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第1部 第4章 第3節 木材利用の動向(4)


(4)木質バイオマスのエネルギー利用

木材は、昭和30年代後半の「エネルギー革命」以前は、木炭や薪の形態で日常的なエネルギー源として多用されていた。近年では、再生可能エネルギーの一つとして、燃料用の木材チップや木質ペレット等の木質バイオマスが再び注目されている(*208)。

平成28(2016)年5月に変更された「森林・林業基本計画」では、令和7(2025)年における燃料材(ペレット、薪、炭及び燃料用チップ)の利用目標を800万m3と見込んでいる。その上で、木質バイオマスのエネルギー利用に向けて、「カスケード利用(*209)」を基本としつつ、木質バイオマス発電施設における間伐材・林地残材等の利用、地域における熱電併給システムの構築等を推進していくこととしている。

また、平成28(2016)年9月に見直された「バイオマス活用推進基本計画」では、「林地残材(*210)」について、現在の年間発生量約800万トンに対し約9%となっている利用率を、令和7(2025)年に約30%以上とすることを目標として設定している(資料4-51)。

資料4-51 木質バイオマスの発生量と利用量の状況(推計)

(*208)林野庁が毎年取りまとめている「木材需給表」においても、平成26(2014)年からは、近年、木質バイオマス発電施設等での利用が増加している木材チップを加えて公表している。

(*209)木材を建材等の資材として利用した後、ボードや紙等としての再利用を経て、最終段階では燃料として利用すること。

(*210)「木質バイオマスエネルギー利用動向調査」における間伐材・林地残材等に該当する。



(間伐材・林地残材等の未利用材には供給余力)

「木質バイオマスエネルギー利用動向調査」によれば、平成29(2017)年にエネルギーとして利用された木材チップの量は、製材等残材(*211)由来が150万トン、建設資材廃棄物(*212)由来が413万トン、木材生産活動から発生する間伐材・林地残材等由来が263万トン等となっており、合計873万トンとなっている(*213)。このほか、木質ペレットで38万トン、薪で6万トン、木粉(おが粉)で41万トン等がエネルギーとして利用されている(*214)。

このうち、製材等残材については、その大部分が、製紙等の原料、発電施設の燃料や、自工場内における木材乾燥用ボイラー等の燃料として利用されている。平成28(2016)年における工場残材の出荷先別出荷割合は、「チップ等集荷業者・木材流通業者等」が30.4%、「自工場で消費等」が28.7%、「発電施設等」が4.7%等となっている(*215)。

また、建設資材廃棄物については、平成12(2000)年の「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(*216)」により一定規模以上の建設工事で、分別解体・再資源化が義務付けられたことから再利用が進み、木質ボードの原料、ボイラーや木質バイオマス発電用の燃料等として再利用されている。

これに対して、間伐材・林地残材等については、年間発生量に対する利用量の割合が低いことから、今後のエネルギー利用拡大に向けた余地がある(資料4-51)。

近年では、木質バイオマス発電所の増加等により、木材チップや木質ペレットの形でエネルギーとして利用された間伐材・林地残材等の量が年々増加しており、平成29(2017)年には、前年比37%増の591万m3となっている。このほか、薪、炭等を含めた燃料材の国内生産量は前年比35%増の603万m3となっており(資料4-52)、輸入量176万m3を加えて、総需要量は780万m3(燃料材部門の木材自給率77.4%)となっている(*217)。


(*211)製材工場等で発生する端材。

(*212)建築物の解体等で発生する解体材・廃材。

(*213)ここでの重量は、絶乾重量。

(*214)林野庁プレスリリース「「平成28年木質バイオマスエネルギー利用動向調査」の結果(確報)について」(平成29(2017)年12月25日付け)

(*215)農林水産省「平成28年木材流通構造調査」

(*216)「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(平成12年法律第104号)

(*217)林野庁「平成29年木材需給表」。国内生産量には輸出量を含む。木材自給率について詳しくは、159-160ページを参照。



(木質ペレットが徐々に普及)

木質ペレットは、木材加工時に発生するおが粉等を圧縮成形した燃料であり、形状が一定で取り扱いやすい、エネルギー密度が高い、含水率が低く燃焼しやすい、運搬や貯蔵も容易であるなどの利点がある。

地球温暖化等の環境問題への関心の高まり等もあり、木質ペレットの国内生産量は増加傾向で推移してきた。平成29(2017)年については前年比5%増の12.7万トン、工場数は前年から1工場減の147工場となっている(資料4-53)。これに対して、平成29(2017)年の木質ペレットの輸入量は、前年比46%増の50.6万トンであった(*218)。


(*218)財務省「貿易統計」における「木質ペレット」(統計番号:4401.31-000)の輸入量。



(木質バイオマスによる発電の動き)

平成24(2012)年7月から、電気事業者に対して、木質バイオマスを含む再生可能エネルギー源を用いて発電された電気を一定の期間・価格で買い取ることを義務付ける「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(*219)(FIT制度)」が導入された。

木質バイオマスにより発電された電気の平成29(2017)年10月以降の買取価格(税抜き)は、「間伐材等由来の木質バイオマス」を用いる場合は40円/kWh(出力2,000kW未満)、32円/kWh(出力2,000 kW以上)、「一般木質バイオマス」は24円/kWh(出力20,000kW未満)、21円/kWh(出力20,000kW以上)、「建設資材廃棄物」は13円/kWh、買取期間は20年間とされている。なお、平成30(2018)年4月1日以降に認定された出力10,000kW以上の「一般木質バイオマス」由来の電力の買取価格については、入札により決定することとされた(*220)。

林野庁は、平成24(2012)年6月に、木質バイオマスが発電用燃料として適切に供給されるよう、発電利用に供する木質バイオマスの証明に当たって留意すべき事項を「発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン」として取りまとめており、伐採又は加工・流通を行う者が、次の流通過程の関係事業者に対して、納入する木質バイオマスが間伐材等由来の木質バイオマス又は一般木質バイオマスであることを証明することとしている。また、間伐材等由来の木質バイオマスと一般木質バイオマスが混同されることのないよう、木質バイオマスを供給する事業者の団体等は、木質バイオマスの分別管理や書類管理の方針に関する「自主行動規範」を策定した上で、木質バイオマスの証明を行おうとする構成員等に対して、適切な取組ができることを審査の上で認定することとしている(*221)。

また、FIT認定取得後の発電施設で用いられる間伐材等由来の木質バイオマスや一般木質バイオマス等の各区分の比率の変更については、これまで制度上の制約がなかったが、令和元(2019)年度以降は、FIT認定時の比率を基準として、調達価格の変更を含め、変更に一定の制約が設けられることとなった(*222)。

FIT制度の導入を受けて、各地で木質バイオマスによる発電施設が新たに整備されている。主に間伐材等由来のバイオマスを活用した発電施設については、平成30(2018)年9月末現在、出力2,000kW以上の施設40か所、出力2,000kW未満の施設24か所が同制度により売電を行っており、合計発電容量は344,051kWとなっている(*223)。これによる年間の発電量は、一般家庭約76万世帯分の電力使用量に相当する試算になる(*224)。さらに、全国で合計51か所の発電設備の新設計画が同制度の認定を受けている。


(*219)平成23(2011)年8月に成立した「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(平成23年法律第108号)に基づき導入されたもの。

(*220)「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法の規定に基づき調達価格等を定める件」(平成29年経済産業省告示第35号)

(*221)林野庁「発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン」(平成24(2012)年6月)

(*222)資源エネルギー庁「既認定案件による国民負担の抑制に向けた対応(バイオマス比率の変更への対応)」(平成30(2018)年12月21日)

(*223)「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(平成14年法律第62号)に基づくRPS制度からの移行分を含む。発電容量については、バイオマス比率を考慮した数値。

(*224)発電施設は1日当たり24時間、1年当たり330日間稼働し、一般家庭は1年当たり3,600kWhの電力量を使用するという仮定のもと試算。



(木質バイオマスの熱利用)

木質バイオマス発電におけるエネルギー変換効率は、蒸気タービンの場合、通常は20%程度にすぎず、高くても30%程度となっている。エネルギー変換効率を上げるためには、発電施設の大規模化が必要だが、大規模な施設を運転するには、広い範囲から木質バイオマスを収集することが必要になる。これに対して、熱利用・熱電併給は、初期投資の少ない小規模な施設であっても、80%程度のエネルギー変換効率を実現することが可能である。

一方で、熱利用・熱電併給の取組の開始に当たっては、(ア)事業者自らが熱の需要先を開拓する必要があること、(イ)熱の販売価格が固定されていないこと等から、関係者による十分な検討が必要となる。林野庁では、これらの課題を乗り越えて熱利用・熱電併給の普及を促進するため、平成29(2017)年10月に「木質バイオマス熱利用・熱電併給事例集」を取りまとめ、各地の取組における実施体制や燃料、熱利用施設、収支等の情報を紹介している。

近年では、公共施設や一般家庭等において、木質バイオマスを燃料とするボイラーやストーブの導入が進んでいる。平成29(2017)年における木質バイオマスを燃料とするボイラーの導入数は、全国で2,058基となっている(資料4-54)。業種別では、農業が404基、製材業・木製品製造業が292基等、種類別では、ペレットボイラーが945基、木くず焚きボイラーが798基、薪ボイラーが161基等となっている(*225)。


また、欧州諸国においては、燃焼プラントから複数の建物に配管を通し、蒸気や温水を送って暖房等を行う「地域熱供給」に、木質バイオマスが多用されている(*226)。例えば、オーストリアでは、2015年における総エネルギー量1,409PJのうち、13%が木質バイオマスに由来するものとなっている。同国では1990年代後半以降、小規模なものを中心に木質バイオマスボイラーの導入が増加しており(*227)、2015年には全世帯の17%で木質バイオマスによる暖房等が導入されているほか、28%で地域熱供給が行われている(*228)。

我が国においても、一部の地域では木質バイオマスを利用した地域熱供給の取組がみられる(*229)。今後は、小規模分散型の熱供給システムとして、このような取組を推進していくことが重要である。


(*225)林野庁プレスリリース「「平成29年木質バイオマスエネルギー利用動向調査」の結果(確報)について」(平成30(2018)年12月20日付け)

(*226)欧州での地域熱供給については、「平成23年度森林及び林業の動向」の37ページを参照。

(*227)Woodheat solutions(2010)Sustainable wood energy supply

(*228)Austrian Energy Agency「Basisdaten 2017 Bioenergie」

(*229)「平成25年度森林及び林業の動向」の181ページ、「平成27年度森林及び林業の動向」の163ページも参照。



(「地域内エコシステム」の構築)

今後の木質バイオマスの利用推進に当たっては、地域の森林資源を再びエネルギー供給源として見直し、地域の活性化につながる低コストなエネルギー利用をどのように進めていくかということが課題となっている。

このため、農林水産省及び経済産業省は、森林資源をマテリアルやエネルギーとして地域内で持続的に活用するための担い手確保から、発電・熱利用に至るまでの「地域内エコシステム」の構築に向けた検討を行い、平成29(2017)年7月に報告書「「地域内エコシステム」の構築に向けて」を取りまとめた(*230)。

同報告書では、同システムの在るべき方向として、(ア)地産地消型の持続可能なシステムが成り立つ規模である集落を主たる対象とすること、(イ)地域関係者の協力体制を構築すること、(ウ)薪等の低加工度の燃料の活用等コストの低減により地域への還元利益を最大限確保すること、(エ)系統接続をしない小電力の供給システムの開発や、行政が中心となった熱利用の安定的な需要先を確保すること等が整理されている。これを踏まえ、農林水産省及び経済産業省では、平成29(2017)年度から「地域内エコシステム」のモデル構築に向けた取組を実施し、その成果や課題を検証している。


(*230)「地域内エコシステム」の構築に向けた取組については、「平成29年度森林及び林業の動向」トピックス(6-7ページ)も参照。


お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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