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九州森林管理局

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    行者(ぎょうじゃ)スギ遺伝資源希少個体群保護林

    1.概要

       本保護林は、福岡県東峰村にあり、保護対象は国有林内に残存していた老齢スギ群落で、福岡県東部と大分県北西部の境界にある日本三大修験道の一つである英彦山の西側の標高約500m前後の盆地となっている小石原地区に位置する。付近には、焼き物の里として有名な小石原の皿山地区には50軒ほどの窯元が点在する。
       これまで本保護林は、県道211号東側にある行者スギ植物群落保護林(旧保護林)の2団地と県道500号南側に接する小石原スギ遺伝資源希少個体群保護林(旧保護林)の2団地が、別々に保護・管理されてきたものを由来がほぼ同じで近接していることから、一体的に取り扱うこととして、令和2年度に統合されたものである。
       
       また、この区域内にある行者堂付近一帯は、修行者たちの峰入りルートの最も重要な修行の場所で、一帯の老齢スギは鎌倉時代以降、英彦山に入山する修行者たちが奉納植樹したと伝えられており、この一帯の老齢杉個体群を別名「行者杉」と呼ぶ。老齢スギは高樹齢のもので約500年ともいわれる。現存林分の大部分は林齢約200~400年生のものと推定されている(旧行者スギ植物群落保護林の林齢約200年、旧小石原林木遺伝資源保存林の林齢約400年)。
       修行者たちに植栽されたスギのクローン元や実生の産地は不明ではあるが、現存する高齢級スギ林は長年月の風雪に耐え残ったものである。本保護林内には、「森の巨人たち百選」に選ばれた「大王スギ(行者の父)」があり、訪れる観光客も多い。旧行者スギ植物群落保護林は、ヘクタール当たり蓄積1,500立米近くある優良林分である。
       地形は中~緩傾斜又は平坦地、土壌は埴質の安山岩、深い風化土壌を主とする。特に、腐植質を混ずる表層土は普通林地に比べて著しく深い。

       保護林モニタリング調査着手時の2007(平成19)年度の調査では、旧小石原林木遺伝資源保存林区画は台風による倒木等の整理が行われ、下層には広葉樹が育ち、二段林を形成しスギ大径木は安定していた。一方、旧行者スギ植物群落保護林区画は立地条件が風の当たらない凹地にあることから、大径木がひしめき合うような構造ではあったが、病虫害や気象害は認められず健全で安定していた。
       2017(平成29)年度のモニタリング調査では、旧小石原林木遺伝資源保存林区画は新たな気象害や病虫害は確認されなかったが、スギの新規幼樹個体の生育も確認されず、下層植生の食害等シカ被害レベルは、過年度より高くなっていた。旧行者スギ植物群落保護林区画は、2017(平成29)年7月の九州北部豪雨災害による土砂崩れが確認されたが、プロット調査の結果を踏まえるとスギ本数には大きな変化はなく、材積は概ね増加傾向が見られた。

     

    行者スギ_近景 行者スギの巨木
    旧行者スギ希少個体群保護林 近景1 行者スギの巨木
    小石原スギ遺伝資源希少個体群保護林の近景 小石原(行者スギ)遠景
    小石原スギ遺伝資源希少個体群保護林の遠景 旧小石原スギ遺伝資源希少個体群保護林の遠景

    行者スギ_林内

              保護林内の老齢スギ林の林内景観

    2.目的

    「行者スギ」老齢林の個体群の持続性を向上、遺伝資源の保護、併せて森林施業、管理技術の発展、学術研究等に資するものとする。

    3.所在地

    福岡県 朝倉郡 東峰村

    4.設定年月日と経緯

    昭和25年3月31日   行者スギ学術参考保護林
    昭和63年3月31日   (旧)小石原林木遺伝資源保存林(設定)
    平成5年3月31日   (旧)行者スギ植物群落保護林(設定)
    平成30年4月1日   保護林制度改正による再編、名称変更
    令和2年3月31日   保護林統合による再編、現在保護林への名称変更

    5.面積

    10.90 ha

    6.関係森林管理署等

    福岡森林管理署

    7.現況

    標高:約500m

    傾斜:中~緩傾斜

    地質:安山岩類

    土壌型:BD(d)

     林齢:200年生以上~400年生程度

    8.法指定等

    水源かん養保安林

    9.取扱方針

    保護・管理及び利用に関する事項

    保護・管理及び利用に関する基本的な事項については、保護林設定管理要領(PDF : 328KB)(平成27年9月28日付け27林国経第49号)に定められた希少個体群保護林の取扱い方針に従う。

       本保護林では、高齢級のスギ個体数の可能な限りの確保及びこれらの確保に必要な生育環境の維持を目標とし、保護・管理及び利用に関する基本的な事項については、保護林設定管理要領(平成27年9月28日付け27林国経第49号)に定められた希少個体群保護林の取扱い方針に従い、これまでの保護林モニタリング調査結果を踏まえて取り扱うものとする。
    2017(平成29)年度のモニタリング調査では、過去の気象害による枯損は見られるもののこれ以外には気象害や病虫害は確認されていないこと、シカによる食害レベルは過年度より高くなっている(シカ被害レベル3)が保護対象の高齢級のスギには被害は見られないこと、表土や下層植生が流失した箇所があるものの大きな影響は受けていないこと、固定プロットの毎木調査の結果から現状維持又は確認本数、材積増加も見られることから、適正に保護管理されているとの評価がなされた。
       このため、本保護林については、通常の風倒木を含めて、自然の遷移に委ねた管理を行うものとする。ただし、大径木のスギへのシカ被害が見られるようになった場合には、対策の検討を行い、遺伝資源の保全が必要と判断された場合には、関係機関と連携し、これまで行われてきた生息域外保存の追加や生息域内保全の検討を行うものとする。
       また、生息域内保全に関し風倒被害が発生し空間が空いた箇所が生じた場合には、状況に応じて、保護林内の高齢級スギのクローンや実生個体の移植などの検討も行うものとする。

    5年とする。

    10.モニタリング実施間隔


          モニタリング実施間隔は、これまでの調査から現状維持、林内環境は安定との結果であり、基準に照らし、5年とする

    11.保護林の位置図



    行者スギ遺伝資源希少個体群保護林(統合位置図)

    お問合せ先

    計画保全部計画課
    担当者:生態系保全係
    ダイヤルイン:096-328-3612