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九州森林管理局

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    九州中央山地生物群集保護林

    1.森林生態系、個体群の概要

      本保護林は、九州の中央部分の熊本・宮崎県境に連なる九州山脈の脊梁一帯に広がった位置にある。植生は、標高1,000m以上においてはブナを主体とする落葉広葉樹が生育し、標高1,000m以下にはウラジロガシ、コジイを主とする常緑広葉樹が生育している。さらにモミ、ツガ林がモザイク状に混生している。渓谷は、サワグルミ、シオジ、ケヤキなどの落葉広葉樹が生育している。山頂部は、雲霧に包まれることが多いため、着生植物やコケ類も多い。特徴的な植生相としては、太平洋型ブナ林がまとまって分布し、一部に湿性タイプのブナ林もみられる。また、特別天然記念物ニホンカモシカ、天然記念物ヤマネ等の希少な野生動植物が生息・生育している。地質は、堆積岩及び石灰岩が主体で、石灰岩地では他にみられない特異な植物が見られるなど生物多様性の高い地域である。

     

    九州中央山地_目丸内大臣国有林 九州中央山地_波帰国有林
    熊本森林管理署矢部事務所
    目丸内大臣国有林
    宮崎北部森林管理署
    波帰国有林

     



    九州中央山地_樅木国有林
    熊本南部森林管理署樅木国有林

     

    2.目的

      九州中央部に連なる脊梁部のブナ林主体の落葉広葉樹林が広がる多様な生態系を擁する区域で、これら地域固有の生物群集を保護・管理することにより、森林生態系の維持、野生生物の保護、遺伝資源の保護等に資することを目的とする。

    3.所在地

     熊本県 山都町
     熊本県 水上村
     熊本県 八代市泉町  
     宮崎県 五ヶ瀬町 
     宮崎県 椎葉村

    4.設定年月日

     平成6年6月29日
     平成30年4月1日再編  

    5.面積

     6,038.36 ha 

     (熊本署 1,809.90 ha、熊本南部署  2,234.94 ha、宮崎北部署  1,993.52 ha)

    6.関係森林管理署等

     熊本森林管理署、熊本南部森林管理署、 宮崎北部森林管理署  

    7.現況 

    林種:天然林
    林齢:150年生以上
    標高:1,000~1700m
    地質:古生代から白亜系・ジュラ期堆積岩、砂岩、粘板岩、チャート、石灰岩が分布
    土壌:褐色森林土
    :南海型

    8.法指定等

     九州中央山地国定公園(特保、特1、特2、特3)、保安林(水源涵養、保健)、鳥獣保護区(特別保護、普通)  

    9.取り扱い方針

     保護・管理及び利用に関する事項

      保護・管理及び利用に関する基本的な事項については、保護林設定管理要領(平成27年9月28日付け 27林国経第49号)に定められた生物群集保護林の取扱い方針に従う。(保護林管理委員会設定要領(PDF : 205KB)
      これに加え、本保護林については、これまでの保護林モニタリング調査結果を踏まえて取り扱うこととする。
      平成19(20),24,25,29年度の調査によれば、保護林を構成する五ヶ瀬川流域、球磨川流域、耳川流域のいずれについてもシカ被害レベルが3~4に達したプロットが約9割に達しており、急激なシカ被害の拡大傾向が顕著である。
      具体的には、スズタケ-ブナ群団を構成するブナ確認本数に変化はないが、大径木を中心に枯損や後継個体の欠落に加え、スズタケ等林床植生の欠落、矮小化も見られる。また、このような森林内部構造の破壊による影響が、自生する希少野生生物等の減少や急激な植生の変化等をもたらし生態系の変化や生物多様性の劣化に至ることが懸念される。現状の林相が極相林であり保護林要件を満たしているとしても、森林生態系の現状維持に影響が出ることが危惧される。
      このため、周辺人工林も含めて従来から行われてきたシカの個体数管理を継続、強化するとともに、希少種保護のための既設植生保護柵の維持・管理及び拡充、森林の回復・復元に向けた取組、地元関係機関との連携も視野に緊急に実行可能なシカ対策に取り組みつつ、総合的なシカ被害対策を検討する。
      モニタリング実施間隔  5年

    10.特徴

    植 物 相

    九州中央山地の植生は、標高1,000m以上では当該山地の代表的な植生であるブナを主とする落葉広葉樹林が、標高1,000m以下にはウラジロガシ、コジイを主とする常緑広葉樹林が中心で、急傾斜地を中心にモミ、ツガ林がモザイク状に混生している。また、渓谷に治った場所にはサワグルミ、シオジ、ケヤキなどの落葉広葉樹が優占する渓谷林が見られる。さらに、襲速紀要素、石灰岩地特有の植物等、特異で貴重な植物相となっている。

      (ア)ブナ林
    九州中央山地には,ブナ林の南限地域に残存するものとしては最大規模の太平洋型ブナ林(スズタケ-ブナ群落)が存在し,さらに湿性タイプのブナ林(オオマルバノテンニンソウ-ブナ群落)としては日本最大規模のものが山頂域に発達しており、低木層、草本層と合わせて特徴的な植生を形成している。また、雲霧に包まれることが多いため、着生植物、コケ類も多く生育している。

    (イ)襲速紀(ソハヤキ)要素
    この地域は、過去の地殻変動において海中に沈まず陸地として残った地帯の一つであり、日本固有種を含む「襲速紀要素」と呼ばれる独特の進化をした植物(ハガクレツリフネ、ツクシシャクナゲ等)が数多く存在する。

    (ウ)好石灰岩植物
    この一体は、中央構造線上にあり,石灰岩地特有の植物(イワギク、ヤハズハハコ等)が数多く存在する。

    (エ)希少植物
    アズマイチゲ,カタクリ、イワギク等、分布地域が限られているもの、個体数が極めて少ないもの等が数多く存在する。

     

    動 物 相

    【哺乳類】
    特別天然記念物のニホンカモシ力、天然記念物のヤマネのほか、アナグマ、モモンガ、キュウシュウムササビ、ニホンコキクガシラコウモリ、ニホンザル、キュウシュウノウサギ、キュウシュウジカ、ホンドキツネ、イノシシ、ホンドテン、ホンドタヌキ等の多くの哺乳動物が生息している。

    【鳥類】
    分布上、あるいは生態的に貴重なものとして、クマタ力、ミゾゴイ、ホシカラス等が生息するほか、亜高山性のコガラ、ヒガラ、森林性のツツドリ、ヤマドリ、アカゲラ、コマドリ、アカシヨウビン、ブッポウソウ、渓谷を好むオオルリ、力ワガラス、ヤマセミ等の多くの鳥類が生息している。

    【両生類,爬虫類】
    国指定特別天然記念物のオオサンショウウオ、熊本県指定天然記念物のべツコウサンシヨウウオの外

    爬虫類では、クサガメ、イシガメ、スッポン、ヤモリ、トカゲ、カナヘビ、シマヘビ、ジムグリ、アオダイショウ、シロマダラ、ヒバ力リ、マムシ等

    両生類では、ブチサンシヨウウオ、イモリ、ヒキガエル、アマガエル、タゴガエル、ニホンアカガエル、ヤマアカガエル、トノサマガエル、ウシガエル、ツチガエル、ヌマガエル、シュレーゲルアオガエル、カジカガエル等、多くの両生類,爬虫類が生息している。

    【昆虫類】
    蝶類は、フジミドリシジミ、アイノミドリシジミ、ウラキンシジミ、オナガシジミ、ヒサマツミドリシジミ、ルーミスシジミ、アカシジミ、ウラゴマダラシジミ、キバネセセリ、ヒメキマダラヒカゲ、ミスジチヨウ、シータテハ、ミヤマカラスアゲハ、オオムラサキ等

    蛾類は、ヤガ科、シャクガ科、シャチホコガ科、ハマキガ科、メイガ科、ヒトリ科、ドクガ科、カレハガ科、スズメガ科、トガリバ科、キバガ科等、極めて豊富である。

    甲虫類は、イガブチヒゲハナカミキリ、クロキモンカミキリ、ツノクロツヤムシ、ニセコルリクワガタ、ドロハマキチヨッキリ、キベリカタビロハナカミキリ、ソボトゲヒサゴゴミムシダマシ、オニクワガタ、キュウシュウオオクボカミキリ、ヘリグロホソハナカミキリ、セダカコブヤハズカミキリ、ジュウシチホシハナムグリ、フタオビミドリトラカミキリ、ケブトハナカミキリ等が見られる。

    11.統合等の履歴


      統合対象となった旧保護林の経緯

    国見岳風致保護林S 44.3.31
    五家荘風致保護林S 46.3.31
    御池学術参考保護林 S 46.4.1
    池上風致保護林    S 52.3.31

    上記旧保護林の統合を経て、平成6年6月生物群集保護林として設定
    平成30年4月1日、新たな保護林制度改正に伴い再編

    12.九州中央山地生物群集保護林位置図

    九州中央山地生物群集保護林全体図
    九州中央山地生物群集保護林全体図







    お問合せ先

    計画保全部計画課
    担当者:生態系保全係
    ダイヤルイン:096-328-3612