下越森林管理署村上支署長が語る1 下越森林管理署村上支署の紹介下越森林管理署村上支署(旧村上営林署)が管轄する地域は、新潟県下越森林計画区北部の村上市、関川村、粟島浦村(国有林は不在)の1市2村を管轄しています。 管理する国有林は、約66千ヘクタールで下越森林計画区の国有林の約45パーセントとなっています。 当支署のある村上市は、「村上頼勝」が1598年に村上城主となり、翌年には臥牛山に山城を築いたと言われており、その後城下町として、また、村上藩として明治初期に新潟県に合併するまで独立した自治体として歴史を刻んできています。 一方、村上支署は、明治23年に現在の村上市の区域を管轄していた長野大林区署村上派出所と関川村の区域を管轄していた関谷小林区署が合併し、村上小林区署が設置されたのがスタートとなっています。 2 森の恵み(三面のサケと三面集落)
三面川は、サケが回帰する川として全国的にも有名で、古くから鮭漁が行われていたとされています。サケは初秋から初冬に遡上・産卵し、翌春の雪解け水が出る時期に孵化した稚魚が海に戻っていきます。サケが生まれた川に間違わず回帰できる理由として、生まれた川のにおいでわかるという「臭覚回帰説」や、太陽の位置などを目安に帰る「太陽コンパス説」など諸説ありますが、川のにおいが回帰の一つの要因だとすれば、川のにおいを構成する山の土壌や植生もサケが回帰する要因の一つと言えます。 村上では、約1ヶ月程度、乾燥・熟成させた塩引き鮭を食します。また、夏期近くまで乾燥・熟成させたものは堅くなり、酒に浸して食べることから「鮭の酒びたし」として、酒のつまみ等で食されています。 三面の山中には、かつて歩いて行くしかなかった三面集落(奥三面ダム建設に伴い昭和60年に集団移転)がありました。狩猟や山菜採取を中心に、森林と密着した生活スタイルが長きに渡り継承されてきました。移転に伴い行われた調査では、縄文時代を中心とした遺跡群が発掘されており、古代の人々も豊かな自然とともに山中での生活を営んでいたものと思われ、縄文の里・朝日奥三面歴史交流館で昔の様子を偲ぶことができます。 3 管内国有林の特徴当支署の国有林は、三面川(二級河川)流域、荒川(一級河川)流域、そして、海岸林の三つに分けられます。 三面川の上流域には管内国有林の約5割が位置します。三面川支流の三沢川沿いにスギ人工林が一部造成されていますが、三面川本流及び支流の猿田川の流域は、ブナ、ミズナラを中心とした天然林が広がっています。 この流域は、昭和56年に朝日スーパー林道(現:県道鶴岡村上線)が開通するまでは、三面集落の人を除けばほとんど人が入ることのできない地域であったため、原生的な森林の姿を残しています。野生動物の種類・個体数が豊富で、生物遺伝資源、森林生態系として重要なため、後世に継承することを目的に、朝日山地森林生態系保護地域が東北森林管理局(庄内、山形、置賜森林管理署)と関東森林管理局(下越森林管理署村上支署)にまたがる保護林として平成14年度に設定されています。 また、支流の猿田川右岸の石黒山には、古くから地域の人たちに親しまれた原生的なブナ林の保護を目的として、平成5年に「村上市朝日地区郷土の森」が設定され、平成12年には「森・川・海はひとつ」を合い言葉に、魚の森づくり活動地として、社会貢献の森「サケの森」が設定されています。
当支署管内では、昭和54年に初めて松食い虫被害が確認されました。このため、昭和61年度から海岸松林の保全と育成を目的に、薬剤による防除対策と、植樹による松林再生に取り組んでいます。瀬波地区では、地域の子どもたちや地域住民による松林再生活動も継続的に実施されており、松林の復活に期待が寄せられています。
4 森林共同施業団地の取組当支署の森林の大部分は、天然林となっていますが、平野部に近い丘陵部には、民有林も含め、スギを中心とした人工林が造成されています。 国有林では、9齢級の林分をピークに6~13齢級の森林が大部分を占め、間伐、主伐、再造林する循環型の森林施業に取り組む時期を迎えており、これら丘陵部に造成された人工林を管理する上で最も重要となるのが路網の確保です。 平成25年2月、村上市、森林管理者及び当支署の三者で村上市笹平地区森林整備推進協定を締結して共同施業団地を設定し、施業の集約化や路網の整備等を共同で進めることとしました。 民・国それぞれが開設する林業専用道を連結させて相互利用することにより、開設コストの削減、経路選択の多様化等による森林施業の効率化につながっています。
5 結びに2016年から国民の祝日として、「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」ことを趣旨とする「山の日」が施行されました。 山(森林)には、水源涵養、山地災害防止、快適環境形成、保険・レクリエーション、文化、生物多様性、木材生産等の機能があります。山に親しむという面では、国有林においても森林浴、登山、最近ではトレイルランニングなど、老若男女を問わず多くの方々に親しんでいただいています。 一方、山(森林)の木々は、以前は人間と身近な関係にあり、特に里に近い山の木々は、家庭用燃料として使われていましたが、薪や炭は、電気・ガス・石油に切り替わり、農業用肥料としての落ち葉の採取も行われなくなりました。人の手でできあがってきた里山は使われなくなり、自然林に近い状態になりつつあります。木々も生長して里山から山へ遷移し、以前より山と人々の生活圏が近くなってきていると言えるのかもしれません。「田畑が日陰になってしまった」、「枯れ木が倒れてきた」などのお言葉をいただくこともあります。 最近、各地で野生動物による農業被害が問題となっていますが、これも里山が整備されず山と生活圏が近づいてしまったことが一因と言われることがあります。 現在、森林資源の充実等を背景に林業を成長産業へ、そして地方再生へつなげようと動き出しています。当支署が管轄する新潟県北部は、新潟県内で最も林業が盛んな地域で、産出されるスギ材は建築用資材として県内を中心に広く流通するとともに、バイオマス発電用の主要な木材供給地としても大きな期待が寄せられています。 現在計画されている村上市と関川村の丘陵地を南北に縦断する「森林基幹道岩船東部線」は、森林施業の効率化、高性能林業機械の利用効率の向上、山間集落の行き止まり解消等が期待され、国有林においても基幹となる路線ができることにより、効率的な路網開設や搬出コストの削減が図られるものと期待しています。 低コストな森林整備が可能となれば、今まで間伐したまま森林内に存置されていた未利用低質材や、利用されなくなった里山の資源もバイオマス発電用資材、キノコ用原木やオガ粉用資材等として利用することが可能となります。当支署としても、地域の関係者の皆さんの理解と協力を得ながら、里山の森林整備や木材の安定供給に努め、地域の林業・木材産業の発展に貢献してまいりたいと考えています。 |
お問合せ先
総務企画部 総務課
担当者:広報
ダイヤルイン:027-210-1158