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第1部 第4章 第2節 木材産業の動向(1)


我が国の木材産業では、製材生産の大規模工場への集中、合板生産に占める国産材の割合の上昇等の動きがみられる中で、安定的かつ効率的な原木調達が課題となっている。

以下では、木材産業の概況とともに、製材、集成材、合板、木材チップ等の各部門及び木材流通の動向について記述する(*67)。


(*67)以下のデータは、特記のある場合を除いては、林野庁「平成29年木材需給表」、農林水産省「平成29年木材統計」、「平成28年木材流通構造調査」、財務省「貿易統計」等による。



(1)木材産業の概況

(木材産業の概要)

木材産業は、林業によって生産される原木を加工して様々な木材製品(製材、集成材、合板、木材チップ等)を製造・販売することで、消費者・実需者による木材利用を可能としている(資料4-20)。

原木の供給元である森林所有者、素材生産業者等の供給者(川上)との関係では、原木の購入を通じて、林業や森林整備を支える役割を担っており、木材製品の販売先である工務店・住宅メーカー等の需要者(川下)との関係では、ニーズに応じて木材製品を供給しているほか、新たな木材製品の開発等によって、社会における木材利用を推進する役割も担っている(*68)。

また、木材産業は一般的に森林資源に近いところに立地し、その地域の雇用の創出と経済の活性化に貢献する。国産材を主原料とする場合には森林資源が豊富な山間部に、輸入材を原料とする場合には港湾のある臨海部に立地することが多い。

資料4-20 木材加工・流通の概観

(*68)木材産業の役割について詳しくは、「平成26年度森林及び林業の動向」の9-10ページを参照。



(木材産業の生産規模)

我が国の木材産業の生産規模を木材・木製品製造業の製造品出荷額等でみると(*69)、長期的な減少傾向にあったが、平成22(2010)年からは回復傾向で推移し、平成28(2016)年は前年比1.2%減の約2兆6,562億円であった(*70)(資料4-21)。このうち、製材業の製造品出荷額等は6,238億円、集成材製造業は1,846億円、合板製造業は3,478億円、木材チップ製造業は939億円となっている(*71)。

また、木材・木製品製造業の付加価値額(*72)は8,317億円となった。また、平成29(2017)年6月1日現在の従業者数は90,947人となっている。


(*69)製造品出荷額等、付加価値額、従業者数について、経済産業省「平成29年工業統計表」(産業別統計表)における「木材・木製品製造業(家具を除く)」(従業者4人以上)の数値。

(*70)製造品出荷額等には、製造品出荷額のほか、加工賃収入額、くず廃物の出荷額、その他収入額が含まれる。

(*71)製材業、集成材製造業、合板製造業、木材チップ製造業の製造品出荷額等については、それぞれ経済産業省「平成29年工業統計表」(産業別統計表)における「一般製材業」、「集成材製造業」、「単板(ベニヤ)製造業と合板製造業の合計」、「木材チップ製造業」の数値である。

(*72)製造品出荷額等から原材料、燃料、電力の使用額等及び減価償却費を差し引き、年末と年初における在庫・半製品・仕掛品の変化額を加えたものである。



(原木の安定供給体制の構築に向けた取組)

近年、国産材を主な原料とする年間素材消費量が数万m3から10万m3を超える規模の大型の製材・合板工場等の整備が進み(資料4-22)、また、木質バイオマスエネルギー利用が拡大の傾向を見せる中、安定的かつ効率的な原木調達が課題となっている。しかしながら、我が国の原木の供給は、小規模・分散的となっていることや、変動する需要の把握も進んでいないことなどから、原木を安定的かつ効率的に供給できていない状況にある。

資料4-22 近年整備された大型木材加工工場及びCLT工場の分布状況

このため、政府では、令和元(2019)年度から「森林経営管理制度(*73)」を運用し、森林の経営管理の集積・集約化を進めることとしている。また、本制度を円滑に進めるためには、川上側の林業と川中・川下側の木材関連産業の連携強化を進め、意欲と能力のある林業経営者を育成しながら、木材需要の拡大を図ることが重要となっている。このことを踏まえ、平成30(2018)年11月に、「農林水産業・地域の活力創造本部」において改訂された「農林水産業・地域の活力創造プラン」では、国有林野の一定の区域で、公益的機能を確保しつつ、意欲と能力のある林業経営者(森林組合、素材生産業者、自伐林家等)が、長期・安定的に立木の伐採を行うことができる仕組みや、意欲と能力を有する林業経営者と連携する川下事業者に対する資金供給の円滑化を図る仕組みを創設することが位置付けられ、「国有林野の管理経営に関する法律」等の一部を改正する法律案を平成31(2019)年2月に国会に提出しており、原木の安定供給体制の構築に向けた取組の進展が期待される。

また、林野庁では、製材・合板工場等と素材生産業者や木材流通業者等との原木安定供給のための協定締結の推進、川上(供給側の森林所有者、素材生産業者)と川中(需要側の工場等)、川下(国産材製品の需要者である木造の建築物や住宅を建設しようとする工務店・住宅メーカー等)のマッチングの円滑化の推進により、原木の安定供給体制の構築を図ることとしている(*74)。このような中、製材からプレカット、住宅建築を一貫して手がける事業者が、素材生産も開始するなど、川上から川下に及ぶ生産体制を構築する取組もみられる(事例4-3)。

このほか、林野庁では、平成27(2015)年度から、国産材の安定供給体制の構築に向けて、川上から川下まで様々な関係者が木材や苗木の需給情報を共有することを目的に「需給情報連絡協議会」を全国7ブロックで開催している。さらに、国有林野事業等による立木や素材等の協定取引を進めている(*75)。

事例4-3 川上から川下までのバリューチェーンの構築に取り組む製材所 ~素材生産から住宅建築まで~

坂詰製材所(新潟県阿賀野(あがの)市)は、日本アジアグループ株式会社の系列企業となったことを契機に、平成30(2018)年1月、自社内で素材生産を担う部署を立ち上げ、同グループ所有山林等での素材生産事業の開始に向けて研修等の準備を進めている。今後、同社は、森林経営計画を策定し、施業を行っていくことを計画している。

同社はこれまで、製材、乾燥、プレカット加工及び住宅建築・販売を一貫して行える体制を構築し、新潟県産のスギを住宅に活用することに力を入れてきた。

さらに、非住宅分野における木材需要を拡大していくため、非住宅建築にも対応可能なプレカット設備の整備や、大径材にも対応可能なツインバンドソーの導入、機械等級区分構造用製材のJAS認証の取得等、生産体制の強化及び製品の付加価値向上に向けて取り組んでいる。

同社は、素材生産事業を開始することで、素材生産から木造建築までを一貫して行える体制を整え、川上から川下までの地元産の優良材の知名度向上を実現するバリューチェーンを構築し、新潟県産材の利用促進と地域の林業・木材産業の活性化を目指したいとしている。


(*73)森林経営管理制度について詳しくは、第3章(62-65ページ)を参照。

(*74)「森林・林業基本計画」(平成28(2016)年5月)。安定供給体制の構築に向けた取組の現状と今後の課題について詳しくは、「平成27年度森林及び林業の動向」の18-37ページを参照。

(*75)詳しくは第5章(230-231ページ)を参照。



(流通の効率化に向けた取組)

我が国の林業・木材産業をめぐる状況は、川上の林業経営体と川中・川下の製材、合板業者や工務店等の木材需要者との連携が十分でないことなど、流通の合理化が進んでいないこと等により、木材の加工流通コストが海外に比べて割高という状況にある。

林業の成長産業化を進めるためには、木材製品の需要動向に応じて、需要者側の求めている品質、数量の木材を的確に生産し、必要なときに迅速に供給できるような、マーケットインの発想に基づく川上から川下までを通じたサプライチェーンの再構築により、森林から建築等の現場に至る流通全体の効率化を図ることが必要である。素材生産事業者等の川上から工務店等の川下までのサプライチェーンを通じた需給情報の共有により、丸太の採材や在庫管理、木材の運搬等の効率化や、生産・流通の各段階における製品の付加価値の向上が求められる。また、サプライチェーンに携わる多様な担い手や消費者が、森林の機能、成長段階、利用状況等を把握、理解できるような情報の整理、集約が図られるようにすることも必要である。

そのためには、ICTの利活用による、森林調査及び施業計画の高度化等の森林資源のデータベースの整備やスマート林業を推進するとともに、それを基盤として川上から川下までの事業者が需給情報を共有でき、互いに連携することのできる情報共有プラットフォームの構築を図っていく必要がある(資料4-23)。

そのようなプラットフォームの構築に向けて、新たに流通の各段階におけるサプライチェーン構築に意欲のある事業者同士のマッチングの推進の取組を支援することとしている。


(木材の加工・流通体制の整備)

我が国の木材産業では、品質・性能の確保、価格や供給ロットの安定性の面において競争力のある木材製品を供給できる体制を構築することが課題となっている。

林野庁では、需要者ニーズに対応した木材製品の安定的・効率的な木材製品の供給体制構築に資する加工・流通施設の整備に対する支援を行っている。

コラム 林業・木材産業の成長産業化に向けて ~未来投資戦略2018~

政府は、平成30(2018)年6月15日に「未来投資戦略2018」を閣議決定し、この中で、現場のデジタル化と生産性向上により新たな経済社会システム「Society 5.0」の実現に向けた取組を進めていくとした。

世界では、ICT機器の爆発的普及、AI、ビッグデータ、IoTの活用等により、データと新しいアイデアを駆使して新たな付加価値を創出する第4次産業革命と呼ばれる技術革新が起こっており、この新たな技術革新により、豊富なリアルデータを活用して、従来の大量生産、大量消費型のモノ・サービスの提供ではなく、個別化された製品やサービスの提供により、様々な社会課題を解決することが可能となり、大きな付加価値を生み出す可能性があるとされている。

農林水産業においては、農山漁村が直面している人口減少の危機に対処するため、生産性を抜本的に高める必要があるとし、農林水産業全体でのデジタル技術の導入といった先端技術の実装による生産性の向上(スマート化)を速やかに進めていく必要があるとした。

また、現場のデジタル化により得られる多様なデータ等を活用し、プロダクトアウト(生産者志向)一辺倒の現場から、消費者を起点としたマーケットイン(顧客志向)重視に切り替え、生産から流通、消費に至るまでの各過程におけるバリューチェーン(注)全体において、利益を高めていくことも可能となるとされている。

これらに向け、林業改革においては、零細な山林所有構造や急峻な地形、再造林コストが高い等の林業生産活動にとって厳しい条件であること、木材生産から消費者に至るまでの商流が長い等の流通過程における高コスト体質、住宅着工戸数の減少が予測され、新たな木材需要が求められる等の課題から、(ア)原木生産の集積・拡大、(イ)スマート林業の推進、(ウ)生産流通構造の改革、(エ)木材需要の拡大、(オ)研究開発の推進の5分野の推進を掲げている。

これらの具体的な施策としては、森林経営管理制度や、森林環境税・森林環境譲与税の創設が盛り込まれ、国有林野においては、その一部について、国有林野の有する公益的機能を維持しつつ、意欲と能力のある林業経営者等が長期・大ロットの立木の伐採・販売という形で使用収益できる権利が得られるよう制度の法制化、スマート林業を推進するためのレーザ計測による高精度の資源情報の整備・公開、森林等の情報の共有データベースの立ち上げや、木材需給等のデータを民間事業者が共有する取組等を進めることとしている。


注:バリューチェーンとは、製品を製造してから販売するまでの各事業プロセスにおける製品の「価値」の連鎖を指す言葉。


お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-3502-8036

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