犬ヶ岳(いぬがだけ)ブナ等遺伝資源希少個体群保護林
1.概要
当保護林は、福岡県豊前市にあり、九州脊梁山地北端部に位置し、温帯上部の植生を有している。以前は、ブナ、ミズナラ、イヌシデを保存目的とした遺伝資源保存林であったが、平成23年度に犬ヶ岳風景林の一部を統合して区域を拡張した。山地は筑紫溶岩と呼ばれる火山性輝石安山岩からなる。
植生は、900m以上がブナ林となり尾根筋を中心にブナースズタケ群集が成立する。ブナ帯の下にシデ林があり、尾根筋はコバノミツバツツジを伴ってアカマツが成立し、一部にシデを混生する。犬ヶ岳山頂部周辺にはブナ等、尾根筋にミズナラ等、谷筋にはシオジ等が、それぞれ優占種として群立し、中高木としてイタヤカエデ等がある。灌木としてはウスゲクロモジ等があり、林床にはクマザサの密生するところが多い。
犬ヶ岳を特徴付ける貴重な植物として、クロフネサイシン、クロクモソウ、ユキザサ、フタバアオイ、イワオモダカ、コケイランなどが挙げあられている。周辺に確認される動物は、鳥類は、留鳥としてヤマガラ、シジュウカラ、エナガ、クマタカ等、夏鳥としては、オオルリ、クロツグミ、コマドリ、サシバ等、冬鳥として、ルリビタキ、ミヤマホオジロ、イスカ、キクイタダキ等が確認されている。哺乳類は、アブラコウモリ、ニホンザル、ノウサギ、ムササビ、カヤネズミ、タヌキ、キツネ、テン、イタチ、イノシシ、ニホンジカ等15種が確認されている。
また、犬ヶ岳山頂から東方に連なる尾根を中心に数kmはツクシシャクナゲ群落があり、「犬ヶ岳ツクシシャクナゲ自生地」は国の天然記念物に指定されている。5月のツクシシャクナゲ開花シーズンには多くの登山者で賑わいをみせている。さらに、犬ヶ岳周辺の「犬ヶ岳自然林」は環境省で定める特定植物群落に指定されている。
犬ヶ岳ブナ等遺伝資源希少個体群保護林 遠景
ブナの巨木
遠景 2
2.目的
ブナ、ミズナラ、イヌシデ(135年生)の保存
3.所在地
福岡県 豊前市
犬ヶ岳国有林 1124ほ、へ、と、1125た、よ、1126ぬ、る、か 林小班
4.設定年月日
平成2年3月31日「旧犬ヶ岳林木遺伝資源保存林」
平成24年3月27日変更(5.面積、参照)
平成30年4月1日 新保護林制度により再編
5.面積
62.60 ha 平成23年度 19.08ha拡張
6.関係森林管理署等
福岡森林管理署
7.現況
標高:800~1,124m
傾斜:中~急
地質:安山岩
土壌:dC・BD(d)
林齢:146年生以上
8.法指定等
保安林(水源かん養)、耶馬日田英彦山国定公園(特2)、史跡名勝天然記念物、鳥獣保護区(普通)
9.取り扱い方針
保護・管理及び利用に関する基本的な事項については、保護林設定管理要領(平成27年9月28日付け27林国経第49号)に定められた希少個体群保護林の取扱い方針に従う。また、平成22、30年度の保護林モニタリング調査を踏まえて、取り扱うこととする。
本保護林は、以前からシカ被害が確認されており、2プロットは、下層植生が忌避植物以外ほとんど生育しておらず、シカ被害レベルはいずれもレベル3の森林の内部構造が破壊という段階にある。平成30年度調査でも剥皮害や角研ぎが見られ、被害は進行している。低木層以下の林相の健全性を欠く危機的状況にあると言える。高木層のブナに先枯れが見られ、高木層の欠如に繋がるおそれがある。さらに、低木層の立木数が少なく林内見通しが良く、草本層の植被率は極めて低く貧弱である。実生の食害により天然更新が阻害されている可能性があり、森林更新への影響が懸念される。
また、シカの忌避植物が増え、種多様性が失われている。したがって、現状の森林植生は緊急な対策が必要な状況と言える。以上から、今後もモニタリング調査を継続し、森林の植生構造の回復、保護対象木本種等の天然更新の促進等を対策目標として、植生保護柵の設置、早急なシカ個体数管理の実施などその効果を勘案しながら、可能なものから取り組みを進めることとする。
モニタリング調査実施間隔 5年
10.保護林位置図
お問合せ先
計画保全部計画課
担当者:生態系保全係
ダイヤルイン:096-328-3612