合法伐採木材等に関する情報:中国
中国
(2021年4月1日全面更新)
注 国別情報については、平成29年度、令和元年度、令和2年度の成果等を参考情報として掲載しています。
1. 木材生産・流通の特徴の概要
1.1 森林資源の概況
中国の総国土面積は942百万haであり、そのうち森林は208.3百万haであることから、総国土面積の22.1%に相当します。森林面積は毎年増加しており、2010年から2015年にかけては毎年平均0.8%拡大しており、同期間の国別の森林拡大としては世界最大です。
森林の所有形態は、国有林が39%、集団林が61%であり、集団林化が加速しています。
森林分布としては、主に福建省・浙江省を中心とした華中・華南地区の常緑針葉樹林や、吉林省・黒竜江省を中心とした東北部の落葉広葉樹林及び落葉針葉樹林が存在します。
森林分類として、全森林面積のうち天然林は一次林が5.6%、二次林が56.5%です。天然林は主に東北、華南、及び華中南部やチベット自治区などに分布します。
国産材として現在調達可能な植林における主な用材樹種と、原則として現在調達不可能な伐採禁止以前の天然林における主な用材樹種及びCITES登録樹種は下表のとおりです。
表 植林・天然林における主な用材樹種とCITES登録樹種
植林における主な用材樹種(英語通称及び学術名) | |||||
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伐採禁止以前の天然林における主な用材樹種(英語通称及び学術名) | |||||
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CITES登録樹種(46種・学術名) | |||||
【附属書2】
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【附属書3】
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(出典)「クリーンウッド」利用推進事業のうち生産国の現地情報収集事業報告書(令和2年3月報告)
1.2 木材生産と流通
2018年の中国の木材消費は55,675万m3で、世界一の木材消費国となっています。中国国内の 木材総生産量は、25,820万m3(原木8,811万m3、農家自家用材2,275万m3、木質ファイバーボードや合板の原料材14,734万m3)で消費量の46%です。現在の中国の木材供給は国内で生産された国産材と海外から輸入した輸入材で成り立っており、2015年頃から輸入材が国産材を上回るようになりました。
1.3 木材の貿易
中国の木材輸入量は、2017年以降1億m3を超え、ロシア、東南アジア、オセアニア島嶼国,アメリカ、アフリカ諸国を含む世界各国から木材を輸入しています。なお、従来からの対中丸太輸出国における原木禁輸や関税引き上げの影響により、原木の代わりに製材類が多く輸入されるようになりつつあります。一方、中国から海外への木材製品の輸出は、合板やファイバーボード類と内装材や家具類が多く占めています。
表 中国の木材及び木材製品の輸入出量
区分 | 輸入量 | 輸出量 | |||||
2008年 | 2013年 | 2018年 | 2008年 | 2013年 | 2018年 | ||
原木 (万m3) |
針葉樹 | 1854.2 | 3293.2 | 4161.3 | 0.3 | 1.3 | 7.2 |
広葉樹 | 1102.8 | 1199.6 | 1813.9 | ||||
(うち熱帯木) | (232) | (198.9) | (822.1) | (0) | (0.04) | (6.0) | |
製材 (万m3) |
針葉樹 | 364.5 | 1691 | 2488.1 | 68.5 | 45.4 | 31.2 |
広葉樹 | 340.8 | 703.7 | 1188.5 | ||||
(うち熱帯木) | (41.5) | (41.7) | (656.4) | (-) | (0.8) | (0.4) | |
チップ(万トン) | 105.6 | 914.9 | 1284.3 | - | - | - | |
薄板(万トン) | 6.9 | 45 | 71.9 | 11.0 | 15.3 | 32.3 | |
合板(万トン) | 36.3 | 60.4 | 82.2 | 729.4 | 1041.7 | 645.8 | |
パーティクルボード(万トン) | 24.3 | 38.1 | 69.2 | 12.6 | 17.0 | 23.2 | |
パーティクルボード(万トン) | 24.3 | 38.1 | 69.2 | 12.6 | 17.0 | 23.2 | |
ファイバーボード(万トン) | 33.6 | 7.3 | 19 | 243.5 | 236.7 | 179.1 | |
紙と紙製品(万トン) | 373.6 | 297.1 | 640 | - | - | - | |
木製家具(万点) | 275.1 | 585.2 | 886.2 | 1.7 | 2.0 | 2.7 | |
フローリング(万トン) | 1.2 | 1.2 | 4.7 | 46.8 | 39.9 | 27.5 | |
木製ドア(万トン) | 437.9 | 556.2 | 608.7 | 30.3 | 34.2 | 33.8 | |
木製・木製骨組椅子類(万点) | 39.7 | 153.2 | 338.6 | 7574.9 | 8973.5 | 11743.8 | |
パルプ・古紙・段ボール(万トン) | 3268.7 | 4470.3 | 4183.7 | 7.2 | 8.4 | 10.2 | |
木製食器(万トン) | - | - | - | 21.7 | 15.2 | 30.2 |
(出典)中国の木材・木材製品流通業界年鑑2018(中国木材及び木材製品流通協会、2019 年)
近年の日中木材貿易状況をみると、日本のスギ材をはじめ、主に針葉樹材を中心に中国へ原木輸出が徐々に増えています。中国木材及び木材製品流通協会2019年発行の「中国の木材・木材製品流通業界年鑑2018」によると、中国の日本からの原木輸入量は2008年の約1.5万m3から2014年には約31.2万m3になり、2018年には92.8万m3に達しました。
一方、対日向け木材輸出は、完成木製家具に加えて、ブロックボード・単板積層材(LVL)、合板やフリー板などのボード類が中心です。
(ア) 合法性の確認に活用できる書類の事例
1.3.1 森林伐採・木材流通に係る行政体制
中国の森林の運営管理の基本的な法的根拠は「中華人民共和国森林法(以下「森林法」)」及び「中華人民共和国森林法実施条例(以下「森林法実施条例」)」になります。また、森林法及び森林法実施条例で処理しきれない紛糾等に関して、憲法、民法、土地管理法、物権法などの法律も併用されます。
最新の森林法は2020年7月1日より施行されました(以下「新森林法」(PDF:0.38MB))。しかし、新森林法施行にともなう森林法実施条例は2021年2月現在ではまだ発布されていません。このため、2021年2月時点では、従来の森林法実施条例が適用され、新森林法の条項と抵触する場合は、新森林法に照らして国務院林業主管部門の意見を求めながら適宜対処することになっています。
1.3.2 新森林法による変更点
2020年7月の新森林法施行に伴う、合法木材の伐採・加工・流通に関連する主要な変更点は以下のとおりです。
(1)森林区分の再分類
従来の5種類の森林区分(防護林、用材林、経済林、薪炭林、特殊用途林)方式を取り消し、すべての林地とその林地にある森林を「公益林」と「商品林」の二つのカテゴリーに分類しました(新森林法第47条、第48条、第50条)。
(2)森林の伐採
新森林法においても森林伐採に関する許認可制度は継続されますが、林木伐採許可証の発行条件、発行対象、申請資料等が詳細に示されました(新森林法第56条~第61条)。
また、森林伐採量については、省・自治区・直轄市人民政府林業主管部門が、それぞれの所在行政区域の年度伐採限度額を策定し、国務院の林業主管部門の意見を取り入れたうえで、省・自治区・直轄市人民政府の批准を得てから実施すること、同時にその伐採計画は国務院に報告し記録に載せることなどが規定されました(新森林法第54条)。
(3)木材の加工・流通
新森林法施行以前は「木材生産地から木材を運び出す場合林業主管機関が発行する運送許可書を所持しなければならない」と規定されていましたが、新森林法ではこの条項が削除され、木材の運送に対する特別扱いはなくなりました。言い換えれば、木材は一般的な物流範疇に帰され、運送に関する法令等はなくなりました。
また、これまでは同一林区内で丸太や挽材、木材チップ等の一次木材製品の取引や加工をする場合は、県級以上の林業行政主管部門から木材経営加工許可証を取得する必要がありましたが、新森林法ではこの木材加工許可証に関する規定も撤回されました。
一方で、木材経営加工企業は、原料と産品の入出荷台帳を整備すること、如何なる企業・団体、個人もその木材が盗伐・濫伐等非合法に由来することを確実に承知しながらそれを購入、加工、運送してはならないことが定められました。これによって木材の貿易、加工、運送にかかる関連企業に対して、その木材は合法であることを明確に保証する義務を要求がされるようになりました(新森林法第65条)。
1.3.3 合法的な伐採から輸出までの手続き
森林は林地所有権の分類に基づいて、全人民所有林(国有林)と労働大衆集団所有林(郷・鎮・村等の集団経済組織または村民委員会が所有)に区分されます。
国有林の使用権は、主に国有森林・工業グループや、国有林業局、国有林場等の経営管理機関により行使されています。労働大衆集団所有林の使用権は、主に郷村林場や農家、企業が請け負います。請け負われた林地使用権(林地請負経営権)は、相続、譲渡、抵当化、担保化、および株式化が可能です。請負の際には、県林業局等が、下記の法令に基づき、林地所有権に係る紛争が無いことを確認した上で、全国統一様式による林権証(PDF:0.17MB)を発行します。林地使用権または林地請負経営権によって森林施業が可能になり、その成果として材木所有権を保持することができます。
森林を管理する全ての事業体は、森林法および森林法実施条例に基づいて、森林管理計画を策定するとともに、木材生産計画も策定し、成長量を超過しない範囲で年間木材収穫量を決定する必要があります。また、伐採に当たっては、伐採許可(PDF:0.17MB)を施業開始前に取得する必要があります。伐採許可の申請に必要な書類・条件は以下のとおりです。
- 林地所有権証明書または林権証
- 伐採施業計画
- 前年度の更新検収合格証(該当する場合)
- 更新費の支払
伐採施業計画は、森林伐採作業規程に則って作成し、管轄林業当局による承認を得る必要があります。伐採施業は、伐採施業計画及び伐採許可証の記載内容に基づいて行い、伐区の範囲や伐採量は、計画段階で定められた誤差範囲を超えてはならないことになっています。伐採施業後には、下記法令に基づいて、伐採許可を発行した当局が現場検査を実施し、合格した場合に更新検収合格証が発行されます。
なお、伐採に当たり、木材や竹、その他林産物の素材購入者は、更新費及び植物検疫費の2種類の関連費用を支払う必要があります。更新費は、各級担当林業局が徴収して、伐採地の復元・維持に使用されます。
木材の加工と流通段階では、新森林法によって、木材経営加工許可証や運輸許可証は取得する必要がなくなりました。ただし、木材経営加工企業は、原料と産品の入出荷台帳を整備することが定められています。
木材や木材製品の輸出入時は、税関法に基づき、HSコードによる分類(樹種)、規格、量の提示や、書類の提出が義務付けられています。また、輸入の場合、下記の規定に基づき、輸入相手先国の発行する植物検疫証明書(PDF:0.14MB)を提出して検疫申告をする必要があり、輸出の場合も同様になります。
1.3.4 非森林地における植林木の取扱概要
非森林指定地の共有地・遊閑地などにおいて、農民などが零細な規模でポプラなどを植林生産する事例が存在します。その木材生産については、森林法ではなく土地管理法のみに依り、集団所有地の権利規定が適用されることになります。
この木材合法性を確認するためには、伐採地である集団所有地の範囲を特定した上で、その地表物の使用権を請け負い、木材生産を行う村落の構成員などの伐採者を特定して、それらの地図や名簿を作成することが重要です。
1.3.5 法令
所有権・土地分類関連
- 憲法(中华人民共和国宪法)(PDF:0.43MB)
- 民法通則(中华人民共和国民法通则)(PDF:0.33MB)
- 新森林法(中华人民共和国森林法)(PDF:0.38MB)
- 森林法実施条例(中华人民共和国森林法实施条例)(PDF:0.21MB)
- 土地管理法(中华人民共和国土地管理法)(PDF:0.29MB)
- 物権法(中华人民共和国物权法)(PDF:0.83MB)
林地所有権に係る紛争の取扱
- 農村土地契約法(中华人民共和国农村土地承包法)(PDF:0.36MB)
- 農村土地契約管理の紛争解決に関する仲裁法(中华人民共和国农村土地承包经营纠纷调解仲裁法)(PDF:0.19MB)
- 林木及び林地所有権の紛争処理方法(林木林地权属争议处理办法)(PDF:0.16MB)
林権証
- 林木及び林地所有権の登記の管理方法(林木和林地权属登记管理办法)(PDF:0.16MB)
伐採施業計画
- 森林の伐採作業に関する規程(中华人民共和国行业标准森林采伐作业规程)(PDF:1.42MB)
- 人工林の伐採管理の完了に関する国家林業局意見(国家林业局关于完善人工商品林采伐管理的意见)(PDF:0.18MB)
伐採
- 森林の伐採及び更新の管理方法(森林采伐更新管理办法)(PDF:0.23MB)
輸出入
- 輸出入品の関税分類に関する規定(中华人民共和国海关进出口货物商品归类管理规定)(PDF:0.12MB)
- 植物検疫出入国実施規定(中华人民共和国进出境动植物检疫法实施条例)(PDF:0.37MB)
(イ) その他木材等の適正な流通の確保に関する情報
1.4.1 中国の森林認証スキーム
中国森林認証制度(China Forest Certification Scheme :CFCS)は 2001 年から構築の計画が始まりました。2009年に「中国森林認証実施規則」が策定され、2010年に「中国森林認証委員会(China Forest Certification Council:CFCC)」が設立されることにより、中国森林認証制度(CFCS)の運営が開始されました。
2020年2月現在、CFCCによる森林管理認証を取得した森林面積は5,818,293ha、CoC認証取得企業は361社に達しています。
中国森林認証委員会は2012年に「中国森林経営認証とサプライチェーン認証国家基準」をもって、PEFC事務局に認証システム相互承認申請を提出し、2014年にCFCSとPEFCとの相互承認が実現しました。
1.4.2 民間の森林認証スキーム
2020年2月現在、中国では1,185,610haの森林がFSCの森林管理認証を取得しています。また、CoC認証取得企業は11,919社に上っています。
2020年12月現在、PEFC認証を取得した森林面積は1,282,715haで、PEFC CoC認証を取得した企業は425社になっています。なお、PEFCの推定によると、2019年中期までで、中国でFSCとPEFCの認証を同時に取得した森林面積は198,785haになりました。
1.4.3 森林伐採・木材流通の証明システムの概要
2020年時点で中国において運用中の森林伐採・木材流通の証明システムは存在しません。一方で、任意で木材取扱事業者が利用可能な、中国木材合法性確認システム(Chinese Timber Legality Verification System、以下 CTLVS)の導入を今後予定しており、中国林業科学院と中国国家林業草原局林産品国際貿易研究センター(以下 CINFT)が構築を主導しています。
中国政府は英国政府と Collaboration on International Forest Investment and Trade (InFIT) プログラムによる技術提携をしており、InFIT 第二期(2019-2022年)期間中にCTLVSを完成・導入予定です。
1.4.4 木材合法性確認に向けた最新の取組の概要
〈1〉国別ガイドラインの作成
中国林業科学院の林業科技信息研究所が、各国の現地当局と協力しながら、英国国際開発庁の支援の下で、合法性基準の国別ガイドライン・「中国系林業企業のための海外における持続可能な経営、貿易、投資に向けた国別ハンドブック(仮訳)」を作成しています。既にモザンビーク、ガボン、ガイアナ、ラオス、インドネシア、ミャンマー、ロシアを対象に作成済みで、更にパプアニューギニアとソロモン諸島について作成予定です。
〈2〉木材合法性確認の第三者認証制度
第三者認証機関が、世界各国で木材輸入事業者によるデューデリジェンス・システム(DDS)を機能評価して、合格したDDSを認証する第三者認証制度を運営しています。中国から木材製品を輸入するEUや豪州の事業者等を顧客に、そのDDSが木材原産国である第三国と加工貿易国である中国のそれぞれの国内法に対応するものであるかを、評価・認証しています。
〈3〉中国系木材取扱事業者間の責任ある調達ネットワーク
CTLVSの完成前に、上述の国別ガイドラインを遵守する中国内外の中国系木材取扱事業者が、互いに連携して合法木材の責任調達をより容易に行うためのネットワークを構築して、国際NGOや国際機関がその動きを支援しており、中国系参加企業からの調達が可能です。
1.4.5 違法伐採の関連情報の概要
欧米諸国の一部の当局や研究機関等が、木材製品の合法性確認に科学的分析手法を使用した際の分析結果が公表されており、中国製木材製品のうち、完成木製家具に使用したCITES登録種である中露産のモンゴリナラ材を他国産のナラ材として虚偽申告する事例や、合板の心材や表板・裏板(フェイスバック)に使用した樹種を虚偽申告する事例が確認・報告されています。
中国国内では違法伐採を「盗伐・濫伐」と表現しています。中国国内の盗伐・濫伐に関して直近では、2019年8月に広東省湛江市で35ムー(約2.3ha)のユーカリ林(集団所有林)が濫伐され、2020年4月に容疑者が摘発され刑事処罰を受けたことがメディアによって報道されました。
(ウ)合法性の確認に活用できる書類の事例
林権証(PDF:0.17MB) | |
発行対象 | 林権証保持者 |
発行者 | 県林業局等 |
概要 | 権利者の名称、権利を有する林地の状況(所在地、面積、主要樹種、位置情報等)が記載されている。 |
伐採許可(PDF:0.17MB) | |
発行対象 | 伐採者 |
発行者 | 対象が集団林の場合は県級林業局 その他の場合は、申請主体が属する等級が該当する県、省、または国家林業局の各級林業当局 |
概要 | 伐採地の所在、樹種、伐採許可量や伐採機関が記載されている。 |
植物検疫証明書(PDF:0.14MB) | |
発行対象 | 木材及び木材関連製品発送人 |
発行者 | 国家質量監督検験検疫総局が各地に設置した出入国検査検疫機関および国家質量監督検験検疫総局が認可した検査機関 |
概要 | 製品名と樹種名等が記載されている。 |
(出典)「クリーンウッド」利用推進事業のうち生産国情報収集事業 (平成30年3月報告)
(エ)委託・補助事業の成果
(1)平成29年度
「クリーンウッド」利用推進事業のうち生産国情報収集事業
(2)令和元年度
「クリーンウッド」利用推進事業のうち生産国の現地情報収集事業(大洋州地域等)
(3)令和2年度
「クリーンウッド」普及推進事業のうち違法伐採関連情報の提供(3)掲載済み情報更新のための生産国における現地情報調査