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第1部 第1章 第2節 林業経営体の動向(1)


林業の成長産業化と森林の適切な経営管理を進めていくためには、高い生産性や収益性を有するとともに、主伐後の再造林に取り組むような、意欲と能力のある林業経営体の育成を図ることが必要である。

「農林業センサス」によると、調査期間(*4)の1年間に素材生産を行った林業経営体(森林組合、民間事業体、林家(*5)等)は、5年前から19%減の10,490経営体となっている。一方で、林業の産出額は平成22(2010)年の4,224億円から、平成27(2015)年は4,550億円へと7%増加し、素材生産量の合計も27%増の1,989万m3となっている。また、素材生産を行った林業経営体のうち、1万m3以上の素材生産を行った林業経営体は5年前の361経営体から524経営体へと約1.5倍に増加している。このように、林業経営体による素材生産の規模は拡大傾向となっている。

本項では、林業経営体の動向について、森林組合、民間事業体、林家等別の状況やスマート林業の導入による生産性の向上、需要側との結び付きによる流通の効率化等のイノベーションに向けた取組事例等を示していく。


(*4)平成26(2014)年2月から平成27(2015)年1月までの間。

(*5)保有山林面積(所有山林面積から貸付山林面積を差し引いた後、借入山林面積を加えたもの)が1ha以上の世帯



(1)森林組合の現状

(森林組合の経営規模)

森林組合は、森林所有者の経済的社会的地位の向上並びに森林の保続培養及び森林生産力の増進を図ることを目的として設立される、森林所有者を組合員とした協同組織である。

森林組合の数は、経営基盤の強化等を目的とする合併により、平成23(2011)年度の672組合から平成28(2016)年度には624組合へと減少している。この間、総事業費取扱高は平成23(2011)年度の2,643億円から平成28(2016)年度には2,695億円となっており、1森林組合当たりの総事業取扱高は3億9,385万円から4億3,322万円へと拡大するなど、事業規模が大きくなっている。一方で、総事業費取扱高が1億円未満と、平均の4分の1にも満たない森林組合も約2割存在しており、小規模な森林組合を中心として事業・組織の再編等による基盤強化等が必要な状況となっている。

(森林組合が行う事業の変遷)

森林組合が実施する事業のうち、植林、下刈り等の事業量は、長期的には減少傾向で推移しているものの、全国における植林、下刈り等の受託面積に占める森林組合の割合は、いずれも約6割となっており、森林組合は我が国の森林整備の中心的な担い手となっている。また、主伐も含めた素材生産量については平成23(2011)年度の396万m3から平成28(2016)年度には567万m3へと、近年大幅な伸びを示している(資料1-2)。


森林組合の取扱高を「販売」、「加工」、「森林整備」別に見ると、平成17(2005)年時点では、「森林整備」が全体の63%を占めており、「販売」22%、「加工」13%、となっているが、平成28(2016)年には、「販売」が35%まで増加する一方、「森林整備」は51%に減少しており、森林組合においても販売事業を強化していることがうかがえる(資料1-3)。


また、都道府県単位の森林組合連合会では、森林組合系統のスケールメリットを活かすべく、共販所での原木の販売を行ってきている。近年、製材工場等の大規模化が進んでいることを背景に、森林組合等が生産する原木を森林組合連合会が取りまとめ、協定等に基づき大口需要者に販売するなど、原木流通において大きな役割を担いつつある。


(森林施業プランナーによる施業の集約化)

森林組合は、その中心的かつ本来的な事業として、組合員の所有森林を中心とした森林施業の集約化に取り組んでいる。平成28(2016)年度末時点で森林組合が作成した森林経営計画の面積は、組合員所有森林面積1,063万haの約3割に当たる293万haとなっている。施業の集約化に当たっては、林業経営体から森林所有者に対して、施業の実施を働き掛ける「提案型集約化施業」が行われている。こうした、施業の集約化を担う人材を育成するため「森林施業プランナー研修」等が実施されてきたが、研修終了者の技能、知識、実践力のレベルが様々であったことから、平成24(2012)年から、森林施業プランナーの能力や実績を評価して認定を行う森林施業プランナー認定制度が「森林施業プランナー協会」により開始されている。この制度に基づく、認定森林施業プランナーは、平成31(2019)年3月までに2,133人が認定を受けている。森林組合には、そのうちの8割強に当たる1,800人(*6)が在籍しており、在籍数は増加している。また、全森林組合の7割強に当たる462組合に認定森林施業プランナーが在籍している。


(*6)林野庁経営課調べ。



(森林組合の役職員の状況)

森林組合における常勤理事の設置については、昭和40年代は常勤理事を設置している割合は4割であり、平成28(2016)年でも約7割に留まっている。また、理事の平均年齢は約68歳(*7)と高齢化が進んでいるほか、女性理事の割合が0.4%(*8)、員外理事の割合が0.9%にとどまっており、経営層が高齢の組合員男性に著しく偏っている状況となっている。特に、女性理事の割合は農業協同組合では8.6%(*9)となっており、女性の森林組合の経営への参画は大きく遅れている。

また、森林組合の専従職員数は、平成23(2011)年の7,048人から平成28(2016)年には6,684人と減少傾向が続いており、専従職員のいない森林組合は、約1%となっている。

森林組合に雇用され、森林整備等に従事する現場作業員は約1万6千人と、我が国の林業就業者の約3分の1を占めている。年齢階層別には、60歳以上の占める割合が3割と高いものの、伐出では49歳以下の割合が増加するなど若返りが進んでいる。

しかし、「緑の雇用」アンケート(*10)によると、約9割の森林組合が最近3年間の事業量からみて現場作業員が不足していると回答している。また、最近3年間の求人数と応募者数については、約4割の森林組合が応募者数は求人数を下回ったと回答しており、現場作業員の確保が課題となっている。


(*7)林野庁経営課調べ(平成30年度)。

(*8)林野庁「森林組合統計」

(*9)農林水産省「総合農協統計表」

(*10)「緑の雇用」アンケートについて詳しくは、25-26ページ参照。


お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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