御拝礼、相馬市の相馬原釜(はらがま)地方卸売市場における復興状況など、地方事情の御視察もなされています。


また、天皇皇后両陛下から第69回全国植樹祭の御臨席に際しての御製(和歌)を賜りました。

「生ひ立ちて防災林に育てよとくろまつを植(う)う福島の地に」

東日本大震災で大きな被害を受けた地域に海岸防災林を育てるため、天皇陛下がクロマツの苗木をお手植えになったときのことをお詠みになっています。


林野庁としては、この全国植樹祭を契機として、福島を始めとした森林・林業の再生と国民の多くの方々の森林への更なる理解の醸成が進むよう取り組んでいるところです。




(*6)「平成25年度森林及び林業の動向」

(*7)第69回全国植樹祭ふくしま2018 ホームページ 第69回全国植樹祭基本構想

(*8)同上



6. 「農林水産祭」における天皇杯等三賞の授与

林業・木材産業の活性化に向けて、全国で様々な先進的取組がみられます。このうち、特に内容が優れていて、広く社会の賞賛に値するものについては、毎年、秋に開催される「農林水産祭」において、天皇杯等三賞が授与されています。ここでは、平成30(2018)年度の受賞者(林産部門)を紹介します。

天皇杯 出品財:経営(林業) 速水 亨 氏 速水 紫乃 氏 三重県北牟婁郡(きたむろぐん)紀北町(きほくちょう)

速水氏は速水林業の9代目代表として、自己所有山林に経営を受託する森林を加え、1,189.3haを対象に森林経営計画を樹立し、地域ブランドである高品質の「尾鷲(おわせ)ヒノキ」材を生産しています。持続可能な森林経営の確立を目標としており、環境配慮型林業の国際的基準を持つFSC認証を日本で最初に取得しました。また、高性能林業機械であるタワーヤーダの日本初の導入によって生産性の向上を実現し、ポット苗生産技術の確立や選抜育種による大型苗の確保・植栽等に取り組むことで育林の低コスト化にも成功しています。さらに、紫乃氏はヒノキの葉から抽出したアロマオイルの製造販売に取り組むなど、ご夫婦で産業としての林業の自立を目指して環境配慮型の森林(もり)づくりを追求・実践しています。

内閣総理大臣賞 出品財:産物(木炭) 谷地 司 氏 岩手県久慈(くじ)市

谷地氏は有限会社谷地林業の木炭製造部門の責任者である窯長として製炭に従事して15年、木炭製造部門のスタッフ6名とともに、製炭釜7基を使用して年間約80回の製炭で90トンを生産しています。岩手県木炭品評会において連続6回の最優秀賞を受賞するなどその技術の高さは多くの人が認めるものであり、大量生産が可能な「岩手大量釜」を使用し、重くて硬く火持ちの良い高品質の岩手木炭(*9)を生産しています。その高い製炭技術は岩手木炭のブランド化に大きな役割を果たしており、製炭技術を若い世代に引き継ぐため、製炭技士として木炭生産の普及教育活動にも精力的に取り組んでいます。


(*9)「岩手木炭」は地理的表示(GI)保護制度に木炭として国内で初めて登録、詳しくは第3章(138ページ)参照。

日本農林漁業振興会会長賞 出品財:産物(木材) 山下木材株式会社製材工場(代表:山下 豊 氏) 岡山県真庭(まにわ)市

山下木材株式会社製材工場は学校・公営住宅などの公共建築物を始め、文化財修復から民間住宅工事に至るまで、県内外の建設業者に地域(美作(みまさか))材を納入しています。工場内の養生スペースで一定期間含水率の均一化を図った上で、含水率の測定や強度試験を行うといった徹底した品質管理により、高付加価値化を実現しています。さらに、地域林業の活性化や同業他社との共存共栄をポリシーとして地域ブランド「美作KD(人工乾燥)材」の確立に貢献するとともに、プレカット工場の操業による他社の製材品の加工、真庭市の「バイオマスツアー」の見学者受入れなども行っています。


挿絵1

お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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