柏山(かしわやま)アカマツ遺伝資源希少個体群保護林
1.概要
当保護林(旧遺伝資源保存林)は、大分県南部、九州中央山地の傾山の北東部の大規模林道「宇目小国線」沿いの柏山(標高681m)の標高400m付近に位置している。林内には、樹齢100年生前後、胸高直径1m、樹高30mを超える「日向アカマツ」といわれるアカマツが生育している。
日向アカマツは、宮崎県北部から大分県南部にわたる地域の優良材で、主として国有林内に自生し、昭和初期から30年代にかけて多く生産され、京阪神地方で好評を得ていた。アカマツの天然林の遺伝的系統は、東北地域から西南地域にかけて多様性が増加する傾向があるとされ、大きくは、東北日本、中部日本、西南日本の3地域に区分され、柏山も西南日本の天然林分布域の一つである。
しかし、近年マツくい虫の被害が全国的に増加し、その遺伝的多様性の減少が危惧されており、本保護林においても継続して被害が発生している。生立木本数の減少が顕著であり、保護林としての維持存続、遺伝子の保全のためにも早急な対策が必要となっている。
林床には、チゴユリ、イワカガミ、ナガバモミジイチゴ等の草本類、ヤブムラサキ、シロダモ、ヤブニッケイ等の低木類も見られる。
柏山アカマツ遺伝資源希少個体群保護林 遠景
アカマツの巨木
近景
2.目的
保存対象種のアカマツの保存により、アカマツの遺伝的多様性保全を目的とする。
3.所在地
大分県 佐伯市 宇目町
柏山国有林 1026り 林小班
4.設定年月日
昭和35年3月31日、旧名称「柏山学術参考保護林」設定
平成3年3月31日、旧名称「柏山林木遺伝資源保存林」設定
平成30年4月1日 新保護林制度により、再編
5.面積
32.95 ha
6.関係森林管理署等
大分森林管理署
7.現況
標高:400m
傾斜:急
地質:中粘板岩
土壌:BD(d)
林齢:118年生(平成26年3月調査簿)
8.法指定等
保安林(水源かん養)、特別母樹林
9.取り扱い方針
保護・管理及び利用に関する基本的な事項については、保護林設定管理要領(PDF : 328KB)(平成27年9月28日付け27林国経第49号)に定められた希少個体群保護林の取扱い方針に従う。また、過年度実施のモニタリング調査(平成20、25、30年度)等過去の調査結果を踏まえて、取り扱うこととする。
平成2年には、すでに保護対象木であるアカマツの材線虫病の調査が行われている。また、平成20年度調査においては、その被害程度が激しくなり、保護林全体でアカマツの大経木を含め枯損・衰退が著しい結果であった。この時の評価委員会の意見を受け、保護林保全のため、翌平成21年度に緊急対策調査が行われ、その結果、その時点で健全なアカマツは5%になったと報告された。
松枯れ後は、落葉広葉樹林または、常緑広葉樹林に遷移が移行する傾向が見られる。直近の平成31年に現地確認した結果、健全個体はまだ多数現存していることを確認した。このことから、アカマツ更新は、裸地部に限定されるため、現状では天然更新の可能性は低いが、今後は、樹幹注入による残存健全個体の保全(守るべきエリアを設定し健全個体への樹幹注入を実施)を行いつつ、かつての潜在植生への回復を目指すこととする。
このため、長期的視点に立ってアカマツと常緑広葉樹との混交林への成林を目指し、樹幹注入処理周辺林分については自然の推移に任せ遷移過程を見守ることとし(守るべきエリアの緩衝帯として設置)、松枯れ被害状況を見極めながら残存母樹によるアカマツ更新サイトを設定し、積極的更新を図る取組を進めるとの二つの選択肢を持ち、併せて林木育種センター等とも連携し林野庁ジーンバンク事業による域外保存も視野に検討していくこととする。
なお、本保護林におけるシカ害は、平成20年度では見られなかったが、平成25年度調査時点ではシカ被害がレベル1となり、平成30年度には下層植生の減少、忌避植物の増加が見られるレベル3となった。このため、常緑樹林等への遷移移行や森林更新への影響が懸念される。アカマツの天然更新への影響とともに、引き続き森林の遷移状況を注視しながら、本保護林の保全、回復に向け必要な対策を講じていくこととする。
10.保護林位置図
お問合せ先
計画保全部計画課
担当者:生態系保全係
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