合法伐採木材等に関する情報:エストニア
目次 1.木材等の生産及び流通の状況 2.合法伐採木材に関連する法令等及びその運用(法令・関係行政機関) 3.その他木材等の適正な流通の確保に関する情報(民間の森林認証スキーム) 4.合法性の確認に活用できる書類の事例 5.関連する報告書 |
注 国別情報については、平成30年度調査の成果等を、参考情報として掲載しています。
注 合法性の確認に活用できる書類の事例はこちら
1.木材等の生産及び流通の状況
エストニアは、バルト三か国の北端に位置する九州と沖縄を併せたほどの面積(4万5,339km2)の国で、森林面積は231万3千ha(森林率51%)です。森林蓄積量は4億7,600万m3(2016年)で、主要樹種はマツ(森林蓄積量の37%)、カバ(同25%)及びスプルース(同25%)です。2016年の木材伐採量は1,382万m3で、エストニア政府は持続性を保つための2020年までの森林開発計画として、年間許容伐採量を1,200万m3から1,500万m3に設定しています。
人口132万人のエストニアの国内需要は限られているため、エストニアでは製品輸出が盛んで2015年のGDPに占める輸出のシェアは80%に達しています。木材製品も燃料用材を除く需給量761万8千m3のうち、約9割を輸出しています(2016年)。主要輸出相手国は、丸太はスウェーデン、製材品はラトビア及び英国、大断面構造用集成材(グルーラム)を含む貿易分類品目44.18の製品は日本及びスウェーデンです。
エストニアの木材の輸入量は輸出量に対して少ないものの、国境付近の加工工場は日常的に隣国の木材を原料として調達しています。かつてはロシア国境付近の工場を中心に多くのロシア産丸太の輸入がありましたが、2007年及び2008年のロシアの丸太輸出税引き上げにより、ロシアからの丸太輸入量が激減しました。一方で、丸太の代替としてロシア産荒挽き製材品の輸入が増加し、製材品の相手国別輸入量はロシアが第1位(33万m3:2017年)になっています。
欧州でのグリーンプロダクツ需要の増加の追い風を受けて、エストニアでは集成材やCLTを活用した木造住宅コンポーネント(BJC: Builder's Joinery and Carpentry)の生産が活況を呈し、近隣国を中心とした欧州各国の他、アジアにも輸出しています。
2.合法伐採木材に関連する法令等及びその運用
エストニアでは、伐採及び丸太の輸送は許可制です。
森林所有者が森林計画に基づく伐採を行うときは、環境省が発行する伐採許可書が必要です。ただし、森林所有面積が5ha以下の森林所有者は、伐採の後に環境省に伐採届の届出及び伐採量の報告をし、同省の監査を受けた後に伐採許可書を申請し、受領する手続きがとられています。
風雪害、病虫害その他の突発的な森林計画に記載されていない事象により伐採が必要になったときは、森林所有者は環境省に林内作業届を提出して伐採を行います。この場合、環境省が承認した林内作業届が伐採許可書となります。
林業の主務官庁である環境省は、森林所有者への助言及び環境省の森林管理活動計画の作成を目的とした森林調査を10年に1回地籍別に行い、その結果をもとに個人有林を含む全ての森林の森林計画を作成しています。森林所有者は、森林計画に基づき伐採を含む施業を行います。環境省は、伐採と再造林の後に現場で作業の適正な実施を確認するための監査を行っています。
伐採地からの丸太搬出、山土場からの丸太輸送その他の伐採林班の外での丸太の移動には、環境省が発行する木材輸送証明書が必要です。環境省は、木材輸送証明書を特定の輸送区間別荷口別に発行します。環境省は、伐採許可書または林内作業届の申請データがないと木材輸送証明書を発行しないので、エストニアでは丸太の合法性の証明を木材輸送証明書により行うのが一般的です。法令により、伐採地から丸太を搬出するオペレータ及び丸太を輸送するトラックドライバーには、木材輸送証明書の写しまたは電子ファイルの携行が義務づけられています。
丸太の売手には、会計年度単位で少なくとも年一回、伐採権証明書兼木材売買通知書を作成し、税制委員会に提出する義務が課されています。この書類は受注荷口別に木材の販売実績を業務別にとりまとめる書類で、国税局はこの書類の情報を課税根拠として使用します。さらに、丸太を受領した木材加工工場には、統計局に木材入出荷報告(原料入荷量及び製品出荷量の報告)を行う義務が課されています。
エストニアのIT化は国際的にみても先駆的といわれ、選挙の投票をはじめ行政機関への申請、証明書発行、省庁内の決裁、その他の行政機関の手続きはインターネットやeメールを介した「ペーパーレス」で行われています。とりわけ木材取引に関する規則については、改正の必要性があると指摘されていたため、エストニア政府は書類の電子化並びに木材取引関連情報の管理及び共有化を行うシステムを導入しました。環境省は森林調査の情報及び森林所有者が行った林業活動の情報をデータベースで管理し、森林の資源状況などの地籍別情報をウェブサイト上でリアルタイムで公開し、森林の管理及び利用の透明性と生産する木材の合法性を確保しています。さらに、伐採許可書及び木材輸送証明書の情報は環境省及び国税局が、工場に入荷した丸太とそれを原料として生産した製品の情報は統計局が、伐採証明書兼木材売買通知書の情報は国税局がデータベースで管理し、これらの情報は、法令遵守の確認、合法性の確保、適正な徴税、許認可その他の政府機関の業務に活用しています。
法令
木材の合法性の確保に係る主な法令は、次のとおりです。
- 森林法 (Metsaseadus)
- 森林管理令 (Metsa majandamise eeskiri)
- 林産物輸送納品法 (Üleandmise ja vastuvõtmise akti nõuetele)
- 伐採委託及び林産物輸送に係る規則 (Metsamaterjali veoeeskiri, metsamaterjali üleandmise-vastuvõtmise aktile ja veoselehele esitatavad nõuded ning müüdud või ostetud raieõiguse või metsamaterjali kohta Maksu- ja Tolliametile esitatava teatise vorm)
関係行政機関一覧
名 称 | 主な業務 |
環境省 (Keskkonnaministeerium) |
森林管理及び木材生産の主務官庁である。法令の制定、伐採許可書及び木材輸送証明書の発行、造林及び伐採作業完了後の監査、森林調査の実施の外、林業全般の管理及び監督を行っています。 |
国税局 (Maksu-ja Tolliamet) |
税務一般。木材販売者は、伐採権証明書兼木材売買通知書を国税局に提出します。 |
統計局 (Statistikaamet) |
統計の作成・とりまとめ。加工工場は丸太の入荷実績及び製品生産実績を統計局に報告しています。 |
3.その他木材等の適正な流通の確保に関する情報
(1) 民間の森林認証スキーム
エストニアではFSC(Forest Stewardship Council)及びPEFC(Programme for the Endorsement for Forest Certification)の森林管理認証の積極的な取得がなされ、環境省も森林所有者の森林認証取得を促しています。FSC及びPEFCの両スキームの重複分を除いたエストニアの森林認証面積は、森林面積の約7割(約124万ha)です。
4.合法性の確認に活用できる書類の事例
木材輸送証明書(PDF : 99KB) 仮訳(PDF : 168KB) | |
発行対象 | 丸太の搬出及び輸送。 |
発行者 | 環境省 |
概要 | 伐採林班以外の場所で丸太を移動または輸送するときに必要な書類。 https://www.riigiteataja.ee/akt/90312 |
林内作業届(PDF : 110KB) 仮訳(PDF : 173KB) | |
発行対象 | 森林計画に記載されていない伐採。 |
発行者 | 環境省 |
概要 | 森林所有者は森林計画に記載されていない風雪害、病虫害その他の突発的事象により伐採が必要になったとき環境省に届出る書類。 https://www.riigiteataja.ee/aktilisa/0000/1276/9217/12771784.gif# |
伐採証明書兼木材売買通知書(PDF : 461KB) 仮訳(PDF : 137KB) | |
発行対象 | 木材販売者が国税局に提出。 |
発行者 | 国税局 |
概要 | 木材の販売者が国税局に提出する書類。 |
(出典:エストニア環境省林業部)
5.関連する報告書
- (平成30年度調査)平成29年度「クリーンウッド」利用推進事業のうち生産国における現地情報の収集(欧州地域等)(H31.3月)(エストニア抜粋)(PDF : 3,627KB)
- (平成30年度調査)平成29年度「クリーンウッド」利用推進事業のうち生産国における現地情報の収集(欧州地域等)調査結果報告会(H31.2.15)エストニア資料(PDF : 793KB)