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合法伐採木材等に関する情報:フィリピン

注 国別情報については、平成30年度調査の成果等を、参考情報として掲載しています。

合法性の確認に活用できる書類の事例はこちら

木材等の生産及び流通の状況

フィリピンの国土面積3,000万haのうち、2015年時点の森林被覆は804万ha(約27%)と推定されています。その内訳は原生林86万ha、その他の天然林/二次林593万ha、人工林125万haです。

フィリピンはかつて、南洋材の主要生産・輸出国であり、特に1960年代後半から1970年代前半にかけては、公有地での択伐コンセッションなどからの丸太生産量が年間1,000万m3を上回っていました。しかし1980年代になると、過剰伐採、森林の他の土地利用への転換、移動耕作・木材の違法採取に起因する森林劣化などによって木材生産量は激減しました。1991年に残存する原生林、並びに急勾配地・高地での伐採施業が禁止され、さらに2011年に全ての天然林の伐採が停止され、同措置は現在も続いています。近年、フィリピンでは年間70万~120万m3の産業用丸太が生産されており、そのほとんどはファルカタ(Paraserianthes falcataria)などの私有地の植林木が伐採されたものです。

一方、フィリピンは、合板(2017年には60万m3)を中国、マレーシア(主にサバ州)、日本などから、製材(同年25万m3)をマレーシア(大半がサラワク州)、カナダなどから輸入しています。また、フィリピンが輸出する木材・木材製品の大半は建築用木工品(2017年には12億米ドル、ほぼ全量が日本向け)で、他に製材(0.9億米ドル)、木製家具(0.8億米ドル)などが輸出されています。

合法伐採木材に関連する法令及びその運用

フィリピンでは木材の伐採、輸送、加工、輸出入の許認可は全て、環境天然資源省(DENR)のコミュニティ事務所(CENRO)が窓口となっています。

伐採や輸送に関する許認可

公有地では、コミュニティ林管理協定(CBFM)、産業造林などのための包括的森林管理協定(IFMA、面積500ha以上)、社会産業林管理協定(Socialized Industrial Forest Management Agreement(SIFMA), 面積500ha以下)などによって使用権が与えられた土地から木材が生産されており、所管のCENROから承認を受けた5カ年計画、年次計画に基づいて伐採を含めた森林管理が行われています。伐採木の輸送にはCENROが発行する木材原産地証明書(Certificate of Timber Origin (CTO))を必要とし、これに樹種や本数などが記載されたタリーシート(計数表)や伐採の際の納税証明書などが添付されます。

一方、私有地の人工林を伐採するためには、その土地の所有者がCENROから植林地所有証明書(Certificate of Tree Plantation Ownership(CTPO))を取得することが求められます。CTPOを取得していることが、伐採、輸送の前提となりますが、輸送の際はCENROスタッフによる現地調査を受け、自己モニタリングフォーム(Self Monitoring Form(SMF))も発行してもらう必要があります。自己モニタリングフォームにはタリーシートや輸送事業者との契約書などが添付されます。ただし、CTPOを取得した土地以外の私有地の植林木についても、10本以下などの小規模の伐採の場合には、CENROに監査を受け、確認証明書(CV)を発行してもらうことによって伐採、輸送することが可能です。

このほか、量は少ないですが、インフラ建設のために伐採される木材については特別伐採許可(Special Cutting Permit)、私有地内の自然木については私有地木材許可証(Private Land Timber Permit/PLTP)、その中でも特にインドカリン(Pterocarpus indicus:現地名narra、「フィリピンローズウッド」と呼ばれることもある)などの保護樹種については特別私有地木材許可証(Special Private Land Timber Permit (SPLTP))によって伐採、輸送を行うことができます。

木材加工段階での許認可

フィリピンで木材の加工を行う事業者は、入荷・保管・出荷した木材の量や、入荷した木材の供給源や輸送に関する情報が記載された木材原産地証明書(CTO)や自己モニタリングフォーム(SMF)を保管することが義務付けられています。これらの情報はCENROから派遣される工場内計測者やCCTVカメラによってモニタリングされます。製材を出荷するためには、CENROから製材原産地証明書(Certificate of Lumber Origin(CLO))を取得します。その際、原料の供給源などを示す書類(CTOやSMF等)が添付されます。なお、家具製造事業者は、こうした書類保管の義務やモニタリングの対象となっていません。また、家具、ドア、窓、キャビネット等の完成品の輸送には輸送許可証は必要ありません。

また環境天然資源省は全国117ヶ所の幹線道路沿いに設置したチェックポイント(検問)においても、輸送中の木材・木材製品の書類を確認しています。

CTO、SMF、CLO等の書類の発行記録や、チェックポイントでの確認記録は全てCENROによって環境天然資源省のオンラインデータベースに入力され、管理されています。

木材及び木材製品の輸入に関する許認可

フィリピンの事業者が木材・木材製品の輸入を行う際には、輸入許可証または木材原料輸入許可証を取得する必要があります。一方で伐採時の合法性情報の提示は求められません。輸入された木材・木材製品のフィリピン国内での輸送のためには、(1)「輸入許可書」または「木材原料輸入登録証明書」、(2)輸入元の国が発行する植物検疫証明書、(3)船荷証券、及び(4)梱包明細書をCENROに提出する必要があります。これらはまとめて輸入書類(Importation Documents)と呼ばれます。

木材及び木材製品の輸出に関する許認可

フィリピンから木材・木材製品を輸出する事業者は、CENROを通じ、DENRから輸出許可書を取得しなければなりません。同申請には、輸出する木材・木材製品の樹種、数量、事業者登録証、事業許可証、木材・木材製品の供給源を証明する書類(CTO、CLO、CV、Importation Documents等)、写真が必要です。また保護樹種(例:インドカリン)の植林木から作られた製品が含まれている場合は、義務付けられている特別私有地木材許可証(SPLTP)の写しの添付も必要です。従って、輸出許可申請時に使用される木材・木材製品の供給源を示す書類またはその添付書類から、当該木材の伐採地が確認できる可能性があります。

積荷が輸出許可書どおりに行われたかどうかについてもCENROによって確認され、輸出承諾書(Export Clearance Certificate)、輸出適合証明書(Export Compliance Certificate)が発行されます。

法令

土地の権利、森林管理、伐採に関する許認可に関する法規制

木材及び木材製品の輸送と加工に関する法規制

木材及び木材製品の輸出入に関する法規制

関係行政機関一覧

名 称 略称 主な業務
環境天然資源省(Department of Environment and Natural Resources) DENR
  • 国の環境及び天然資源(公有地内の森林・放牧地、保護区、流域地区を含む)の保全・管理・開発・適切な利用を所管。
環境天然資源省 森林管理局(Forest Management Bureau) FMB
  • 林地及び流域を効果的に保護・開発・保全するために、DENRの本部及び現地事務所に技術指導を提供。
  • 持続可能な森林管理を実施するための政策及びプログラムを提言。
環境天然資源省 生物多様性管理局(Biodiversity Management Bureau) BMB
  • 絶滅のおそれのあるフィリピンの動植物リストを作成・保持し、それらの保全計画を策定。
  • ワシントン条約(CITES)の管理当局。全てのCITESリスト掲載種の輸出に関するCITES許可書の発行。
環境天然資源省 地方事務所(Regional Environment and Natural Resources Office) -
  • DENRは全国16の地方事務所を持っており、それらの事務所は、許認可の直接発行や、CENROが発行した許認可の審査を行う。
環境天然資源省 州事務所(Provincial Environment and Natural Resources Office) PENRO
  • 天然資源管理を州レベルで監督。
  • CENROを評価・監督。
環境天然資源省 コミュニティ事務所(Community Environment and Natural Resources Office) CENRO
  • 地方政府(州、独立市、市・町、バランガイ)と連携しながら、環境天然資源省州事務所長の監督下で、林業のほぼ全ての側面において現地レベルで主要な役割を果たしている。
法務省(Department of Justice)土地登記局(Land Registration Authority) LRA
  • 登記命令及び権原証書を発行し、文書、土地権利証その他土地取引を登録し、土地所有権の記録を提供。
  • 権利譲渡証書を発行。

その他木材等の適正な流通の確保に関する情報

(1) 民間の森林認証スキーム

2018年現在、フィリピン国内にFSC認証林は存在していません。過去には少数の森林がFSC認証を取得していましたが既に失効しています。FSCのCoC認証は10社が取得しています。

また、フィリピンでは、国家森林認証システム構築が構築の初期段階にありますが、この制度は将来、PEFC(Programme for the Endorsement of Forest Certification)によって承認が検討される可能性があります。

(2) その他合法木材関連の情報

フィリピン政府は、EU木材規則の要件への適合に取り組んでいます。環境天然資源省および林業セクターは、EUとの自主的二国間協定(Voluntary Partnership Agreement(VPA))締結交渉に関心を示していますが、2018年現在、まだ交渉は行われていません。

なお2019年中に、新たな林業基本法(「持続可能な林業法(Sustainable Forestry Act)」)が国会で可決され、新たな制度改変が行われる可能性があります。

合法性の確認に活用できる書類の事例

木材原産地証明書(Certificate of Timber Origin(CTO))(PDF : 0.56MB)
発行対象 公有地の林地からの丸太
発行者 CENRO
概要 CBFM(コミュニティ林管理協定)、IFMA(包括的森林管理協定)、SIFMA(社会産業林管理協定)などに基づく公有地の保有権対象地で伐採された丸太の輸送に必要です。

(出典)「クリーンウッド」利用推進事業のうち生産国における現地情報の収集(熱帯地域)事業報告書(平成31年3月報告)

自己モニタリングフォーム(Self Monitoring Form(SMF))(PDF : 0.33MB)
発行対象 植林地所有証明書(Certificate of Tree Plantation Ownership(CTPO))を取得した私有地の植林地からの木材
発行者 CENRO
概要 CTPOを取得した私有地の植林地からの木材の輸送に必要です。CENROスタッフが現地調査の上発行します。タリーシート(輸送・販売を目的に伐採された木材の樹種と量を記載)と輸送契約書の写しが添付されます。

(出典)「クリーンウッド」利用推進事業のうち生産国における現地情報の収集(熱帯地域)事業報告書(平成31年3月報告)

注 私有植林地について、所有者に対しCENROが発行。CTPOを取得した土地は、土地登記局で登記され、登記された私有植林地であることをもって伐採などの林業活動が可能となります。

私有地植林木の確認証明書(Certificate of Verification(CV))(PDF : 0.75MB)
発行対象 CTPOを取得していない私有地の植林地からの木材
発行者 環境天然資源省
概要 CTPOの登記がされていない私有地の植林木でも、本数が10本に満たないような小規模な伐採の場合には、CENROによる確認証明書(CV)の交付によって伐採・輸送が可能になります。

(出典)「クリーンウッド」利用推進事業のうち生産国における現地情報の収集(熱帯地域)事業報告書(平成31年3月報告)

委託・補助事業の成果

(1)平成30年度
「クリーンウッド」利用推進事業のうち生産国における現地情報の収集(熱帯地域)事業

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