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林野庁

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第1部 第4章 第1節 木材需給の動向(5)


(5)木材輸出対策

(我が国の木材輸出は年々増加)

我が国の木材輸出は、中国等における木材需要の増加や韓国におけるヒノキに対する人気の高まり等を背景に、平成25(2013)年以降増加している。平成30(2018)年の木材輸出額は、前年比7%増の351億円となった。

品目別にみると、丸太が148億円(前年比8%増)、製材が60億円(前年比12%増)、合板等が72億円(前年比14%増)となっており、これらで全体の輸出額の約8割を占めている。特に丸太の輸出額は、輸出額全体の約4割を占めており(資料4-18)、このうち、中国・韓国・台湾向けが98%を占めている。

また、輸出先を国・地域別にみると、中国が159億円で最も多く、フィリピンが79億円、韓国が32億円、米国が25億円、台湾が20億円と続いている(資料4-18)。中国向けについては、輸出額の約7割を丸太が占めており、主にスギが輸出されて梱包材、土木用材、コンクリート型枠(かたわく)用材等に利用されている。韓国向けについては、輸出額の約6割を丸太が占めており、主にヒノキが輸出されて内装材等に利用されている。フィリピン向けについては、輸出額の約8割を合板等が占めている。米国向けについては、輸出額の約4割を製材が占めており、近年は、米(べい)スギ(*61)の代替材需要に応じたスギ製材の輸出が伸びている(事例4-1)。

事例4-1 国産スギ製材品輸出の取組(「林産物の輸出取組事例集」より)

米国に輸出される木質フェンス材

株式会社サイプレス・スナダヤ(愛媛県西条(さいじょう)市)は、平成29(2017)年度から戸建て住宅の外構用の木質フェンス用材として、国産スギ製材品を米国に向けて輸出している。

米国の戸建て住宅の多くには木質フェンスが設けられており、この需要に着目した同社は、材料の主流である米スギ(注)の代替材として、国産スギにより米国の木質フェンス市場への参入を図り、平成30(2018)年には約4,300m3の輸出を行った。

同社は、製材において、比較的強度が高い辺材部分からは集成材やCLT用のラミナを、比較的強度の低い丸太の中心部分からはフェンス用材を取得することで、原木の利用価値の最大化に努めている。

同社は、将来的には国産材による2×4住宅用部材等の輸出にも挑戦し、米国木材市場での更なる販売を目指したいとしている。


注:ウェスタン・レッド・シダー(ヒノキ科クロベ属)の通称。

資料:林野庁「林産物の輸出取組事例集~日本産木材を世界へ~」


(*61)ウェスタン・レッド・シダー(ヒノキ科クロベ属)の通称。



(木材輸出拡大に向けた方針)

平成28(2016)年5月に、政府の「農林水産業・地域の活力創造本部」は、「農林水産業の輸出力強化戦略」を取りまとめた。同戦略では、林産物のうち、スギ・ヒノキについて、丸太中心の輸出から、我が国の高度な加工技術を活かした製品の輸出への転換を推進するとともに、新たな輸出先国の開拓に取り組むこととした。

また、同戦略に基づく取組を更に具体化するため、輸出戦略実行委員会(*62)林産物部会は、平成29(2017)年6月に、中国、韓国、台湾及びベトナムを対象とした「木材・木材製品の輸出拡大に向けた取組方針」を取りまとめた。同方針では、各国・地域別に、木材輸出の現状と課題を整理した上で、輸出のターゲット(品目・対象者)を絞り込み、輸出拡大に向けた取組の方向性と内容を示した(資料4-19)。


(*62)オールジャパンでの農林水産物・食品の輸出促進の司令塔として設置された委員会であり、農林水産物の輸出に取り組む民間団体や関係省庁で構成される。



(木材輸出拡大に向けた具体的な取組)

林野庁では、輸出力強化に向けて、日本産木材製品のブランド化の推進、日本産木材の認知度向上、内外装材などターゲットを明確にした販売促進等に取り組んでいる。

まず、日本産木材製品のブランド化の推進として、中国の「木構造設計規範」の改定に向けた取組を進めてきた。中国ではこれまで、我が国の「建築基準法(*63)」に相当する「木構造設計規範」において、日本の在来工法である木造軸組構法(*64)の位置付けと日本産のスギ、ヒノキ及びカラマツの構造材としての規定がなされておらず、同国において構造部材として日本産木材を使用することや木造軸組構法による建築が困難な状態であった。このため、平成22(2010)年から、一般社団法人日本木材輸出振興協会(*65)の依頼を受けた国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所等の日本側専門家が、同規範の改定作業に参加してきた。その結果、平成29(2017)年11月に同規範の改定が公告され、平成30(2018)年8月1日に「木構造設計標準」として施行された。改定に当たっては、日本産のスギ、ヒノキ及びカラマツの基準強度と木造軸組構法が盛り込まれており、これらの樹種を構造材として使った同構法の住宅建設が中国で可能となった。現在、日中の木材関係者等が共同で、設計・施工に当たっての現場向けの具体的な指針「木構造設計手引」の作成に取り組んでいる。

日本産木材の認知度向上としては、海外における展示施設の設置や展示会への出展、モデル住宅の建築・展示を支援している。同協会は、平成28(2016)年10月にはベトナムのホーチミンに、平成29(2017)年12月には台湾の台北に、日本産木材製品の展示施設「ジャパンウッドステーション」をそれぞれ開設し、当施設を拠点として、日本産木材製品のPR、商談会の開催、地域の木材市場の情報収集等に取り組んでいる。また、同協会は輸出企業との連携により、中国や台湾において開催された建築・建材等の展示会に製材や内装材、家具、合板、LVL(*66)等を出展するとともに、中国等に日本産木材を使った木造軸組モデル住宅やモデルルームを設置するなど、日本産木材製品の展示・PRを行っている。

ターゲットを明確にした販売促進としては、輸出先国バイヤーの日本への招へいによる意見交換会・セミナーの開催や工場見学、輸出先国の木材加工・販売業者と日本の輸出業者による商談会の開催等を支援している。

また、新たな輸出先国開拓のため、有望な輸出先と考えられる国・地域を対象として、木材輸出のポテンシャルに関する市場調査を支援している。

平成29(2017)年は、米国、インド、平成30(2018)年は香港、シンガポール、イギリス、フランス、オランダに対する調査の支援を行っている。米国については、住宅フェンス用等に利用されていた米スギの価格高騰による代替材需要に応じて、スギ製材の輸出が有望であると見込み、同協会は、平成31(2019)年1月、米国のシアトルにおいて日本産木材製品をPRするシンポジウムを開催した。

インドについては、近年、木材の輸入量が増加しており、潜在市場が大きいことが分かったため、平成31(2019)年3月にインドのデリーにおける展示会に出展し、日本産木材製品のPRを実施した。

また、EU等に向けては、デザイン性の高い木製家具・建具を始めとする日本の木材製品をフランスにおいてPRする取組(事例4-2)や、新たな木質材料であるCLT等の輸出のためのPR活動に対して支援した。

さらに、近年は、今後の国内需要の減少を見据え、輸出に取り組もうとする事業者も増える中、単独の企業では輸出に取り組むリスクや負担が大きいことから、企業同士が連携して行う輸出向け製品の開発や試作、海外への製品PR、バイヤーの開拓などの取組についても支援している。

これらの取組に加え、林野庁では、各地における林産物の輸出に向けた取組事例を収集・整理し、「林産物の輸出取組事例集~日本産木材を世界へ~」として取りまとめて紹介している。

都道府県においても、輸出促進のための協議会等を設置し、地域の企業同士の連携による共同出荷体制を構築する動きや、海外で日本の木造軸組構法の住宅建築セミナーを開催するなど、木材製品の輸出促進に向けた動きが広がっている。

事例4-2 欧州への高付加価値木材製品の輸出に向けて

高付加価値な日本産木材製品の輸出を促進するため、一般社団法人日本木材輸出振興協会は、フランスのストラスブールで行われた工芸見本市「サロン・レゾナンス」において、日本の木材を使ったデザイン性の高い木製家具、建具、内装材などの輸出に意欲のある出展者と連携し、ジャパンパビリオンを設置した。

会場では、組子を使った木製パネルや木製ハンドバッグ等、日本の伝統的な加工技術と現代のデザイン性が融合した「和」を表現する高品質な木材製品のPRを行った。

フランスでは、2018年7月から8か月間にわたって日本文化を紹介する大規模な芸術イベント「ジャポニスム2018」が開催されており、その一環として企画された。

このような取組をきっかけとして、日本産木材を使った製品の品質の良さや魅力が伝わり、欧州市場の新たな開拓へとつながることが期待される。


資料:一般社団法人日本木材輸出振興協会ホームページ


(*63)「建築基準法」(昭和25年法律第201号)

(*64)木造住宅の工法について詳しくは、197-198ページを参照。

(*65)平成16(2004)年に「日本木材輸出振興協議会」として設立され、平成23(2011)年1月に「一般社団法人日本木材輸出振興協会」に移行。

(*66)「Laminated Veneer Lumber」の略で、木材を薄く剥いた単板を3枚以上、繊維方向が平行になるよう積層接着した製品のこと。


お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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