このページの本文へ移動

北海道森林管理局

    文字サイズ
    標準
    大きく
    メニュー

    知床(しれとこ)森林生態系保護地域

    1.設定目的

      北海道の東北端から北北東に突き出た知床半島の海岸線から高山帯まで見られる地形に、北方系と南方系の動植物が連続的かつ複雑に存在する多様な森林群落が、原生的状態でかつ大規模なまとまりをもって存在する当該地域の天然林を保護・管理することにより、森林生態系からなる自然環境の維持、野生生物・遺伝資源の保護、森林施業・管理技術の発展、学術の研究等に資することを目的とする。

    知床1
      知床2
     海上から、海蝕崖、森林帯、さらに高山帯を望む。   雲海に浮かぶ知床半島

    2.設定の経緯

    • 平成2(1990)年4月25日に、「知床森林生態系保護地域」として設定された。
    • 平成16(2004)年3月31日に、世界自然遺産の保護担保措置を講ずるべく、既存保護林の区域を見直し(拡充等)、管理計画が変更策定された。
    • 平成17(2005)年7月17日に、南アフリカ共和国ダーバンで行われた『第29回ユネスコ世界遺産委員会』で「自然遺産」に登録された。
    • 平成30(2018)年4月1日の保護林再編においても、「森林生態系保護地域」として設定された。 

    3.所在地 (関係森林管理署)

    斜里郡  斜里町 (網走南部森林管理署) 
    目梨郡  羅臼町 (根釧東部森林管理署) 

    4.面積

    森林生態系保護地域総面積:45,988.57 ha
                   地帯区分別内訳
                     保  存  地  区:31,915.47 ha
                     保全利用地区:14,073.10 ha

    5.位置図

     知床位置図

    6.現況

     【植生現況】

    • 知床半島は、平地が少なくほとんどが山岳地帯であり、海岸線から標高1,250m~1,660mほどの高山帯まで、その植物相
      は変化に富んでいる。
    • エゾマツ、トドマツからなる針葉樹林、ミズナラ、イタヤカエデ、ハルニレ、ホオノキ、ヤチダモなどによって構成される
      広葉樹林はおおよそ標高600mまでに限られ、ダケカンバ林へと移行する。このダケカンバ林は山脈の東側によく発達している。
    • 本来亜高山帯から高山帯にかけて分布するミヤマハンノキ林は、沢沿いや河原に見られ、半島先端に近い地域では海岸に開
      く扇状地形にも見られる。
    • ハイマツは、半島中央部では標高700m位から、ウトロ側では標高700mより低い地域でも見られ、半島先端部ではさらに
      低い標高400m~500mから出現している。
    • 高山植物群落は羅臼岳から硫黄山に至る山稜等の風衝地、砂礫地に見られ、ハイマツのほか、ミヤマビャクシン、カマヤリ
      ソウ、イブキトラノオ、ミヤマオダマキ、シコタンソウ、イワオウギ、チシマフウロ、イブキジャコウソウなどが見られる。
    • 半島には大小の山岳湖沼が散在し、羅臼湖周辺は規模が大きく、湖沼の周辺及び溶岩台地上にはヨシ、ネムロコウホネ、エ
      ゾノヒツジグサ、チシマミクリ、ヌマガヤ、ヒメミズニラなどで構成される湿原植物群落が見られる。
    • 海岸植物群落の中で特徴的なものは、海岸断崖植物群落、草原植物群落及び知床岬付近の台地草原である。
    • 知床半島の北側と南側では、気象条件の相違等から植生の垂直分布にも相違が見られる。
    • 知床半島の高等植物相は845種が記録されているが、この中には知床半島の固有種であるシレトコスミレやシレトコトリカ
      ブトなどの貴重な植物種が含まれる。また、日本では知床半島以外には見られないものとして、エゾモメンヅル及びラウス
      スゲがあげられる。

     【動物現況】

    • 哺乳類は、知床半島には道内に広く生息するヒグマ、エゾシカほか、エゾオコジョ、タヌキ、エゾクロテンなどのクジラ目
      を除いた12科44種が生息している。
    • 鳥類は、海岸線から高山帯まで、様々な生息環境が整っており、海鳥から森林性鳥類、高山帯の鳥類等、鳥類相が豊富で比
      較的狭い範囲で見られる。天然記念物に指定されている鳥類としては、知床半島で繁殖するシマフクロウ、オジロワシ及び
      クマゲラのほか、オオワシ、タンチョウが季節的に渡来するなど、鳥類記録としては50科263種が確認されている。
    • 魚類は、知床半島の河川のうち半島基部を含めると12科42種の魚類が確認されているが、基部を除く半島部においてはサ
      ケ科魚類を中心に10科23種となり、そのほとんどが遡河回遊魚で、純淡水魚は1種と少ないのが特徴である。
    • 両生類は、エゾサンショウウオ、ニホンアマガエル、エゾアカガエルの3科3種、爬虫類では、ニホンカナヘビ、アオダイ
      ジョウ、ニホンマムシなど、6科8種が確認されている。
    • 昆虫類は、分類群ごとに調査が進められており、鱗翅目(チョウ目)では96種の蝶と815種の蛾が斜里町で確認されてい
      る。甲虫類では羅臼岳の地表性甲虫114種を含む500種以上が確認されているほか、36種のトンボ類が記録されている。知
      床半島の昆虫相の特徴として、大雪山などの高山帯に分布する種類が比較的低地でも確認されている。

    7.法指定等

    土砂流出防備保安林、土砂崩壊防備保安林、水源かん養保安林、保健保安林、潮害防備保安林、砂防指定地、鳥獣保護区特別保護地区、鳥獣保護区、国立公園特別保護地区、国立公園第1種特別地域、国立公園第2種特別地域、国立公園第3種特別地域(知床国立公園)、原生自然環境保全地域、世界遺産(自然遺産)

    8.取り扱い方針

    (1) 天然林は、原則として人手を加えずに自然の推移に委ねることとする。
    (2) 保全利用地区の人工林については、育成複層林施業等を行うことができるものとして、将来的には天然林への移行を図る
        ものとする。
    (3) 必要に応じて行うことができる行為
      ア 学術の研究、自然観察教育、遺伝資源の利用その他公益上の事由により必要と認められる行為
      イ 山火事の消火、大規模な林地崩壊・地すべり・噴火等の災害復旧及びこれらに係る予防的措置等、非常災害に際して必要
        と認められる行為。
      ウ 鳥獣・病害虫被害及び移入種対策として必要と認められる行為
      エ 学術の研究、自然観察教育等のための軽微な施設の設置
      オ 保全利用地区等における枯損木及び被害木の伐倒・搬出
      カ 標識類の設置等
      キ その他法令等の規定に基づき行うべき行為
    (4) 当該保護林の全域は世界遺産登録地域であることから、知床世界自然遺産管理計画に基づく管理及び科学委員会、地域連
        絡会議、適正利用・エコツーリズム検討会議など関係機関及び地域関係団体と共同による管理・利用を行う。
    (5) 知床連山に設置される管理歩道については、適宜巡視等を実施し、適正な利用の啓発及び植生荒廃等の拡大防止に努め
       る。

    お問合せ先

    計画保全部計画課
    ダイヤルイン:050-3160-6283