第1部 第 I 章 第2節 森林・林業の再生に向けた取組の成果と現状
森林・林業の再生に向けては、これまで様々な取組がなされてきたところであり、一定の成果が現れている一方で、引き続き課題となる事項も存在している。以下においては、こうした森林・林業の再生に向けた取組の成果と、引き続き課題を有している現状について記述する。
(森林・林業の再生に向けた取組の成果)
我が国においては、これまでも小規模零細な所有構造にある森林について、面的なまとまりを有する効率的な森林管理を確立するよう各種施策を講じてきた。
特に、森林吸収源対策としての間伐等の森林整備を推進してきた結果、京都議定書第一約束期間の森林吸収量3.8%の目標が達成されている(*45)。また、利用間伐の取組が進展したこと等から、木材供給量は7年連続で増加し、平成28(2016)年には約2,700万m3となる(*46)などの成果が上がっている(資料 I -9)。
さらに、丸太の需要側である木材加工・流通施設の整備等に関しても、5年間で原木消費量190万m3程度に相当する製材・合板工場等が整備される(*47)とともに、新たな木質建築部材の開発等が進んでいる。
こうしたことから、平成14(2002)年には過去最低の18.8%まで落ち込んでいた我が国の木材自給率は、ここ数年連続して上昇を続けており、平成28(2016)年にはほぼ倍の34.8%まで上昇している(*48)。また、森林・林業・木材産業に関わる様々な新たな取組が行われるなど、森林・林業の再生に向けた兆しがみえ始めている。
(*45)森林吸収源対策について詳しくは、第 II 章(77-78ページ)を参照。
(*46)林野庁「平成28年木材需給表」(平成29(2017)年9月)。木材供給量について詳しくは、第 IV 章(133ページ)を参照。
(*47)「森林・林業基本計画」(平成28(2016)年5月)
(*48)林野庁「木材需給表」。木材自給率について詳しくは、第 IV 章(135ページ)を参照。
(森林・林業の再生に向けた課題)
この一方で、森林所有者の高齢化や相続による世代交代が進んでいること等から、森林所有者の把握や境界の明確化に多大な労力を要するケースもあり、民有林に占める森林経営計画の認定率は平成28(2016)年度末で31%にとどまっている(*49)。森林組合による森林経営計画の認定面積については、平成25(2013)年の225万haから平成27(2015)年には278万haと増加している(*50)ものの、更なる取組が必要な状況にある。
また、路網整備に関しては、丈夫で簡易な路網作設に係る技術的な知見の集積や、技術者の育成が進んだこと等から、平成26(2014)年度の路網開設延長は、平成22(2010)年度と比較して2倍以上の約1.5万km/年に増加するなど、一定の成果が得られた(*51)。しかしながら、路網密度はいまだ十分な水準には至っておらず、より効率的かつ重点的に路網整備を行っていく必要がある。
人材の育成・確保の取組に関しては、各種研修等の実施により、森林総合監理士(フォレスター)(*52)や現場技能者等の育成・確保の取組が進められており、今後は、能力向上及び各人材の役割に応じた具体の取組を推進していくことが求められる(*53)。さらに、雇用の不安定さや他産業に比べて賃金が低いこと、労働災害発生率が高いこと等から、林業の現場の作業環境は厳しく、雇用管理の改善の取組や労働災害の防止対策が引き続き求められている(*54)。
また、木材産業においても、今後人口が減少していく中で新たな需要先として期待される非住宅分野の木造建築物等を増やしていくための、消費者・実需者の求める品質・性能の確かな製品の供給が十分にできていないといった課題を抱えている(*55)。
このように、路網整備が十分ではないことや効率的な施業が行われていないこと等から林業の生産性は向上しておらず、山元立木価格も低迷を続けている。山元の利益が十分に確保されない中、再造林費用を確保することが難しく、循環的な林業を実現できる状況には至っていない。
(*49)林野庁計画課調べ。
(*50)林野庁「森林組合統計」
(*51)路網整備について詳しくは、第 III 章(96-98ページ)を参照。
(*52)森林総合監理士(フォレスター)について詳しくは、第 II 章(53-55ページ)を参照。
(*53)人材の育成・確保の取組について詳しくは、第 II 章(53-55ページ)、第 III 章(103-105ページ)等を参照。
(*54)林業における雇用や労働災害の防止対策について詳しくは、第 III 章(105-107ページ)を参照。
(*55)品質の確かな製品の供給に向けた取組について詳しくは、第 IV 章(148-149ページ)を参照。
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