野生鳥獣等による森林被害対策
野生鳥獣による森林被害は、森林生態系に大きな影響を及ぼす。特にシカは、植栽木を食害するだけでなく、採食や踏付けによる下層植生の衰退や希少な植物の消失を引き起こすなど、生物多様性を始めとする森林の多面的機能への影響が大きいです。
このため、静岡森林管理署管内の国有林ではシカ等の侵入を防ぐ柵の設置や個体数管理(捕獲)を県や市町、関係団体等と連携して推進しています。
ニホンジカの捕獲
有害鳥獣捕獲委託事業を富士山国有林で実施しております。
センサーカメラを国有林内に設置し、忍び猟やくくり罠の方法で捕獲を行っております。
また、有害鳥獣捕獲委託事業を行わない期間等において、富士山国有林内の造林地周辺で職員実行によるくくり罠を使った捕獲を行っております。
シカをわな設置予定箇所付近に誘引するようにヘイキューブを設置し、小林式などの方法でわなを設置してその効果を確認します。 くくり罠
捕獲個体残渣減容化処理容器の設置
山中で捕獲しジビエ利用等されない個体については、捕獲者自らが搬出して焼却施設に持ち込むか、その場で穴を掘り埋設処理する必要があります。
これらが捕獲を実施する上での大きな負担となっており、省力化・効率化に向けた取組が喫緊の課題となっています。
こうした状況を踏まえて、近畿中国森林管理局和歌山森林管理署では、埋設処理の効率化に向け、林道脇のスペースに大型排水管(直径1m、⾧さ4m)を縦置きで埋設し、その中に捕獲個体と発酵促進剤(ぼかし剤)を投入し、自然分解により減容化してから残渣を埋設する実証試験に取り組んでいました。
静岡森林管理署においても、同様の課題を抱えていたことから、令和6年度に富士山国有林に「捕獲個体残渣減溶化処理容器」を設置しました。
林道工事等で使用する導水管(直径1m、⾧さ4m)を使用して設置しました。設置費用は約70万円であり、とても安価に設置することができます。従来の埋設処理と違い、蓋を設置していることから従来の埋設処理と違い、クマやイノシシなどに掘り返されることがないという利点もあります。
このような取組を地元市町・関係者を対象にした現地検討会で紹介したところ、予算化に向けた動き、他県から問合せなどがありました。また、静岡県の管理捕獲事業において猟友会・市町が、当署が設置した「捕獲個体残渣減溶化処理容器」を利用して処理できるようにするための協定締結を検討しているところです。
ニホンジカ被害に対する取組み
造林事業で植付を行う際に、ニホンジカ等からの食害を防止するため、金属柵、硬質ステンレス入りネット柵、単木保護等による防除対策を行っています。
また、シカが低密度化してきた区域での柵外植付の検証も行っており、当該箇所では、食害の発生しやすい冬季に入る前に、職員実行で忌避剤散布による防除対策を行っています。
(新植区域の周囲に防護柵を設置)
(植え付けた苗木を1本づつ保護する単木保護)
ノネズミ被害に対する取組み
上井出地区の富士山国有林内の新植地において、剥皮により苗木が枯死する被害が発生しています。
ノネズミによる被害と判明したことから、予察を実施し、生息状況の把握を行うとともに、殺鼠剤(リン化亜鉛1%)散布による対策を実施しています。
(予察ワナの設置)
(殺鼠剤(小袋入り5g))
ノウサギ被害に対する取組み
新植地において、シカ柵の網目のすき間からノウサギが侵入し植栽した苗木が食べられるといった被害が顕在化していることから、ノウサギ対策としてノウサギ用防護ネットを設置しています。
また、センサーカメラにより生息状況を確認し、職員実行によるノウサギ捕獲を試行的に実施しています。
(ノウサギによる植栽木被害)
(センサーカメラに写ったノウサギ)
(箱ワナの設置)