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九州森林管理局

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     男女(だんじょ)群島生物群集保護林

    1.概要

      当保護林は、福江島の南西70kmの位置にあり、東シナ海に浮かぶ無人島である。北から男島、クロキ島、寄島(中ノ島)、ハナグリ島、女島の主に5島からなる。海岸線は柱状、平行、斜行の節理からなる急峻な断崖絶壁が囲み人々を寄せ付けない。群島の歴史は古く、遣唐使船等海外貿易の拠点であったことや江戸期から、優良な漁場等として利用され、明治期には、珊瑚漁で賑わったほか、第2次大戦中の軍の利用記録もあり、男島、女島それぞれに人為的影響の痕跡がある。現在でも磯釣りの人気スポットとなっており、近年まで灯台職員の常駐もあった。女島南部では、これらの人為的影響もあって、モクタチバナ等伐採後に成立した二次林的林相を呈し、急速に復元する遷移途上にある。女島北部は、人為の影響は比較的少なく、男島は、ほぼ原生的植生が保たれ、森林構成種の更新も行われているとされる。
      本保護林での学術調査の歴史は古く様々な機関により行われ、昭和10年度の調査もある。昭和42年頃から最近まで、主に生物学術調査が頻繁に行われ、最近では、九州森林管理局により平成21、22、30年度にモニタリング調査を行っている。モニタリング調査プロットは面積が大きい女島と男島に計7箇所が設定されている。
      多様な地形とそれに伴う日照、風衝、水分条件による多様な植生があり、平成22年度に確認された種は、175種ある。温暖な対馬海流の影響で、南方系植物を含む暖帯性広葉樹林が混生する。
      また、男女群島は、固有の自然状態が評価され、全島が史跡名勝天然記念物(天然保護区域)に指定されている(1969年8月)。 

    男女群島植物群落保護林_遠景

    男女群島生物群集保護林  遠景

    男女群島植物群落保護林_近景

    近景

    2.目的

      概要に記載にように、地域固有の森林生態系からなる生物群集を保護・管理することにより、暖帯性広葉樹林など森林生態系の自然環境の維持、野生生物の保護、遺伝資源の保護、管理技術の発展、学術研究等に資することを目的とする。

    3.所在地

    長崎県 五島市

    4.設定年月日等

    旧男女群島学参  昭和49年4月1日
    平成5年3月31日
    「保護林制度の改正について」(平成27年9月28日付け27林国経第49号)に伴い、
    平成30年4月1日再編(旧男女群島植物群落保護林)

    5.面積

    414.63 ha

    6.関係森林管理署等

    長崎森林管理署

    7.現況

    標高:海岸域から、最高標高281m(女島)

    傾斜:急

    地質:島全体が石英・角閃石含有複輝石安山岩質溶結凝灰岩、通称男女溶結凝灰岩からなる。

    土壌型:BC

    林齢:145年生以上

    8.法指定等

      魚付保安林、航行目標保安林、鳥獣保護区(特)、史跡名勝天然記念物       

     9.取り扱い方針

      保護・管理及び利用に関する基本的な事項については、保護林設定管理要領(PDF : 328KB)(平成27年9月28日付け 27林国経第49号)に定められた生物群集保護林の取扱い方針に従う。また、平成22、30年度の保護林モニタリング調査結果を踏まえて取り扱うこととする。
      本保護林では、シカの生息は確認されていないが、外来種のクマネズミ(両島)、ノネコ(女島)が平成22、30年度の調査時に確認されている。これまでの調査から、本保護林においては、在来種として爬虫類の固有亜種ダンジョヒバカリ、ニシヤモリ(女島)などが生息し、希少種アカヒゲやカラスバトの生息や海鳥類のオオミズナギドリなどの有数な繁殖地であることから、これら在来種に与える外来種の影響(捕食による個体数減少)も今後のモニタリングの際には留意する必要がある。
      また、保護林全体として、台風等気象害(塩害、風害)による保護対象種の枝葉の枯れ、枝折れが確認されるが、いずれも島嶼にある本保護林特有の自然攪乱と考えられ、特段の問題はないと思料する。植被率、種構成に大きな変化は認められず、現状は維持されている。
      絶海の孤島であることから、今後も外来種の影響、気象害の発生や群島にない病害虫の発生などにより、自然植生や保護林内の生態系に大きな変化をもたらす可能性があることに加え、過去には昆虫採集や違法伐採が確認されており、学術研究以外の上陸等人為的要因の影響も含めて考慮する必要がある。このため、モニタリング調査を継続しつつ、環境省、関係地元自治体等が把握する情報の共有、保全のための連携を図ることも視野に入れ、専門家意見を聴きながら、必要な対応策を講じていくことが重要である。
       モニタリング実施間隔  5年

    10.植生・動物等

      海岸急斜面にマルバニッケイが群落をなし、島内常緑広葉樹林は、モクタチバナ、タブノキ、ヤブニッケイ、ショウベンノキ等で構成され、自然植生としてクロマツ林やスダジイ林がなく特定の分類群を欠き、原始性が保たれた島嶼型植生であり、アコウ、オオタニワタリ、クワズイモ等の亜熱帯系植物も自生している。さらに、島嶼偏在植物とされる植物5種の内、ハカマカズラを除くキノクニスゲ、サツマサンキライ、ビロウ、ミヤコジマツヅラフジの4種が生育していることが特徴とされる。

      生息する動物は、鳥類で6科32種が確認され、希少種アカヒゲやウチヤマセンニュウ、カラスバトなどが生息するほか、海鳥オオミズナギドリの繁殖地となるなど、渡り鳥の貴重な中継地となっていると推定される。爬虫類では、ニシヤモリ、ニホントカゲ、固有亜種ダンジョヒバカリ(平成30年度調査未確認)、シロマダラ(1987年記録)等が生息するが、哺乳類はアカネズミのほか、外来種のクマネズミ、ノネコが確認されている。昆虫類では、生息種数は多くないがオオフタホシテントウなど南方系昆虫が多く、固有亜種など希少種も多いとされる。

    11.保護林位置図

      
    男女群島位置図





    お問合せ先

    計画保全部計画課
    担当者:生態系保全係
    ダイヤルイン:096-328-3612