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九州森林管理局

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    祖母山・傾山・大崩山(そぼさん・かたむきやま・おおくえやま)周辺森林生態系保護地域

    1.概要

      本保護林は、大分県南部の竹田市、豊後大野市、佐伯市、宮崎県北部の延岡市、日之影町、高千穂町にまたがり、大野川、北川、祝子川、五ヶ瀬川の上流域に位置する。地形は急峻で祖母山(1,757m)、傾山(1,602m)、大崩山(1,643m)を中心とした山系で、地質的には臼杵~八代構造線上にあり、砂岩、粘板岩、チャート等を基岩とした古生層からなる。林相は、山麓部はウラジロガシ-サカキ群集、標高700m‐1,000m付近の山腹部にはアカガシ、ウラジロガシ、ツバキ等常緑広葉樹とモミ、ツガ等の常緑針葉樹との組み合わせによるモミ-シキミ群集、ツガ-ハイノキ群集などが発達する。
    また、標高1,000m以上の山地帯は冷温帯湿潤気候の極相であるブナ林がみられ、山頂の岩角地にはヒメコマツが生立し、特別天然記念物のニホンカモシカ等哺乳類や鳥類も豊富に見られる。河川には、天然記念物のイワメやアマゴが生息する。
    平成30年度のモニタリング調査における動物調査では、6目7科8種が確認されたが、ニホンジカが圧倒的に多かった。鳥類は、6目15科25種が確認され、コゲラ、ウグイスなどの留鳥16種及びカッコウ、ツツドリ等の夏鳥9種が確認された。このほか、両生類の国内希少野生動植物種で環境省絶滅危惧1B類のソボサンショウウオの生息が確認された。環境省及び宮崎県の希少植物は、計15種が確認された。動植物の詳細は、下記の9.特徴で記述する。
    この生物多様性豊かな原生的天然林の森林生態系を保存し、自然環境の維持、動植物の保護、遺伝資源の保存、学術研究などに役立てるとともに、確実に後世に引き継ぐことが重要である。なお、同地域は、祖母・傾・大崩山系周辺地域ユネスコエコパークに登録されている。 

     

     

    祖母山・傾山・大崩山_祝子川上流部林相 祖母山・傾山・大崩山_アケボノツツジ
    祝子川上流部林相 アケボノツツジ

     

    祖母山・傾山・大崩山_尾平越付近から祖母山方面 

    尾平越付近から祖母山方面

     

    2.所在地及び関係森林管理署

    大分県 佐伯市 (大分森林管理署)
             竹田市 (大分森林管理署)
             豊後大野市(大分森林管理署)
     
    宮崎県 延岡市 (宮崎北部森林管理署)
             高千穂町(宮崎北部森林管理署)
             日之影町(宮崎北部森林管理署)

    3.設定年月日及び経緯

    旧名称「祖母山学術参考保護林(2,321ha)
    旧名称「祖母山風致保護林」(1,365.50ha)
    旧名称「祝子川風致保護林」(2,293.29ha)
    以上、51年3月31日設定し、
    平成2年3月29日再編

    4.面積

    森林生態系保護地域総面積:5,977.79 ha
    (保存地区:1,579.70ha  保全利用地区:4,398.09ha)
      大分署:3,030.89 ha
      宮崎北部署:2,946.90 ha
        森林生態系保護地域の外接区域:957.52ha

    5.現況

    林種:天然林
    林齢:100年生以上
    標高:約1,000~1,757m
    地質:地質学的に臼杵~八代構造線上にあり、砂岩、粘板岩、チャートなどを基岩とした古生層が基盤岩となっている。その南部、すなわち夏木山、桑原山以南は、中生界の四万十層群となっていて、頁岩、砂岩などを基岩とし、南に広く分布している。祖母山から傾山一帯にかけては、これらを貫いて広がる新生界の祖母山火山岩類が広く分布し安山岩類及び流紋岩を基岩としている。新百姓山付近には見立礫岩が比較的広くみられる。その他、花崗岩類の小岩体が点在的に分布し、なかでも大崩山付近には広くみられる。
     土壌:褐色森林土約86%、黒色土約1.5%、岩石地約13%が分布している。その他、乾性ポドソル化土壌が極めて僅かであるが出現する。褐色森林土のなかでは、適潤性のBD(d)、BD型土壌が約70%を占め、乾性のBA、BB型土壌が約15%とをっている。これらを地形的にみてみると、一般に主なる稜線にはBB型が、谷沿いにはBD型が普遍的にみられ、これらの中間の斜面や緩やかな稜線にBD(d)型が分布している。黒色土は、本谷山から傾山にかけての緩やかな稜線部に帯状に分布している。
    気候帯:太平洋岸気候区-九州山地型 

     

    6.法指定等

    保安林(水源かん養・保健・土砂流出防備)、祖母傾国定公園(特保・特1・特2・特3)、
    祖母傾県立自然公園(普通)、史跡名勝天然記念物、鳥獣保護区(特別保護・普通)

    7.祖母山・傾山・大崩山周辺森林生態系保護地域の位置図

     

     sobosan1

    8.管理及び取り扱いに関する事項

    保護・管理及び利用については、基本的には保護林設定管理要領(平成27年9月28日付け27林国経第49号)保護林管理設定要領(PDF : 328KB)に定められた森林生態系保護地域の取扱方針並びに「祖母山・傾山・大崩山周辺森林生態系保護地域計画」に従う。また、平成19(20)、25、30年度の保護林モニタリング調査の結果を踏まえて取り扱うこととする。

    現地は早くからほぼ全域でシカ食害が進行し、下層植生は嗜好植物の減少・衰退、忌避植物の増加が確認されている。さらに、平成30年度調査で祖母山地域、傾山地域、大崩山地域の一部でシカ食害の影響と思われる表土流亡も確認された。各調査プロットの下層植生は総体として、極めて貧弱な状況にある。また、調査の回を追う毎に食害程度が拡大傾向にあり、当初は被害レベル1-2だったが、平成30年度は、レベル3-4となって、被害は森林の内部構造破壊にまで及んでいる。尾根沿いでは上層林冠木(ブナやミズナラなど)の枯損が認められ、後継個体が見られなかった。林床に見られたスズタケは、食害により消失又は矮小化し、祖母山周辺では、スズタケの一斉開花枯死が認められ、実生も見られないなどから、元のスズタケ生育跡地は大規模な下層植生の衰退が生じている。現状のままでは将来の林相維持、森林の更新は極めて困難になると予想される。このため、保護林全域にわたる森林生態系の回復を図り、良好な形で維持保全することが喫緊の課題である。
    このため、引き続き保護林周辺のシカ捕獲による、生息密度低下を図り、下層植生等森林の植生構造回復等について早急に検討し対策を講じる必要がある。スズタケの回復等も併せて検討を進め、効果的な対策となるよう、実行可能な対策から実施していく必要がある。 

    【入林者のみなさまへおねがい】

    貴重な森林生態系を守るため、登山道以外への立入(ロッククライミング、沢登り等を含む)、山野草や昆虫類等動植物の採取・損傷(狩猟、魚釣りを含む)、ゴミ捨て、キャンプ、ペットの持ち込み等を行わないよう、みなさまのご協力をお願いします。

    9.特徴

    植物相

    植生の特徴
    祖母山・傾山・大崩山を中心とした山系は、標高1,300メートルから1,700メートルの急峻な山々が連なった深い渓谷をもつ山岳地帯である。この地域の埴生の特徴は、典型的な森林の垂直分布が見られ、尾根や谷に土地的極相をなす森林が見られることである。標高600メートルから800メートルの山麓部にはウラジロガシ-サカキ群集、アカガシ-ミヤマシキミ群集などの常緑広葉樹林がみられ、標高700メートルから1,100メートルの山腹部にはアカガシ、ウラジロガシ、ツバキ、ハイノキ、シキミなどの常緑広葉樹林とモミ、ツガなどの常緑針葉樹との組合せによる低山帯から高山帯への移行帯としてモミ-シキミ群集、ツガ-ハイノキ群集などが発達している。標高1,000メートル以上の山地帯には太平洋岸気候の冷温帯湿潤気候の極相であるブナ林が見られる。さらに、山頂一帯の稜線の岩角地にはヒメコマツが生立している。谷には、特徴的なシオジ林が見られ、山腹の岩角地にはアカマツ林が群状に発達し、土地的極相としてこの地域の植生を特徴づけている。また、この地域は、キレンゲショウマ、ウバタケニンジン、ワタナベソウ、ヤハズアジサイ、アケボノツツジなどの分布がみられる。

    動物相

    1哺乳類

    この地域には特別天然記念物であるニホンカモシカをはじめ、シカ、ニホンザル、ノウサギ、ムササビ、モモンガ、ヤマネ、テン、イノシシ、ネズミ(サイゴクジネズミ、ヒメネズミ、スミスネズミ、アカネズミ等)、ニホンユビナガコウモリなど多くの哺乳動物が生息している。この中で、ニホンカモシカは動物分布地理上の遺存種とされ、系統学上重要であるとされている。また、ヤマネは、1属1種の日本特産のものであり貴重である。

     

    2鳥類

    この地域には、森林性の鳥を中心に鳥相も個体数も豊富にみられる。尾根の周辺にはコガラ、ヒガラ、ヤマガラ、コゲラ、コマドリ、アオバト、ヒヨドリ、イカル、エナガ、シジュウカラなどが、渓谷沿いにはアカショウビン、オオルリ、キビタキ、クロツグミ、ミソサザイ、カワセミ、ルリビタキなどがみられる。そのほかには、メボソムシクイ、ゴジュウカラ、キバシリ、ヒュウガカケス、ミヤマホオジロ、ウグイスなどがみられる。この中で、ホシガラスは亜高山帯の代表鳥であり、コマドリとともに自然環境に対する要求度が高く、その指標種とされている。
     

    3両生類

    河川に生息するものとして、地史、動物相の多様性形成史の上からも重要な指標で、環境省レッドリスト1B類のソボサンショウウオ(平成27年に国内希少野生動植物種に指定され、従来のオオオダイガハラサンショウウオから分割)やブチサンショウウオ(最近(2019年1月)、ブチサンショウウオは3種に区分され、九州北東部の種は、チクシブチサンショウウオとして新種区分された。本保護林地域の生息種もこれに当たると考えられる。日本の両生類の多様性の高さを表すもの。)が生息するとされる。また、ヤマアカガエル、イモリが出現する。

     

    4昆虫、クモ類

    この地域には昆虫相も豊富である。スジボソヤマキチョウ、ウラキンシジミ、ヒメキマダラヒカゲなどが、山頂周辺には貴重種であるウラクロシジミ、フジミドリシジミ、メスアカミドリシジミ、アイノミドリシジミなどや寒地性のヒメスズメ、ギンモンカレハなどが、カミキリ類にはムネモンヤツボシカミキリ、クロホソコバネカミキリなどの珍種も生息している。祖母山にちなんだものとしてソボツチスガリという食虫性の蜂がいる。半翅類にはヨツボシカメムシ、アオクチブトカメムシなどの貴重種が、双翅類には美しいトワダオオカもみられる。グンバイトンボ、ミヤマサナエも山麓に、また、中生代のトンボの形態をとどめたムカシトンボなど稀少のトンボ種が生息している。そのほか、ツノクロツヤムシ、オオダイセマダラコガネ、ヒメキマダラヒカゲ、カタビロクサビウンカなども生息している。クモ類には、セアカヒメグモ、ヤミサラグモの一種、ブンゴホラヒメグモ、アシナガカングモなどの貴産種やヒザグモの一種、ツリガネグモ類などの稀少種がみられ、祖母山地域にはソボホラヒメグモが、本谷山にはアカオニグモが生息している。

     

    5魚類(淡水魚)

    陸封されたサケ科の天然記念物イワメやアマゴもみられる。

     

     

    お問合せ先

    計画保全部計画課
    担当者:生態系保全係
    ダイヤルイン:096-328-3612