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近畿中国森林管理局

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    檜皮採取試験

    檜皮生産の状況

    檜皮葺の建造物は、国指定重要文化財だけでも約700棟あり、これらを35年周期で葺き替えるとすると、年間約210t、立木換算すると年間ヒノキ約3万5千本の檜皮が必要になると言われています。
    しかしながら、檜皮生産は、伝統的な技法で檜皮を採取する原皮師(もとかわし)と呼ばれる技術者が減少していること、檜皮に適した樹齢70~80年以上のヒノキの立木の減少していること、檜皮の採取が生立木の成長や材質に悪影響を及ぼすのではないかとの懸念から、採取に協力する森林所有者の方が減少していることから、伝統建造物の維持に必要な檜皮材の安定供給体制の維持が危ぶまれる状況にあります。 

    <近畿中国森林管理局の貢献>
    近畿中国森林管理局では、平成13年度に、不足している檜皮の量的確保及び安定供給に資することを目的として、80年生以上のヒノキ人工林を対象に「檜皮採取対象林」を設定するとともに、文部科学大臣が認定する檜皮葺の技術保存団体である(公社)全国社寺等屋根工事技術保存会と檜皮の販売に関する協定を締結し、計画的な檜皮の供給を行っています。
    これまでに、京都御所、伊勢神宮、出雲大社、春日大社、厳島神社、清水寺等の多くの社寺仏閣等の檜皮葺き資材として活用されています。また、全国社寺等屋根工事技術保存会が行う原皮師の研修へのフィールドの提供を行っています。
    これらに加えて、(国研)森林総合研究所関西支所及び京都大学徳山試験地との共同試験として、平成12年度~令和5年度までの予定で実施しているのが、檜皮の採取による生立木への影響を調べる「檜皮採取試験」です。

    H29.10_檜皮葺き替え工事中(H32年3月完了予定)檜皮葺き替え工事中の清水寺本堂(H29.10撮影) 檜皮採取写真

    檜皮採取の様子

    檜皮採取試験

    調査の目的

    檜皮に関する情報の収集や剥皮による材木への影響等について、気候差のある内陸部と瀬戸内部を比較調査します。



    調査の方法



    2試験地位置図
    <2試験地位置図>

    ◎鞍馬山国有林(京都市左京区)と城山国有林(山口県岩国市)の約100年生の
    ヒノキ人工林に試験地を設定。

    試験地内に、檜皮採取試験木と対照木を設定。


    平成14年度に、1回目の剥皮を実施※。


    平成23年度(鞍馬山)と平成24年度(城山国有林)に、2回目の剥皮を実施。

    ※(公社)全国社寺等屋根工事技術保存会(文部科学大臣認定「選定保存技術保存
            団体」)が伝統的な技法・道具で実施。




    これまでの調査結果

    これまでのところ、鞍馬山国有林(内陸部)、城山国有林(瀬戸内部)ともに、剥皮による樹勢や肥大成長への悪影響は見られません。具体的な調査結果は、次のとおりです。



    1:樹幹目視調査結果
    樹勢については、いずれも良好であり、檜皮採取木と対象木との間で、特段の差はありません。



    2:胸高直径調査結果
    剥皮後5年間の胸高直径成長量(樹皮を含む)について、城山国有林の1回目の剥皮後5年間では、試験木の成長量が対照木の成長量より大きい(平均値に有意差有り)という結果でした。
    また、2回目の剥皮後5年間では、鞍馬山国有林・城山国有林ともに、試験木と対照木の平均値に有意差はありませんでした。
    ★胸高直径調査結果グラフ拡大図(PDF : 206KB)

    成長錐調査結果



    3:成長錐調査結果
    成長錐により1回目の檜皮採取前後10年間の年輪を含むサンプルを採取し調査したところ、年輪幅について、剥皮の前後で明瞭な変化は見られないことから、肥大成長への顕著な影響は認められません。
    ★成長錐調査結果グラフ拡大図(PDF : 185KB)
    成長錐調査  



    4:樹幹撮影結果
    毎年度定期的に、樹幹の撮影を行ったところ、樹皮の色調は、剥皮後徐々に回復していました。

    <鞍馬山>

    1 矢印 2 矢印 3 矢印 4  











    <城山>

    5 矢印 6  矢印  7  矢印 8  














    5:色度調査結果
    毎年定期的に、分光測色計で樹皮の色度を測定したところ、1回目の剥皮から約5年後の調査で、試験木と対照木との色調の差がほとんど無くなりました。
    ★色度調査結果グラフ拡大図(PDF : 158KB)
    Lab表色系図上の樹皮色の経年変化

    丸が平成20年(平成19年度)の測定値(○:剥皮木、●:対照木)。実線は、剥皮木の過去の軌跡。

    剥皮木の樹皮色は、実線(過去の軌跡)と○で示したように、平成19年度も対照木(無剥皮、●で示す)の色調にさらに接近し、両処理の樹皮色の差は、ほとんど無くなっている(ほぼ回復しつつある)。








    お問合せ先

    技術普及課

    担当者:企画官(技術開発・普及)
    ダイヤルイン:050-3160-6700

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