合法伐採木材等に関する情報:モザンビーク
(2021年4月1日:新設)
注 国別情報については、令和2年度に実施した調査の成果等を参考情報として掲載しています。
注 合法性の確認に活用できる書類の事例はこちら
1.木材等の生産及び流通の状況
モザンビーク共和国(以下、モザンビーク)の国土面積は79.9万km2(日本の約2倍)であり、2020年時点の森林総面積は、36,743,760ha、その内、植林地面積は74,269.12haと推定されます。森林の約2,700万haが木材生産に適した生産林、1,300万haが保全地域に分類されています。
表 森林面積の変化
年 | 1990 | 2000 | 2010 | 2015 | 2020 |
天然林(1,000ha) | 43,340.00 | 41,150.00 | 38,917.50 | 37,874.01 | 36,669.49 |
植林地(1,000ha) | 38.00 | 38.00 | 54.64 | 65.99 | 74.27 |
計(1,000ha) | 43,378.00 | 41,188.00 | 38,972.14 | 37,940.00 | 36,743.76 |
出典:FAO (2020) Global Forest Resources Assessment 2020: Report Mozambique, Rome
モザンビークでは、119樹種が商業樹種に指定され、5段階(貴重種、第 1種~第 4種)に分けられています。その内、以下の6樹種が国内外のマーケットの需要から最も多く伐採されています:Afzelia quanzensis (Chanfuta)、Dalbergia melanoxylon (Pau Preto)、Milletia stuhlmannii(Jambirre)、Pterocarpus angolensis(Umbila)、 Combretum imberbe(Mondzo)、Swartzia madagascariensis(Pau Ferro)。
モザンビークでは、天然林由来の丸太と製材が主要な輸出木材製品でしたが、2016年から原木の輸出が禁止されました(Lei 14/2016)。パーケットやベニヤ、合板も生産されており、政府は木材加工産業の促進を図っています。国内には約200の製材所があり、そのうち47%は小規模の工場と推定されます。
木材の輸出額は2億米ドルを超え、年間GDPの約2%に相当します。モザンビークの木材輸出は中国向けによってほぼ独占され、特にDalbergia melanoxylon(Pau Preto)、Pterocarpus angolensis(Umbila)、Afzelia quanzensis(Chanfuta)、Millettia stuhlmannii(Jambire)が集中的に取引されています。2018年にはHSコード4403類の輸出総額(2.46億米ドル)のうち99%以上が、HSコード4407類(0.38億米ドル)の80%が対中国輸出でした。モザンビークは、中国にとって重要な熱帯木材供給国であり、2014年から2018年の期間は、パプアニューギニア、ソロモン諸島、赤道ギニアに次いで量ベースで中国への熱帯丸太の供給国第4位となっています。
モザンビークでは、バイオマス燃料用の樹種としてユーカリが、産業用(製材用)としてマツが植林されています。植林木のほとんどは国内消費に使われており、今後、植林木の国内需要は拡大すると予測されています。
2.合法伐採木材に関連する法令等及びその運用
モザンビーク憲法(1990年)によって、土地は国の所有物であると定められ、天然林の商業用伐採は、大規模の伐採権(森林開発コンセッション)と短期かつ短期間の伐採権(シンプルライセンス)が規定されます。また植林地は、国土保全用植林、エネルギー植林、産業植林の3種類に区分されます。
シンプルライセンスを所持する事業者が大多数を占め、2017年は、624件のシンプルライセンスが発行され、コンセッションは193件でした。ただし、2020年にはコンセッションとシンプルライセンスの新規発行が停止され(Decreto nr. 25/2020)、現在はそれ以前に許可を受けた事業による伐採のみが実施されています。
森林・野生生物法(1999年)と森林・野生生物規則(2002年)が林業制度の基礎となっていますが、2015年11月に森林セクターの改革プロセスが発表され、2018年から2019年の間に見直しが行われました。この結果、新たな「国家森林政策及び実施戦略(Política Florestal e Estratégia da sua Implementação)」を2020年2月に決定し(Resolução nr. 23/2020)、これに基づき森林・野生生物法及び関連法令の見直し等が行われると考えられます。
森林開発コンセッションは、モザンビークと海外の個人・法人が取得できます。コンセッションの期限は、最長50年間(更新可能)であり、承認はその事業規模によって州国務長官(20,000 haを上限とする事業)、土地・環境大臣(20,000~100,000 haの事業)、閣議(100,000 ha以上の事業)に分かれます。コンセッション事業者は、木材の加工施設を有すことが義務付けられます。
コンセッション契約には、事業者は森林林管理計画提出の他に、地域住民に対するコンサルテーションを実施し、その議事録(PDF : 444KB)の作成が必要になります。環境影響評価(EIA)は要件ではありませんが、森林管理計画には環境への影響とその対策に関する情報が含まれます。審査では、対象地域のその他土地利用許可との重複の有無、伐採の可能性、申請者の適性と事業運営能力、木材加工能力など確認され、対象地域がその他の有効な土地利用許可と重複していない場合、土地利用が重複しないことの証明書(Certidão Negativa)(PDF : 189KB)が発行されます。書類・技術的検査の後に、コンセッション契約が締結されます。
コンセッション契約が締結された後、事業者は、年間の伐採ライセンスの申請を行います。事業者は、木材加工施設等の検査を受け、年間のコンセッション料と伐採料を支払い、伐採ブロックを設置する必要があります。伐採ライセンス(Licença de Exploração Florestal)(PDF : 240KB)を取得した事業者は、承認された森林管理計画に基づき伐採を行います。
コンセッションが海外の個人・法人も対象とするのに対し、シンプルライセンスはモザンビーク国籍を有する事業者(個人)または有効な商業登録を行った会社のみが取得できます。契約期間は5年以内(更新可能)で、10,000 haを超えない面積で実施され、年間木材伐採量の上限は500m3/年と規定されます。伐採事業者は、簡易管理計画を作成し、シンプルライセンス契約の締結後に、年間伐採料を支払い、年間の伐採ライセンスの取得が必要になります。
事業者がシンプルライセンスによって伐採した木材の加工を行うためには、自前の加工施設・必要なインフラストラクチャー、または認可を受けた第三者との加工契約を提示しなければなりません。シンプルライセンスにより伐採された?木材を手作業やチェーンソーで加工することは認められていません。
産業造林の許可をはじめ、産業・農業開発等の許可を取得するには、土地利用権(Direito de Uso e Aproveitamento de Terra: DUAT)の取得が必要になります。DUATは森林開発コンセッションとシンプルライセンスの申請には必要ありません。DUATの下、造林許可は、モザンビーク国内の法人や個人、地域コミュニティ社会が取得できます。外国の法人(モザンビークで設立または登記されている)や個人(モザンビークに5年以上居住している)も、承認された投資プロジェクトがあれば、DUATを取得することが可能になります。産業植林を申請するためには、DUATの取得、環境影響評価(EIA)の実施、投資プロジェクト許可の3つの要件を満たすことが必要となります。外来樹種の植林の場合には、さらに許可を得る必要があります。
3.木材の流通段階における法令等及びその運用
下図に天然林から伐採された木材(コンセッションとシンプルライセンスによる)の輸送、加工、輸出までのプロセスの概要を示します。
図 天然林の伐採から輸送、加工、輸出までのプロセス
注)コンセッション事業者と加工場のすべてが木材製品を輸出するわけではない
森林・野生生物法と関連規則によって木材の輸送段階の制度が規定されています。コンセッション事業者とシンプルライセンス事業者が生産した木材の輸送には、丸太・木材の輸送許可証(Guia de Trânsito de Produtos Florestais)(PDF : 224KB)が必要になります。輸送許可証の他に、丸太の輸送には輸送丸太リスト(Mapa de Especificacoes de Productos Florestais)(PDF : 225KB)が求められます。また、製材所等の加工業者は、加工製品の輸送許可を申請する必要があります。
コンセッション事業者は、加工場を設置することが義務付けられています。コンセッション事業者は自前のコンセッションからの原木だけでなく、他の事業者から原木を購入し加工することも出来ます。
丸太が加工事業者に届けられると、「製品入庫記録簿(livro de registo de entrada de produtos)」に記録され、加工後の出荷時に「林産品出庫記録簿(livro de registo de saída de produtos florestais)」に記録されます。記録簿には、輸送許可証に関する情報(輸送許可証の記録簿番号、輸送許可証番号、日付)と輸送された又は輸送される木材のタイプ、樹種、量が記録されます。
モザンビークでは、あらゆる在来種の原木輸出は禁じられています。在来種の加工木材の輸出は、コンセッション事業者、加工業者、そして国家機関である国家持続可能な開発基金(Fundo Nacional de Desenvolvimento Rural: FNDS)に許可されます。以下に加工木材輸出のプロセスの概要を示します:
- 事業者による年間加工木材製品輸出計画(PDF : 553KB)の作成と提出
- 輸出事業者の証明書(Certificado de Exportador)(PDF : 492KB)の発行
- 木材輸出の申請
- 州環境サービス(SPA)による検査と木材の輸出許可承認依頼の通知及び輸出木材の検査報告書(PDF : 483KB)の作成
- 輸出許可(PDF : 211KB)の発行
- 税関によるパッキング支援の承認
- 輸出貨物に関する報告書(PDF : 2,840KB)作成
- 輸出港までの木材の輸送
事業者が提出する年間輸出計画が承認されると、1年間有効な輸出事業者証明書が発行され、承認された事業者の一覧は政府がとりまとめます(木材輸出が承認された事業者のリスト( 2019 年)(PDF : 513KB))。輸出事業者証明書があれば、事業者はその有効期限内にいつでも許可された年間輸出量に達するまで輸出許可申請を行うことが出来ます。
輸出申請の際に、植物検疫を含む製品の検査が行われ、州環境サービス(SPA)によって関連する報告書が作成されます。国家森林総局(DINAF)が報告書を確認した後、当該木材製品の輸出が許可されます。輸出が許可された事業者は、コンテナの梱包、積込み、封印に関して税関にパッキング支援を要請します。この作業は、税関と土地・環境省(MTA)職員の立会いの下で行われ、梱包が終了すると、コンテナは施封され、輸出貨物に関する報告書が作成されます。当該木材製品を輸出地点まで輸送する際には、輸出許可証と輸出貨物に関する報告書のコピーが必要となります。
法令
合法的な伐採権関連
法令/法令番号 | 制定年 | 説明 |
森林・野生生物法(Lei nr.10/99.) | 1999年7月7日 | 森林と野生生物資源の保護、保全、持続可能な利用に関する基本的な原則と規範を定める。森林の伐採制度、流通について規定する。 |
森林・野生生物規則(Decreto nr.12月20日02) | 2002年7月6日 | 森林・野生生物法の実施規則 |
Despacho de Regulamento da Lei nr. 10/99. BR 12月20日04 Série I | 2004年3月24日 | 森林および野生生物資源のインベントリ作成およびコンサルタントについて規定する |
Decreto nr. 76/2011 da Lei nr. 10/99. BR 52/2011 Series I) | 2011年12月20日 | 森林・野生生物法規則で定められた罰金更新を規定する |
Decreto nr. 30/2012. BR 31/2012 Series I | 2012年8月1日 | シンプルライセンスと植林地開発に関する要件と条件を定め、植林地開発のインセンティブを規定する |
Diploma Ministerial nr. 293/2012 | 2012年11月7日 | 森林・野生生物法規則で定められた、森林や野生生物の資源へのアクセスや利用、国立公園や保護区での観光料金を更新する |
Diploma Ministerial nr. 16/2017 | 2017年2月8日 | 森林伐採と輸送に関する書類の様式を更新する |
貿易と輸送関連
法令(法令番号) | 制定年 | 説明 |
森林・野生生物法(Lei nr.10/99.) | 1999年7月7日 | 森林と野生生物資源の保護、保全、持続可能な利用に関する基本的な原則と規範を定める。森林の伐採制度、流通について規定する。 |
森林・野生生物規則(Decreto nr.12月20日02) | 2002年7月6日 | 森林・野生生物法の実施規則 |
Diploma Ministerial nr. 16/2017 | 2017年2月8日 | 木材の伐採と輸送に関する書類の様式を規定する |
Lei nr.07月20日10. | 2016年12月30日に改正 | 加工木材輸出税(TEMP)について規定する |
Decreto nr. 42/2017 | 2017年8月17日 | 加工木材の輸出のために規則、条件、手続きを定める |
Diploma Ministerial nr. 54/2018 | 2018年12日 | 加工木材輸出業者の適格基準を定める |
Diploma Ministerial nr. 55/2018 | 2012年8月1日 | 加工木材製品の輸出に関する要件、手続きを定め、年間木材輸出計画の様式を示す |
関係行政機関一覧
モザンビークでは、2020年の第2次ニュシ政権発足に伴う省庁再編が行われました。表に2020年12月時点における国レベルの森林管理・伐採に関連する省庁、行政機関を示します。
組織名 | 森林分野に関する役割と責任 |
土地・環境省 (MTA) |
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産業貿易省(MIC) |
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経済・財務省 (MEF)及び税務局 |
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国家森林総局(DINAF) |
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国家環境品質管理機関:(AQUA) |
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モザンビークの地方行政は、10州と首都(州に相当)に分かれています。第2次ニュシ政権発足に伴い、州レベルにおける森林行政体制に関しても変更が図られています。選挙で選ばれる州知事に加えて、各州には、国の機能を遂行することを責務とする州国務長官(Secretário de Estado na Província)を大統領が任命し、その下には州環境サービス(Serviço Provincial do Ambiente:SPA)が新たに設置されました(Decreto nr. 63/2020)。これまでは、州森林・野生生物サービス(Serviços Provinciais de Florestas e Fauna Bravia: SPFFB)が州レベルの森林行政を担当していましたが、あらたに設立されたSPAが伐採、木材製品の輸送及び輸出の許可と関連文書準備を含む州レベルの森林関連業務全般を担うことになります。
4.その他木材等の適正な流通の確保に関する情報
(1) 民間の森林認証スキーム
モザンビーク政府は森林認証促進を方針に掲げており、2020年に承認された新たな「国家森林政策及び実施戦略(Política Florestal e Estratégia da sua Implementação)」では、国内の認証基準の導入が提案されています。
しかしながら、現時点では森林認証制度の活用は限られています。国内の認証制度は構築されておらず、PEFC認証制度はモザンビークではありません。2021年1月時点において森林管理協議会(FSC)による森林管理認証は、3件(天然林2件と植林地1件)で116,703.64 ha(合計)となっています。
5.合法性の確認に活用できる書類の事例
付属資料1. 地域住民に対するコンサルテーションの議事録(様式)(PDF : 444KB)
付属資料2. 土地利用が重複しないことの証明書(Certidão Negativa)(様式)(PDF : 189KB)
発行対象森林開発コンセッション、シンプルライセンス
発行者州環境サービス(SPA)
付属資料3. 伐採ライセンス(Licença de Exploração Florestal)(様式)(PDF : 240KB)
発行対象森林開発コンセッション、シンプルライセンス
発行者州環境サービス(SPA)
付属資料4. 丸太・木材の輸送許可証(Guia de Trânsito de Produtos Florestais)(様式)(PDF : 224KB)
発行対象森林開発コンセッション、シンプルライセンス
発行者州環境サービス(SPA)
付属資料5. 輸送丸太リスト(Mapa de Especificacoes de Productos Florestais)(様式)(PDF : 225KB)
発行対象森林開発コンセッション、シンプルライセンス
発行者州環境サービス(SPA)
付属資料6. 年間加工木材製品輸出計画(及び承認書)(様式)(PDF : 553KB)
発行対象加工木材製品輸出事業者
発行者土地・環境省 (MTA)
付属資料7. 輸出事業者の証明書(Certificado de Exportador)(PDF : 492KB)
発行対象加工木材製品輸出事業者
発行者土地・環境省 (MTA)
付属資料8. 木材の輸出許可承認依頼の通知及び輸出木材の検査報告書(PDF : 483KB)
発行対象国家森林総局(DINAF)
発行者州環境サービス(SPA)
付属資料9. 輸出許可(様式)(PDF : 211KB)
発行対象加工木材製品輸出事業者
発行者州環境サービス(SPA)
付属資料10. 輸出貨物に関する報告書(PDF : 2,840KB)
発行対象加工木材製品輸出事業者
発行者州環境サービス(SPA)
付属資料11. 輸出が承認された事業者の一覧(PDF : 513KB)
発行者税務局
6.関連する報告書
(1) 令和2年度
令和元年度「クリーンウッド」利用推進事業のうち海外情報収集事業(R3.3月)(モザンビーク部分抜粋)(PDF : 8,076KB)