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合法伐採木材等に関する情報:ベトナム

ベトナム

(2022年4月1日:全面更新)

注 国別情報については、平成29年度、令和元年度、令和3年度に実施した調査の成果等を参考情報として掲載しています。

注 合法性の確認に活用できる書類の事例はこちら

木材等の生産及び流通の状況

(1)森林と木材生産

ベトナムの国土面積約3,300万haのうち森林面積は1460万haで、天然林が1030万ha(70.5%)、人工林が430万ha(29.5%)です。森林は3タイプに区分されています。

  • 生産林(780万ha、全体の53.4%):木材などの生産目的
  • 保護林(465万ha、31.8%):水源かん養等のために指定
  • 特別利用林(216万ha、14.8%):主に自然保護や生物多様性保護を目的とした国立公園や保護区

2020年のベトナムの生産林に分類される木材の植林面積は約354万haで、そのうちアカシアが195万ha(56%)、ユーカリが13万ha(4%)、マツが24万ha(7%)である。2020年には、植林地からの木材生産は2050万m3(主にアカシア)でした。

(2)輸入

2020年のベトナムの木材輸入量は、製材が254万m3、丸太が217万m3、合計579万m3金額ベースで14億米ドルでした。そのうち6、7割は温帯地域、3-4割は熱帯地域から輸入されています。熱帯地域からの輸入は、主にアフリカ諸国、パプアニューギニア、カンボジア、ラオス及びブラジルなどの中南米諸国となっています。温帯地域からの輸入は、アメリカ、EU、カナダ、ニュージーランド及びオーストラリアとなっています。米国からの輸入が圧倒的に多く、2020年には丸太21万m3、製材58万m3が輸入されました。さらに木質系パネル、特にパーティクルボード、ファイバーボード及び合板も輸入しており、2020年のこれら3製品の輸入量は178万m3でした。

(3)輸出

ベトナム製の木材製品は世界市場の6%(価格換算)のシェアがあり、140以上の国と地域に輸出されています。主な輸出先は、米国、日本、中国、韓国、EU、オーストラリア及びカナダです。木材製品の輸出は増加傾向にあり、2020年の輸出金額は約120億米ドルで、前年比40%増でした。椅子(HS9401)、家具(HS9403)及び木材チップ(HS4401)が輸出額の多い製品です。ベトナムの日本向け木材製品輸出金額は2020年に12億米ドルで、主な製品は、木材チップ(32%)、ウッドペレット(12%)、椅子(10%)、寝室家具(9%)、その他の木製家具(8%)です。

木材合法性証明システム(VNTLAS)

(1)木材合法性証明システム(VNTLAS)に関する法令

2010年にEUとの間で、FLEGT VPA(森林法施行・ガバナンス・貿易行動計画における自主的二国間合意)の交渉が開始され、2019年にFLEGT VPAが批准されました。近年、ベトナムでは、FLEGTライセンス発行に必要な合法性を保証する制度(VNTLAS: Vietnam Timber Legality Assurance System)の構築が進み、複数の新しい法令が施行されています。

VNTLASに関する規定は、国内の木材生産、流通・加工についてはMARD通達No. 27/2018に、木材の輸出入についてはVNTLAS政令(政令No. 102/2020)に示されています。この二つの法令は、2022年中に修正作業が開始されることが決まっていることに留意する必要があります。

一方で、ベトナムの法令とVNTLASに大きな影響を及ぼしているのが、ベトナムの最大の取引先である米国の通商代表部(USTR)によるベトナムの違法木材に関する調査です。2020年にUSTRは、トランプ元大統領の指示により、違法に伐採・取引された木材の輸入・使用に関するベトナムの行為、政策及び慣行について、通商法第301条に基づく調査を開始しました。2021年には、調査の結論として、「ベトナム社会主義共和国政府とアメリカ合衆国政府の間の違法伐採と木材貿易に関する協定」が署名、発行されました。ベトナム政府は違法木材の管理監督の強化を約束しており、これは今後の法令改正などに影響すると言われています。

表1 ベトナムの最近施行された新しいVNTLAS関連の法令等

2010年
  • FLEGT VPA交渉開始
2018年
  • MARD通達No. 27/2018/TT-BNNPTNT 「林産物の管理と追跡」*1
2019年
  • 森林法No.16/2017/QH14の施行
  • ベトナム森林認証システム(VFCS)発足
  • FLEGT VPA批准
2020年
  • 政令No. 102/2020/ND-CP 「ベトナム木材合法性保証システム(VNTLAS政令)」
  • 農業農村開発省決定No.4832/QD-BNN-TCLN 輸入木材種の公式リストと、ベトナムに木材を供給するポジティブ地域(低リスク国)のリスト
  • 米国通商代表部(USTR)によるベトナムの違法木材に関する調査開始
2021年
  • ベトナム政府と米国政府間の違法木材と木材貿易に関する協定の発行

*1 MARD Circular Management and Tracing of Forest Products (No. 27/2018/TT-BNNPTNT)

(2)VNTLASで作成される合法性を証明する書類

MARD 通達No. 27/2018は、林産物原産地証明書類(forest product origin dossier)がサプライチェーンの木材所有者によって作成され、次の所有者に受け渡されることを規定しています。林産物原産地証明書類は、一つの書類ではなく、前所有者が作成したパッキングリストや、サプライチェーンの上流で認証が必要であった場合に取得された書類、売買契約、インボイス等が含まれます。林産物原産地証明書類は、木材のソースによって異なります。パッキングリストは、VNTLASにおいて合法性を証明する重要な書類の一つです。MARD 通達No. 27/2018の第5条には、次のことが示されています。

  • パッキングリストは、木材・木材製品の所有者によって、サプライチェーンのそれぞれの段階(伐採、取引、輸送等)で作成される。
  • パッキングリストは、木材・木材製品の所有者の責任で作成される。
  • パッキングリストの様式は、MARD通達No. 27/2018に示されている。

MARD 通達No. 27/2018には伐採搬出及び木材製品の運搬に関して13種の様式が規定されていますが、その内の次の7つの様式がベトナム国産材合法性確認として有効であると考えられます。

VNTLAS政令の付属書Iに示されている、ベトナムに木材を輸入・ベトナムから木材を輸出する際の手続に使用されるフォームのうち、次のものは合法性確認に有効であると考えられます。

表2の「木材所有者1」は、伐採時にパッキングリスト(PL1)を作成し原本を保管します。木材所有者2に受け渡すためにパッキングリスト(PL2)を作成し、木材所有者2が原本を、木材所有者1がコピーを保管します。このようなパッキングリストの受け渡しがサプライチェーンの下流でも随時行われます。2021年現在、パッキングリストの受け渡しは実際に実施されているという情報を得ましたが、それ以外の林産物原産地証明書類に該当する書類がサプライチェーンを通じて受け渡しされているかについては確認できていません。

VNTLAS政令は、ベトナムに木材を輸入する際に必要な手続と、ベトナムから木材を輸出する際に必要な手続、そしてFLEGTライセンスの発行手続について定めています。2021年現在、FLEGTライセンスはEUに輸出される木材のみに適応され、日本等EU以外へ輸出される木材に対しVNTLASから合法性証明書が発行されるということは考慮されていないようです。

ベトナムから日本に輸出されているのは主に人工林由来の木材であること、また日本の事業者がデューデリジェンスで特に注意が必要なのは、ベトナムに輸入された木材を使用した木材製品輸入時の違法性リスクであることを踏まえ、VNTLASが管理するサプライチェーンの各段階で作成され、受け渡しされることが規定されている主な書類について、表2にまとめました。

表2 VNTLASが管理するサプライチェーンの各段階で必要な主な書類(非EU向け)

人工林伐採材 輸入材
木材所有者1
伐採/輸入と販売(VNTLASのエントリーポイント)

伐採時にパッキングリスト(PL1)もしくは、輸入時に輸入木材のパッキングリストを作成し原本保管。所有者2に受け渡す時にPL2を作成し、コピーを保管。原本は所有者2へ。
持続可能な森林管理(SFM)計画:
国・民間組織が所有する森林:SFM計画の作成と実施(森林法、MARD又は人民委員会の承認受けたMARD 通達No. 27/2018のAppendix II)。
個人:不要

伐採許可:
企業・個人が所有する植林地:不要
国が所有する(投資した)植林地:所有者又は伐採者が伐採計画(MARD通達No. 27/2018の様式8)について、植林資金を承認した当局に提出し合意を得た上で、省の森林保護当局に提出し監視を受ける。
輸入通関手続きに必要な書類:
  • 通常の関税法で定められた通関書類
  • 輸入木材のパッキングリストの原本(VNTLAS政令フォームNo.01または02)
  • 次のいずれかの書類
    (a) CITES許可証のコピー
    (b) FLEGT輸出許可証のコピー
    (c) 輸入木材原産地申告書(VNTLAS政令フォームNo.03)。
販売時に作成する書類
  • 林産物所有者が作成したパッキングリスト(PL2)
木材所有者2
輸送

PL2原本保管。PL3を作成しコピー保管。
輸送許可:不要(MARD 通達No. 27/2018)
輸送時に同梱が求められるのは、
  • 木材所有者が作成したパッキングリスト(PL3)
  • 林産物原産地証明書類のコピー
木材所有者3
加工

PL3原本保管。PL4を作成しコピー保管。
木材加工施設が作成する書類(MARD 通達No. 27/2018):
  • 入出庫帳(5年保管)(MARD 通達No. 27/2018様式11)
  • 木材所有者が作成したパッキングリスト(PL4)と林産物原産地証明書類のコピー(5年保管)
木材所有者4
輸出

PL4原本保管。PL5を作成、原本で輸出手続き
非EUへの輸出通関手続きに必要な書類(VNTLAS政令):
  • 通常の関税法で定められた通関書類
  • CITES許可証(該当する場合)
CITES以外の場合
所有者が企業分類システムのカテゴリーIの企業:
  • 所有者が作成したパッキングリストの原本(PL5)(VNTLAS政令フォームNo.05又はフォームNo.06)
所有者がカテゴリーIIの企業:
  • 所有者が作成し、国内の森林保護当局が原産地検証し認証されたパッキングリストの原本(VNTLAS政令フォームNo.05又はフォームNo.06に認証が明記されたもの)。検証では出荷木材製品全体の20%について、輸出貨物検査が行われる。
非EUへ輸出する人工林材の場合は、原産地検証は企業カテゴリーにかかわらず不要。

(3)VNTLASの企業分類システム

木材加工業者と輸出業者は、以下の政府の基準を満たしているカテゴリーIと、満たしていないカテゴリーIIに分類されます(VNTLAS政令第11条)。表に示したように、企業分類カテゴリーIであれば、輸出通関手続に必要な原産地の検証が免除されます。

  • 企業の設立に関する法的要件を遵守し、設立から少なくとも1年以上操業している。
  • 本政令に基づく木材の合法性要件とMARD通達No. 27/2018の要件を遵守している。
  • 本政令第27条の報告書類作成と原本保持を実施する。
  • 違法な伐採等の犯罪行為による処罰を受けていない。

しかしながら、2021年末時点で、企業分類システムは実施されていない状況でした。

(4)VNTLASによるベトナム輸入材のデューデリジェンス

VNTLAS政令によって、ベトナムに輸入される木材に対してデューデリジェンスの実施が定められています。輸入者が通関申告に必要な書類の1つである輸入木材原産地申告書(VNTLAS政令付属書IのフォームNo.03)を記入することで、デューデリジェンスが実施されることになります。

3輸入木材の原産国申告書(VNTLAS政令の付属書IフォームNo.3)の構成

パート 概要
A 輸入木材のパッキングリスト(VNTLAS政令の付属書IフォームNo.01、No.02)同様の情報の記述が求められている。
B 第5条と第6条に示されている基準(地理的リスクと樹種リスク)を用いて、輸入木材が低リスクか高リスクかを判別する。その結果、輸入木材が低リスクであれば、輸入者は更なる追加情報を提供する必要はないが、高リスク(地理的リスクもしくは樹種リスクにおいて)と判断された場合には、追加書類の提出が求められる。
C 高リスクとみなされた場合に提出する追加書類について説明している(提出するのはこのうちの一つ)。高リスクとみなされた原料となる木材(例:HS 4403、4406、4407)の場合:
(a) VNTLASの全ての基準を満たす、原産国の自主的な証明書又は国が発行する証明書
(b) 伐採許可証
(c) 伐採国で伐採許可証が発行されない場合、輸入者は伐採の合法性を証明する代替文書を提出しなければならない。この場合、輸入者は、その代替文書の内容と発行機関を明確に示し、さらに、サプライヤー情報や伐採許可証が入手できない理由も提供しなければならない。輸入者が伐採の合法性を示すことができる書類を入手できていない場合は、伐採許可証の代替となる他の文書で代用することが求められる。この場合、輸入者は、伐採国、サプライヤーの情報などとともに、伐採の合法性を示す文書を入手できていない理由を提出する必要がある。

高リスクとみなされた木材製品(例:HS 4403, 4407を除くHS 44, 94の製品)の場合:
(a) VNTLASの全ての基準を満たす、原産国の自主的な証明書又は国が発行する証明書
(b) 輸入者が伐採許可証又は伐採の合法性を証明するその他の書類を持っていない場合は、木材の合法性を示す代替書類と伐採国、サプライヤーの情報を提出する。
D 高リスク木材の輸入者にパートCの書類の提出に加えて、合法性リスクを特定し、リスクを軽減するための追加的措置(デューデリジェンス)が求められている。
1. 該当する木材製品や樹種に適用される伐採国の合法性要件を特定する。
2. 輸入する委託品に関連する伐採と取引にかかわる全てのリスクの特定と、そのリスクを低減する方法を記載する。

ベトナム政府はリスク判断のための情報を公開しています。2021年6月に更新された樹種リスクのリスト(決定文書2905/QĐ-BNN-TCLN <https://www.mard.gov.vn/VanBan/Pages/2905-qd-bnn-tcln.aspx[外部リンク]>)が公開されており、これまでベトナムに輸入されたことがある793種が掲載されています。これに含まれない樹種を持ち込むことは高リスクとみなされます。今後も樹種のリスクに関する情報が追加される予定です。

地理的リスクに関する情報は、ベトナムへの木材輸出国のポジティブリスト(決定文書4832<https://www.mard.gov.vn/VanBan/Pages/4832-qd-bnn-tcln.aspx[外部リンク]>)で、51か国(アジア10か国、ヨーロッパ31か国、オセアニア3か国、アメリカ6か国、アフリカ1か国)が掲載されています。ここに掲載されている国以外からの輸入木材は、高リスクとみなされます。

しかしながら、輸入者による輸入材のデューデリジェンスと、税関当局によるデューデリジェンス結果の確認は、2021年現在ほとんど実施されていないのが現状です。輸入木材原産地申告書(VNTLAS政令付属書IのフォームNo.03)のデューデリジェンスに関連する箇所が空欄のまま輸入が許可されているとの情報がありました。

その他木材等の適正な流通の確保に関する情報

森林認証スキーム

国家森林認証制度(Vietnam Forest Certification System VFCS)の実施が、2018年に首相決定No.1288/QD-TTgによって承認されました。FCSを管理するベトナム森林認証局(Vietnam Forest Certification Office: VFCO)によると、2022年2月現在、285,213 haの森林が認証を受けています。2019年からVFCSとProgramme for the Endorsement of Forest Certification Schemes (PEFC)との相互承認が行われています。PEFCのウェブサイトによれば、2021年末時点でベトナムの認証林面積は15件46,657 ha、CoC認証は30件です。
2022年2月現在、ベトナムでFSC(森林管理協議会, Forest Stewardship Council)認証を受けた森林面積は227,523 ha(52件)、CoC認証は1,076件です。

リスク情報

ベトナム政府はVNTLASを構築中で、法整備が進んできてはいるものの完全ではなく、法令の実施も完全ではない状況です。法令上で合法性を証明する書類は明らかになってきていますが、実際には入手が困難な可能性があります。 ベトナムから輸入される木材の違法リスクを検討する際に、木材の供給源(国内天然林、国内人工林、輸入木材)に分けて検討することは有益と考えられます。

ベトナム国内の天然林は特別な場合を除いては伐採が禁止されているため、天然林から供給される木材(例えば、国産で植林木以外の樹種)については、伐採に必要な合法性を証明する書類を全て確認する必要があります。 国内の植林地(人工林)からの木材については、VNTLASにおいて合法性の証明は重視されておらず、法令でパッキングリストが検証等を受けていない自己申告の書類が正式な文書とされている場合もあります。これは違法性のリスクが低いことの表れである反面、書類の信ぴょう性の確認ができない状況になっています。

リスクの高い輸入材が存在することは認識されており、VNTLASでデューデリジェンスが要求されているものの、現在はまだ実施には至っていません。ベトナムの主要な木材輸入国(地域)であるアフリカ、ラオス、カンボジア及びパプアニューギニアから輸入された木材のリスクを、VNTLAS政令の基準で評価することを試みたレポートによると、これらの国や地域からの輸入品、特にカンボジアとラオスからの輸入品には、高リスクの木材種が比較的高い割合で含まれていることが明らかになっています。

関連する事業の成果

林野庁ではこれまで、ベトナムに関する情報収集を3回実施し報告書を発行しています。表1で示した2020-2021年に施行された法令は、平成29年度の報告書(下記(3))、2018-2019年までに施行された法令等については令和元年度の報告書(下記(2))、それ以前については平成29年度の報告書(下記(1))で解説されています。

(1)平成29年度

「クリーンウッド」利用推進事業のうち生産国情報収集事業

(2)令和元年度

「クリーンウッド」利用推進事業のうち生産国の現地情報収集事業(大洋州地域等)

(3)令和3年度

「クリーンウッド」普及促進事業のうち違法伐採関連情報の提供

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