鬼の目山(おにのめやま)生物群集保護林
1.概要
本保護林は、宮崎県の北部、鬼の目山(1,491m)の西側からだき山(標高1,420m)にかけて位置し、祖母・傾国定公園の南東部に位置している。林相は、スギ、アカマツ、ヒメコマツ、ブナ、アカシデ、ミズナラ等による針広混交林である。このうち、特に林内に生育するスギは、1985年の宮崎大学の詳細な調査により最終氷期以降に生き残った天然スギ遺存集団の可能性が高いとの報告がある。加えて、最近の遺伝子解析の結果、ウラスギ系と分かるなど、九州では屋久島以外で遺伝的多様性の高い天然スギ地域集団として極めて貴重である。また、林内にはツチビノキ等地域固有な植生が多く含まれており、この点でも学術的価値が高いとされる。林床には、ヒメシャラ、リョウブ、スズタケなどのほか、高木構成種の幼木も見られる。鬼の目山周辺の背後にそびえ、左右に大きく開けた扇子状の台地から流れる岩水は、周辺の水が集まって滝となり、花崗岩の絶壁を流れ落ちる景観は、天然広葉樹林とマッチして美しい。
鬼の目山生物群集保護林遠景
”鬼の目杉”の巨木
アケボノツツジと保護林近景
2.目的
地域固有の生物群集である、天然生スギをはじめ、アカマツ、ヒメコマツ、アカシデを保護対象種とし、針広混交林からなる自然環境とともに天然スギの遺伝子資源を森林生態系内に広範に保存することを目的とする。
3.所在地
宮崎県 延岡市 北方町
4.設定年月日
平成3年3月31日
平成30年4月1日再編
5.面積
総面積 485.06 ha
保存地区 472.72ha
保全利用地区 12.34ha
6.関係森林管理署等
宮崎北部森林管理署
7.現況
標高:800~1,500m
傾斜:急
地質:花崗岩
土壌型:BD(d)
林齢:85~200年生以上
8.法指定等
保安林(水源かん養)、祖母傾国定公園(特3)、祖母傾県立自然公園(普通)
9.取り扱い方針
保護・管理及び利用に関する事項
保護・管理及び利用に関する基本的な事項については、保護林設定管理要領(PDF : 328KB)(平成27年9月28日付け27林国経第49号)に定められた生物群集保護林の取扱い方針に従う。
さらに、平成19(20)、24、29年の保護林モニタリング調査の結果を踏まえて取り扱うこととする。
これまでの調査の結果、保存対象樹種の本数、材積の増加があり、後継個体の生育による現状維持が確認され保護林の要件は満たしているが、近年のシカ被害の拡大は顕著で、植生保護柵設置箇所以外では、殆どのプロットで、ソヨゴ、ヒメシャラ等の樹皮剥ぎや下層植生の衰退等が見られ、被害レベルは3となっている。また、スズタケ群落の開花による枯損・衰退のため、植被率が急減している(平成29年調査時点)。林内には、ツチビノキ、フクオウソウ、ササユリ等の希少種の生育が確認されており、今後シカ食害が懸念される。
以上のことから、今後の対応策としては、森林の更新や生態系への影響及び表土流亡への懸念を考慮し、さらに希少種保護の観点及びスズタケ群落等下層植生の回復方策の検討が課題である。
このため、既存植生保護柵の定期点検及び、増設の検討や単木的防護による天然更新の促進、スズタケ群落の回復、従来から行われてきたシカ個体数管理の継続、保存対象種の天然更新等の各種対策を行うため、緊急に対応が必要なものから対策を講じるものとする。
モニタリング調査実施間隔は、5年。
10.保護林設定の経緯
旧名称「鬼の目山学参」 面積 467.22ha 設定 昭和61年3月31日
平成30年4月1日、新たな保護林制度改正に伴い再編
11.保護林位置図
鬼の目山生物群集保護林全体図
お問合せ先
計画保全部計画課
担当者:生態系保全係
ダイヤルイン:096-328-3612