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林野庁

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第1部 第4章 第3節 木材利用の動向(5)


(5)消費者等に対する木材利用の普及

(「木づかい運動」を展開)

林野庁は、平成17(2005)年度から、広く一般消費者を対象に木材利用の意義を広め、木材利用を拡大していくための国民運動として、「木づかい運動」を展開している。同運動では、ポスター・パンフレット等による広報活動や、国産材を使用した製品等に添付し木材利用をPRする「木づかいサイクルマーク」の普及活動等を行っている(*231)。「木づかいサイクルマーク」は、平成30(2018)年3月末現在、391の企業や団体で使用されている。

また、毎年10月の「木づかい推進月間」を中心として、シンポジウムの開催や広報誌等を活用した普及啓発活動を行っており、各都道府県においても地方公共団体や民間団体により様々なイベントが開催されている。

平成30(2018)年度には、複数の都内アンテナショップにおける内装や什器への地域材活用の取組や、木づかい推進月間における地域材製品の展示・販売等のイベントを紹介する「アンテナショップ木づかいマップ」を作成し、各地域と連携した広報活動を実施している。

平成27(2015)年度から、新たな分野における木材利用の普及や消費者の木材利用への関心を高めることを目的として開始された「ウッドデザイン賞」は、木の良さや価値を再発見させる建築物や木製品、木材を利用して地域の活性化につなげている取組等について、特に優れたものを消費者目線で評価・表彰するもので、4回目となる平成30(2018)年度は、189点が受賞した。展示会等における受賞作品の展示、ウェブサイトでの情報発信やコンセプトブックの作成・配布等により同賞の周知が図られている。また、林業・木材産業関係者とインテリア・デザイン関係者など、同賞をきっかけとした新たな連携もみられており、木材利用の拡大につながることが期待されている。

また、木材利用推進中央協議会では、木材利用の一層の推進を図る目的で、木造施設や内装を木質化した建築物等を対象に「木材利用優良施設コンクール」を毎年開催し、その整備主体等(施主、設計者、施工者)に農林水産大臣賞等を授与してきたが、平成30(2018)年度には新たに内閣総理大臣賞が創設され、木造建築物等の建設がより一層奨励されることとなった。


(*231)パンフレット(平成29(2017)年にリニューアル)の内容など、「木づかい運動」に関する情報は、林野庁ホームページ「木づかい運動 ~木の香りで心も体もリラックス~」を参照。



(「木育(もくいく)」の取組の広がり)

「木育(もくいく)(*232)」の取組は全国で広がっており、木のおもちゃに触れる体験や木工ワークショップ等を通じた木育(もくいく)活動や、それらを支える指導者の養成のほか、関係者間の情報共有やネットワーク構築等を促すイベントの開催など、様々な活動が行政や木材関連団体、NPO、企業等の幅広い連携により実施されている(事例4-10、11)。

事例4-10 市民参加でつくりあげた「木育(もくいく)」交流拠点の誕生

山口県長門(ながと)市の日本海に面した新しい道の駅「センザキッチン」の敷地内に、平成30(2018)年4月、良質な木のおもちゃを通じて木に親しみ、木の文化を学ぶ木育推進拠点施設「長門おもちゃ美術館(注)」が誕生した。

当施設の整備に当たり、シイノキを始めとした特色のある長門市の森林資源を活用することで、地域材のPR及び付加価値の向上と木育を通じた子育て環境の整備を図った。

内外を構成する木材は、長門市を中心に生産されたものがほとんどで、スギ、ヒノキ等の針葉樹のみならず、シイノキ、クスノキ等の広葉樹も含めた11種類の木材を適材適所に使用しており、美術館全体が、地元の森の植生を体感できる遊具のような起伏のある空間となっている。

施設整備の検討は、市内の林業・木材産業・木工・子育て支援・デザイン等の関係者と市が連携して官民協働により行われた。館内を仕切る丸棒の列柱は、樹種による強度の違いを考慮して配置されているほか、床材についても、美術館の入口付近には香り高いヒノキ、赤ちゃんコーナーには温かく柔らかい感触のスギ、子供達が駆け回る広場には頑丈なシイノキと使い分けられている。

また、当施設の名物コーナー「木のたまごプール」の木製のたまごは、地元企業の協賛金等により市内の小中学生や市民の手で磨かれ製作されたものが使用されている。

当施設は、赤ちゃんから大人まで、あらゆる世代が楽しめる木育の交流拠点となることを目指している。


注:当施設は、東京おもちゃ美術館(東京都新宿区)の姉妹館として設立された。

事例4-11 木育(もくいく)・森育(もりいく)活動の広がりに向けたネットワークづくりを目指して

平成30(2018)年12月、第4回目となる木育・森育楽会が石川県金沢市で開催され、行政や森林・林業・木材産業関係者、教育関係者、木育・森育を進める一般の者等の約100名が参加し、活発な議論が交わされた。

木育・森育楽会は、木育・森育実践者のネットワーク形成や、知識と経験の集積、拡散等を行う場として、年1回開催されている(注)。

今回は、「日々の木育と森育を考える」を基本テーマに、「木育による人づくり、地域づくり」と題して熊本大学教育学部教授の田口浩継氏による基調講演が行われるとともに、木育について「教育」、「地域づくり」、「子供のための空間づくり」を切り口にした3つの分科会、体験型ワークショップが開催された。

全体討論では、分科会の講師陣がパネリストとなり、木育・森育をこれからどう進めていくかについて、参加者とざっくばらんに語り合い、会場の参加者からは、「地域での各々の活動のつながりをつくるプラットフォームづくりを今後行っていきたい」との声も挙がった。

このような取組を契機として、地域内、地域間における関係者のネットワーク形成や、教育関係者等の林業・木材関係者以外の者も巻き込んだ木育・森育活動の更なる広がりにつながることが期待される。


注:主催:木育・森育楽会事務局(NPO法人木づかい子育てネットワーク)

林野庁においても、子どもから大人までを対象に、木材や木製品との触れ合いを通じて木材への親しみや木の文化への理解を深めて、木材の良さや利用の意義を学んでもらうという観点から、木育(もくいく)の推進に資する各種活動への支援を行っている。これらの支援により、木材に関する授業と森林での間伐体験や木工体験を組み合わせた小中学生向けの「木育(もくいく)プログラム」が開発され、平成29(2017)年度までに、延べ294校で実施されている。また、地域における木育(もくいく)推進のための活動である木育(もくいく)円卓会議が毎年各地で開催され、木育(もくいく)の普及や地域での具体的な取組の促進につながっている。このほか、例年1回開催されている「木育(もくいく)サミット」は平成31(2019)年2月に第6回目を、「木育(もくいく)・森育楽会(もりいくがっかい)」は平成30(2018)年12月に第4回目を迎え、木育(もくいく)の最新の取組に関する意見交換等が行われており、関係者間の情報共有やネットワーク構築につながっている(事例4-11)。また、実践的な木育(もくいく)活動の一つとして、木工体験等のきっかけの提供により、木材利用の意義に対する理解を促す取組等も行われている。例えば、日本木材青壮年団体連合会等は、児童・生徒を対象とする木工工作のコンクールを行っており、平成30(2018)年度には約24,000点の応募があった。


(*232)「木育」については、多様な主体が様々な目的を持ち、活動を行っている。木育に関する情報は「木育ラボ」ホームページ、「木育.jp」ホームページを参照。



コラム 素材として選ばれる木 ~リハビリテーション病院から~

近年、医療・福祉施設において、木材をあえて現(あらわ)しで使用する事例が増えてきている。

医療法人社団和風会は、脳卒中の効果的なリハビリテーションを実践する専門病院として、「リハビリテーション・リゾート」というコンセプトの下、リラックスしてリハビリテーションに取り組める環境づくりを目指し、千里リハビリテーション病院(大阪府箕面(みのお)市)に木造2階建ての新棟「アネックス棟」を平成29(2017)年9月に竣工、平成30(2018)年1月に運用を開始した。新たに竣工した同棟は、外壁から院内、病室内まで、ふんだんに木材を現しで使用している。

同法人の橋本康子理事長は、「同病院は脳卒中によって心身ともに深く傷ついた患者様が日常生活に向けてリハビリテーションを行っていく場であり、従来のような無機質感漂う病院の空間で良いのかという思いがあった。木材を現しで使った木造建築物を見学し、建設から時間が経過しても心地よく香る木の香りから、木の持つ生命力を感じ、人間にも良い影響があるのでは、と木質化された木の病院にすることを決めた。」としている。

アネックス棟は、運用開始から数か月が経過しても病院特有の匂いは感じられず、利用者からは「すごく気持ちがいい」等の感想が寄せられている。既存の鉄筋コンクリート造のメイン棟ではフローリングの床に座る人はいなかったが、アネックス棟では自宅の感覚で床に座って過ごしている人もいるとされている。

「木の香りやぬくもりのある環境で、リラックスしながら心地よくリハビリテーションに取り組むことができる。木で病院をつくることによって、言葉で伝える以上に私たちが患者様を大事に思う気持ちを感じていただけたら」と橋本理事長は語っている。


資料:月刊シニアビジネスマーケット 2018年8月号

《各種施設等での木材利用の事例》




お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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