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林野庁

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第1部 第 I 章 第3節 新たな森林管理システムの構築の方向性(1)

我が国の森林資源の現状や林業をめぐる状況に鑑みると、森林の経営管理の集積・集約化を進めるための「新たな森林管理システム」の構築が森林の有する公益的機能の発揮と林業の成長産業化を実現するために不可欠となっている。以下では、新たな森林管理システムの構築の方向性について、意欲と能力のある林業経営者の関わりや、併せて実施することが必要な各種の条件整備、森林環境税(仮称)の導入等に触れながら記述する。


(1)林業の成長産業化と森林資源の適切な管理

我が国の人工林の約半数が主伐期を迎えている中、森林の有する公益的機能を持続的に発揮しつつ、林業の成長産業化を実現させるためには、これまでに掲げてきた我が国の森林・林業をめぐる課題を踏まえた対応が必要である。

これまで、我が国の森林・林業に関する施策においては、森林所有者の自発的な施業を国や都道府県が支援するという仕組みをとってきた。しかし、森林所有者の多くが経営規模を拡大する意欲や所有意思等が低くなり、路網整備や施業の集約化など積極的な経営や適切な管理を期待できない状況がみられる。

このため、森林所有者が自ら所有する森林について経営管理すべき責務があることを明確化した上で、森林所有者や林業経営者に一番近い公的な存在である市町村が森林所有者の意向を確認し、森林所有者が自ら経営管理できない場合には、所有している森林の経営管理に必要な権利を森林所有者が市町村に委ねることができるようにし、さらに、市町村は、林業経営に適した森林を、意欲と能力のある林業経営者に任せ、森林の経営管理を集積・集約させていく必要がある。一方で、自然的条件が悪く、林業経営が成り立たない森林については、既に手入れ不足に陥っている森林も生じていることから、こうした森林は、市町村が整備を進めていくことも必要である。

こうした新たな森林管理のシステムを構築し、我が国の森林・林業に横たわる課題を打破し、人工林の適切な管理と資源の循環的な利用を進めていくことが必要とされている(事例 I -1)。

事例 I -1 西粟倉村(にしあわくらそん)百年の森林(もり)構想

岡山県北東端部の中山間地に位置する西粟倉村は、面積約5,800haのうち93%を森林が占める典型的な山村である。同村は人口1,478人、世帯数592、高齢化率35%(平成29(2017)年3月現在)であり、平成17(2005)年時点の人口1,684人からは徐々に人口が減少している。

同村では、森林の約82%を占める人工林の多くが50年生まで育っていることを受け、林業をめぐる厳しい状況の中で、これらの人工林の管理を諦めるのではなく、村ぐるみであと50年頑張って美しい森林に囲まれた上質な田舎を実現していこうとの「百年の森林(もり)構想」を村の方針として打ち立てた。

この「百年の森林(もり)構想」に基づき西粟倉村や株式会社西粟倉森の学校等の主体が連携して「百年の森林(もり)事業」を実施しており、川上側では適切な森林管理や森林整備により「生物が豊かで、美しく安全な森林づくり」、川下側では間伐材を使った商品の開発・販売を通じ「森林をきっかけに西粟倉を多面的に活性化」することを目的としている。

具体的な取組としては、個人所有の山林を村が預かって管理・整備を行う「長期施業管理に関する契約」を進めることとしており、契約目標の私有林約3,000haに対して、平成29(2017)年12月現在、約1,475haの契約を締結している。この契約は、西粟倉村が契約期間を10年間とした森林管理の委託を受け、その間森林整備にかかる費用については全て村が負担し、森林所有者には費用負担がかからないこととなっている(木材販売の収益は森林所有者と村が折半)。このように、地元の地方公共団体が主体的に森林管理に関わることが、安心感につながり、契約を伸ばしている。

西粟倉村内の林齢100年を超える人工林
西粟倉村内の林齢100年を超える人工林
本取組によって生産された間伐材
本取組によって生産された間伐材


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