合法伐採木材等に関する情報:ミャンマー
(2021年4月1日全面更新)
注 国別情報については、令和2年度調査の成果等を参考情報として掲載しています。
注 合法性の確認に活用できる書類の事例はこちら
1.木材等の生産及び流通の状況
1.1 森林資源の概況
ミャンマーは、国土面積6,825万haのうち、森林被覆が2,956万ha(2015年時点)であり、森林が国土のおよそ44%を占めています。ミャンマーの森林は、憲法によって、国家に帰属していると定められています。
1.2 木材生産と流通
木材生産は、森林局が管轄する恒久林として分類された森林で、天然資源環境保全省と森林局の指示の下で、ミャンマー木材公社によって実施されます。ミャンマーでは過剰な木材生産が、森林減少や劣化の要因の1つとして挙げられています。このため、ミャンマー政府は、2014年に原木の輸出を禁止し、2016年から2017年の1年間は、全国での木材伐採を禁止しました。また、チークの特産地であるバゴ山地では2016年から2025年の10年間の木材の伐採停止措置がとられています。さらに、2017年以降、森林局が定める年間許容伐採量(AAC)に対して、実際の伐採許可量はチークでAACの55%以下、チーク以外の広葉樹は33%以下に設定するとしました。こうした、伐採量の縮小を受け、ミャンマー国内の木材加工施設数や製材加工の量は、一部単板生産を除いて、2014年以降は減少傾向がみられます。
1.3 木材の輸出
輸出面においても、ミャンマーでは、持続的な森林管理に基づいて生産された木材の輸出を禁止しています。このため、土地利用転換や押収された違法伐採木材は輸出することはできません。また、植林木以外の原木の輸出も禁止されています。ミャンマーの主要な木材輸出先はインド、中国、タイで、チークやその他の広葉樹の製材品や単板を輸出しています。日本の、ミャンマーからの木材及び木材関連製品の輸入は、9.6億円(2019年)で、木材及び木材関連製品輸入総額の全体の1%以下です。なお、ミャンマーからの木材及び木材関連製品輸入は、木材及びその製品、木材パルプ等及び古紙、木炭及び薪材等です。特に木材パルプ等及び古紙については、2010年以降、増加傾向にあります。
ミャンマーで生産される木材のうち、ワシントン条約の付属書2に掲載され保護対象となっている樹種は、ローズウッド(紫檀)(Dalbergia 属)、マラッカジンコウ(Aquilaria malaccensis)、ヒマラヤイチイ(Taxus wallichiana)、インドジャボク(Rauvolfia serpentina)です。なお、ミャンマーから輸出される木材は、ヤンゴン港の中の3つの港(Myanmar industrial Port、 Asian World Container Port、ミャンマー国際ターミナル)からしか輸出できません。このため、陸路での木材輸出は違法となります。
2. 合法伐採木材に関連する法令等及びその運用
2.1 合法的な伐採から輸出までの手続き
ミャンマーでの木材の伐採から流通、加工までの手続きは、以下のミャンマーの木材伐採から輸出までの流れのとおりです。
図 ミャンマーの木材伐採から輸出までの流れ
表 伐採から輸出までの手続きの詳細
Step | 活動 | 関連書類・記録 | 実行機関 | |
伐採 計画 |
1 | 年間許容伐採量(AAC)の設定 | ・AAC通知書 ・国及び州の立木マーク計画書 |
森林局計画統計部 |
2 | MTE年間収穫計画策定 | ・MTE年間伐採計画書(AHP) | MTE木材搬出部長 | |
3 | 伐採許可立木のマーキング | ・立木ノートもしくは立木マーキングノート ・マーキング立木地図 |
森林局現地事務所 | |
4 | 伐採作業のための森林内への立ち入り許可の申請 | ・MTEから森林局への許可申請書 | MTE木材搬出部 | |
5 | 伐採作業のための森林内への立ち入り許可の発行 | ・森林局からMTEへの許可書(PDF:92KB) | 森林局地区事務所 | |
6 | ハンマーマークの登録 | ・ハンマーマーク登録 | MTE木材搬出部 | |
伐採 現場 |
7 | 調査報告 | ・調査報告書(様式AC) | MTE木材搬出部 |
8 | 伐採 | ・伐採指示書(様式AG)(PDF:102KB) ・伐採要項 ・密林伐採台帳(様式B) |
MTE木材搬出部 | |
9 | 活動日報と進捗の記載 | ・MTE伐採台帳(様式C) ・MTE伐採台帳財務用(様式F) |
MTE木材搬出部 | |
10 | 原木の検査地点までの移動 | なし | MTE木材搬出部 | |
林内の 検査場 |
11 | 原木の測定とマーキング | ・森林局ノート(様式S-18) ・測定ノート(様式D) |
森林局現地事務所 MTE搬出/搬送地区事務所 |
12 | 森林道の敷設 | ・森林道建設進捗報告書 | MTE木材搬出部 | |
14 | 森林局による検査 | ・伐採時・伐採後検査票(様式1) ・伐採木検査月間報告書(様式2) ・搬出後のスタンプ検査(様式3) |
森林局現地事務所 | |
輸送 | 13 | 原木の測定地点からMTE貯木場への輸送 | ・トラック輸送ノート(トラック伝票) | MTE木材搬出部 |
16 | 森林道路の廃止 | ・林道廃止レポート ・林道廃止地図 ・林道廃止写真 |
MTE木材搬出部 | |
17 | 完了報告書の提出 MTE貯木場での原木の受入 |
・終了報告書(様式AJ) | MTE木材搬出部 | |
18 | 原木の仕分けとグレード分け | ・原木登録リスト | MTE木材搬出部 | |
19 | MTEの搬出/搬送地区事務所の貯木場から他のMTE貯木場またはMTEヤンゴン輸出用貯木場への輸送 民間の木材購入者への輸送 |
・貯木場出荷記録 トラック輸送: トラック輸送ノート(トラック伝票)もしくは 追跡伝票 ・艀/筏/列車輸送: リムーバルパス(様式AT) 原木測定リストを含めたリムーバルパス (様式AU) 原木・木材の受け入れ書(様式AS) |
MTE輸出部 | |
20 | ヤンゴン貯木場での原木の受入れ | ・原木入荷日報申告書(様式T1) ・原木入荷日報(様式T2) |
MTE木材搬出部 | |
輸送 | 21 | 原木の計測とグレード分け | ・原木測定グレード登録日報(様式T4) | MTE輸出部 |
22 | 原木販売準備 | ・仕様書 (旧様式、現様式、新様式(PDF:113KB)) |
MTE輸出部 | |
23 | 原木販売 | ・仕様書(Step22で準備したもの)(EMMD-1) ・販売契約書(EMMD-2)(PDF:257KB) ・商業請求書(EMMD-3)(PDF:97KB) ・送り状 ・輸送指示書(EMMD-4)(PDF:121KB) ・輸送事前情報書(EMMD-5)(PDF:93KB) ・輸送荷物参照(EMMD-6)(PDF:88KB) ・購入確認書(EMMD-7)(PDF:88KB) |
MTE木材搬出部 | |
24 | 販売原木の輸送 | ・MET木材輸送ノート ・リムーバルパス |
原木購入者と森林局 | |
民間 製材所 |
25 | 原木の受入れ(企業の貯木場) | ・購入者の受入れレター(PDF:139KB) | 原木購入者 |
26 | 木材の加工許可 | ・製材許可製材許可(PDF:118KB) | 森林局 | |
26A | 既定の歩留まり率を超えた場合:歩留まりの承認 | ・歩留まり承認書(PDF:98KB) | 森林局 | |
27 | 木材製品発送準備 | ・梱包リスト ・木材製品の合法性証明書(PDF:95KB) |
原木購入者 森林局輸出用加工木材認証 チーム |
|
民間 製材所 |
28 | 木材製品輸出の承認 | ・輸出ライセンス(PDF:125KB) ・輸出申告書(PDF:150KB) |
原木購入者 商業省商業消費者局 財務計画省税関 |
29 | コンテナへの積み込み | ・写真付きの検査報告書 | 原木購入者 森林局輸出用加工木材認証 チーム(TCFPE) |
|
輸出 | 30 | ミャンマー港通関手続き | ・森林局ヤンゴン事務所からの報告書 ・積載手数料領収書 |
ヤンゴン森林事務所職員 森林局輸出用加工木材認証 チーム(TCFPE) 港管理事務所 |
2.2 法令
所有権・土地分類関連
森林全般
- 森林法(2018)(英文PDF:156KB)
- 森林政策(1996年制定)(英文PDF:78KB)
- 森林規則(1995年制定、2020年改訂作業中)(英文PDF:202KB)
- 生物多様性保全と保護区法(2018)(英文PDF:257KB)
伐採・輸送関連
- 森林伐採に関する国家行動規範(2000)
- ミャンマー木材公社木材搬出マニュアル(1971年)
- ミャンマー木材公社搬出部門指示(2008)(ミャンマー語PDF:29,818KB)
- ミャンマー木材公社搬出スタッフのための標準指示(2000)(ミャンマー語PDF:19,151KB)
- ミャンマー木材公社標準搬出作業手続き(2019)
- コミュニティフォレスト指導書(2019)(英文PDF:545KB)
- 森林部門指示
- 森林局林産品の輸送許可の作業手続き(ミャンマー語PDF:1,565KB)
木材加工関連
- 労働安全衛生法(2019)(英文PDF:626KB)
- 労働者災害補償法
- ミャンマー会社法(2017)(英文PDF:1,472KB)
- 森林局標準製材所検査作業手続き(ミャンマー語PDF:3,582KB)
- 森林局製材所設立手続き(ミャンマー語PDF:50KB)
- ミャンマー木材公社国内売買と木材工場局ガイドライン(2017)
輸出入関連
- 輸出入法(2012)(英文PDF:55KB)
- 海上税関法(英文・ミャンマー語PDF:272KB)
- 植物検疫法
- 天然資源環境保全省 原木輸出禁止(2014)(ミャンマー語PDF:1,925KB)
- 天然資源環境保全省レター04月01日/04/D01月18日73(2016)ヤンゴンの指定された3つの港からの木材輸出
- 天然資源環境保全省通達レターNo.1765/2016 押収木材について(2016)(ミャンマー語PDF:784KB)
- 天然資源環境保全省通達レターNo.61/2017紛争地域木材と土地利用転換木材(2017)(ミャンマー語PDF:1,742KB)
- 天然資源環境保全省通達レターNo.259/2017 ミャンマーチャットで販売された木材製品の海外輸出(2017)(ミャンマー語PDF:1,823KB)
- 天然資源環境保全省通達レターNo.80/2019 植林地から搬出された原木輸出の許可(2019)
- 天然資源環境保全省レターRef No.(Forest)4(1)/04(Ka)/(2126/2020)合法性確認書類に係る声明(英文PDF:976KB)
2.3 関係行政機関一覧
名称 | 略称 | 主な業務 |
天然資源環境保全省(Ministry of Nature Resources and Environmental Conservation) | MONREC | 森林環境と鉱山の2分野を管轄する省である。森林環境分野の管轄として、大臣オ フィスを含めて7つの機関が設置されており、このうちの森林局がミャンマーの森林管理全般を、ミャンマー木材公社が木材の生産・加工・流通を担っている。 |
森林局(Forestry Department) | FD | 森林法において、管理規則が定められている保全林(Reserved Forest:RF)と保護公有林(Protected Public Forest:PPF)の管理や、森林地以外の森林に覆われた土地の保全を行うことが定められている。 |
ミャンマー木材公社(Myanmar Timber Enterprise) | MTE | 木材の伐採・搬出・加工・販売を担う国営企業で、ミャンマーの天然林で、木材の伐採と搬出を実施できる唯一の機関である。 |
ミャンマー森林認証委員会(Myanmar Forest Certification Committee) | MFCC | ミャンマーの森林と木材の認証を通じて持続可能な森林管理の確立とミャンマーの木材製品の国際的な取引を促進するために、ミャンマー木材合法性証明システム(MTLAS)及びミャンマー森林認証制度(MFCS)の開発を担う機関。 |
ミャンマー森林製品および木材販売者協会(Myanmar Forest Products and Timber Merchants Association) | MFPTMA | 民間セクターによる森林を基盤とした経済開発によって、国民の所得向上に寄与することを目的とした民間組織。ミャンマーから木材を輸入する際は、ミャンマー木材公社もしくはMFPTMAのメンバー企業を通じて調達する必要がある。 |
商業省(Ministry of Commerce) | MOC | 貿易の拡大、民間セクターの発展支援、ミャンマー製品の国際市場でのシェアの拡大等を担う政府組織。木材輸出の際には、同省商業消費者局から発行される輸出ライセンスが必要となる。 |
計画財務産業省税関局(Ministry of Planning, Finance and Industry) | MOPFI | 木材輸出の際の輸出申告書を発行する機関となる |
3.その他木材等の適正な流通の確保に関する情報
3.1 ミャンマー国の森林認証スキーム
(1)ミャンマー木材合法性証明システム(Myanmar Timber Legality Assurance System:MTLAS)
ミャンマーでは、2009年に合法木材のための基準(Criteria)と指標(Indicator)(P&C)が構築された。このC&Iに基づいて、2013年に第三者認証機関によって、6つの原則、20の基準、35の指標で構成された、木材の伐採から輸出までを監視するミャンマー合法性証明システム(MTLAS)が開発されました。
MTLASの原則は、1.伐採権、2.森林管理、3.法定費用、4.他の利用者の権利、5.工場運営、6.貿易と税関で構成されています。このため、原則1~4は、森林管理認証、原則5~6が荷送認証となっています。
MTLASの第三者認証機関は2020年時点で3つの機関が登録されており、森林管理が7件と荷送が4件、認証を受けています。
(2)ミャンマー森林認証制度(Myanmar Forest Certification Scheme:MFCS)
ミャンマーでは、持続可能な森林管理のための森林認証制度として、ミャンマー森林認証制度(Myanmar Forest Certification Scheme:MFCS)の構築に取り組んでいます。2020年、森林管理認証のためのミャンマー基準と指標(2020)が、天然資源環境保全省大臣によって承認されました。この基準と指標は、11の原則64の基準124の指標から構成され、天然林、植林、森林地以外の森林、コミュニティフォレスト及びゴム林の管理を対象としたミャンマーの森林管理規格となっています。また、MFCSは、PEFCとの相互承認を目指しており、2020年5月にMFCSの技術書類を提出し、現在はPEFCによる審査を受けています。
3.2 民間の森林認証スキーム
2021年1月時点で、FSC(Forest Stewardship Council)の森林管理(FM)認証の取得実績はありませんが、CoC(Chain of Custody)認証を取得している団体は20団体となっています。なお、PEFCについては、2020年12月時点において、FM認証の取得実績はなく、CoC認証については1社が取得しています。
4.合法性の確認に活用できる書類の事例
天然資源環境保全省は2020年に「ミャンマーの合法木材を示すための書類の発行について(Forest)4(1)/04(Ka)/2026/2020」という通達を出し、以下の14種類の書類を提示することで、ミャンマー木材の合法性が証明されるとしています。14種類のうち、貿易局が発行する原産地証明を除いた13種類の書類は、ミャンマーの木材伐採から輸出までの流れで示した各種ステップの手続きの中で発行される書類です。以下に、14種の書類の概要と事例を示します。
民間貯木場での原木受け入れ証明(PDF:139KB) | |
発行対象 | 原木購入者 |
発行者 | 森林局 |
概要 | Step25:購入者の受け入れレター |
木材の加工許可書(PDF:95KB) | |
発行対象 | 原木購入者 |
発行者 | 森林局 |
概要 | Step26:製材許可書 |
歩留まり承認書(PDF:98KB) | |
発行対象 | 原木購入者 |
発行者 | 森林局 |
概要 | Step26A:歩留まり承認書 |
仕様書(PDF:113KB) | |
発行対象 | 原木購入者 |
発行者 | ミャンマー木材公社 |
概要 | Step22:仕様書(EMMD-1) |
販売販売契約書(PDF:257KB) | |
発行対象 | 原木購入者 |
発行者 | ミャンマー木材公社 |
概要 | Step23:販売契約書(EMMD-2) |
商業請求書(PDF:97KB) | |
発行対象 | 原木購入者 |
発行者 | ミャンマー木材公社 |
概要 | Step23:商業請求書(EMMD-3) |
輸送指示書(PDF:121KB) | |
発行対象 | 原木購入者 |
発行者 | ミャンマー木材公社 |
概要 | Step23:輸送指示書(EMMD-4) |
輸送事前情報書(PDF:93KB) | |
発行対象 | 原木購入者 |
発行者 | ミャンマー木材公社 |
概要 | Step23:輸送事前情報書(EMMD-5) |
輸送貨物参照(PDF:88KB) | |
発行対象 | 原木購入者 |
発行者 | ミャンマー木材公社 |
概要 | Step23:輸送荷物参照(EMMD-6) |
購入確認書(PDF:88KB) | |
発行対象 | 原木購入者 |
発行者 | ミャンマー木材公社 |
概要 | Step23:購入確認書(EMMD-7) |
原産地証明書(PDF:225KB) | |
発行対象 | 原木輸出者 |
発行者 | 貿易局 |
概要 | - |
輸出ライセンス(PDF:125KB) | |
発行対象 | 原木輸出者 |
発行者 | 貿易局 |
概要 | Step28:輸出ライセンス |
輸出申告書(PDF:150KB) | |
発行対象 | 原木輸出者 |
発行者 | ミャンマー税関局 |
概要 | Step28:輸出申告書 |
(出典) 令和2年度「クリーンウッド」普及促進事業のうち違法伐採関連情報の提供(3)掲載済み情報更新のための生産国における現地情報調査報告