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九州森林管理局

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     稲尾岳(いなおだけ)周辺森林生態系保護地域

    1.概要

      当保護林は、九州本土最南端の大隅半島、鹿児島県肝属郡肝付町・錦江町・南大隅町に位置しており、地形は、大隅半島の中央部を東から南走する国見岳(標高887m)甫与志岳(標高968m)、荒西岳(標高834m)、六朗館岳(標高754m)、四坂岳(標高745m)を結ぶ脊梁山地の最南部にあって、東側は急斜面で太平洋に面し、西側は比較的緩傾斜で広がりがある。当地域の中心は稲尾岳(標高930m)で、林相は、標高800m以上にはモミ、標高750m以上にはアカガシ、標高600~700mにはイスノキの群落があり、原生的な天然林となっている。また、当地域には「タカクマミツバツツジ・シロモジ」等稲尾岳を南限とする植物、一方稲尾岳を北限とする「オオコマユミ、ムッチャガラ」の南方系の植物がみられる。保存地区では、狩猟、魚釣り、山菜の採取、キャンプ等はしないように入林者へ協力要請をしている。 

     

    稲尾岳周辺_山頂 稲尾岳周辺_遠景
    稲尾岳山頂 遠景

     

    2.目的

    原生的な天然林(スダジイ・イスノキ・モミ・アカガシ等)を保存することにより、自然環境の維持、動植物の保護、遺伝資源の保存、学術研究などに役立てるとともに、これらの森林を後世に引き継ぐことにする。 

    3.所在地

    鹿児島県 肝属郡 肝付町 
    鹿児島県 肝属郡 錦江町  
    鹿児島県 肝属郡 南大隅町       


     

    4.設定年月日

    平成6年4月1日

    5.面積

     1,045.48 ha  

    6.関係森林管理署等

     大隅森林管理署

    7.現況

    林種:天然林
    林齢:150年生以上
    標高:250~930m
    地質:花崗岩
    土壌:褐色森林土
    気候帯:南海型

    8.法指定等 

     自然環境保全地域、史跡名勝天然記念物、水源かん養保安林、土砂流出防備保安林

    9.取り扱い方針

    【管理に関する事項】

    (1) 保存地区は、森林生態系の厳正な維持を図ることとし、次に掲げる行為を除き保存地区の森林に原則として人手を加えずに自然の推移にゆだねることとする。

    ア モニタリング(長期的変化の継続的観測・記録)、生物遺伝資源の利用に係る行為等、学術研究、その他公益上の事由により必要と認められる行為。
    イ 非常災害のため応急措置として行う次の行為
    (ア)山火事の消火等
    (イ)大規模な林地崩壊、地すべり等の災害の復旧措置
    ウ 標識類の設置等
    エ その他法令等の規定に基づき行うべき行為
    また、保存地区では、狩猟、魚釣り、山菜の採集、キャンプ等はしないよう入林者に協力を願う必要があることから、標識の設置やパトロール等を通じて入林者への協力要請に努める。

    (2) 保全利用地区は,保存地区の森林に外部の環境変化の影響が直接及ばないよう緩衝の役割を果たすこととする。保全利用地区の森林は、木材生産を目的とする森林施業は行わないこととし、緩衝の役割を果たすための健全で公益性の高い活力ある森林の維持・造成を図ることとする。特に,人工林については、当面、周辺の母樹の賦存状況から天然更新が可能な人工林、または、下層にぼう芽が期待できる人工林にあっては、間伐、択伐の繰り返しにより針広混交多層林に、また、母樹の賦存状況からみて天然更新が困難な人工林にあっては、複層林施業、または、長伐期施業(広葉樹植栽を含む)により活力ある人工林に誘導することとするが、最終的には、保全利用地区内の天然林と同質の林相に指向させるよう努める。

     

    【利用に関する事項】

    (1) 保存地区は、モニタリング(長期的変化の継続的観測・記録)、生物遺伝資源の利用等、学術研究その他公益上の理由により必要と認められる行為は、行うことができることとする。

    (2) 保全利用地区では、保存地区で行われる利用のほか、保全利用地区の設定趣旨に反しない範囲で森林の教育的利用、大規模な開発行為を伴わない森林レクリエーションの場としての活用を行うこととし、そのために必要な建物、道路等の施設は設置することができることとする。具体的には、施設設置については、「森林の保健機能の増進に関する特別措置法施行規則」(平成2年農林水産省令第18号)で定められる技術基準等を考慮することとする。

    10.特徴

    植 物 相

    大隅半島肝属山地の植生は、海岸部の亜熱帯から暖帯性下位、上位までが現れ、標高150m以下はソテツ、アコウ,ビロウ、ヘゴ等の亜熱帯植物も生育し、標高150m~300mでは夕ブノキ、スダジイ林が、標高300m~500mでは、イスノキ、ウラジロガシ、スダジイ林が発達しており、600mぐらいから、アカガシが大量に出現し、ヒメシヤラも出現する。稲尾岳など肝属山地の山頂付近では、イスノキ、アカガシ等は強風のため、低木状になっている。


    【稲尾岳周辺植生】

    スダジイーミミズバイ群集
    林冠を形成する樹木の胸高直径は70~100cmに達し、標高250~300mの南斜面に存在する。北側の斜面ではほとんど消失し、500~630mのより高い標高の渓流沿いに残存するのみである。標徴種または、判別種としてミミズバイ、センリョウ、ヤマビワが生育する。

    イスノキーウラジロガシ群集
    優先種はイスノキで、標徴種としてホソバタブが出現し、600~700mの標高に出現する。

    モミーシキミ群集
    優先種はモミとアカガシである。800m以上の標高の綾斜面に存在する。胸高直径も大きくて、50~100cmに達する。モミ、ツルアジサイ、トウゲシバの出現で他と区別できるが、標微種はシキミとアセビである。

    アカガシ群落
    優先種は、ア力ガシである。750m以上の高所に出現し、アカガシ、アセビ、ミヤマシキミ、イヌガヤ、ヒメシャラの存在によって区別される。通常ツバキ網に出現するタブノキ、イスノキ、ウラジロガシ、ネズミモチ、テイカカズラが見られない。

    南 限 種:タカクマミツバツツジ、シロモジ、ツルマサキ、ツクシカシワバハグマ、キクバヒヨドリ、ナガエコナスビ、キバナアキギリ、キンチャクアオイ、ナツエビネ
    北 限 種:オオコマユミ、ムッチャガラ

     

    動 物 相

    哺乳類・鳥類等は、九州本土に生息しているものとほとんど大差はありませんが、稲尾岳周辺の照葉樹林の環境は貴重で昆虫類は豊富に見られます。この中で、キリシマミドリシジミは稲尾岳周辺が南限に、フチトリアツバコガネ、ムツボシシロカミキリ、クロサビアヤカミキリは稲尾岳周辺が北限になっています。 

    お問合せ先

    計画保全部計画課
    担当者:生態系保全係
    ダイヤルイン:096-328-3612