事例一覧
林政統一と戦後復興への貢献(1945年~1970年)
林政統一
事例:御料林の昔と今・神宮備林(じんぐうびりん)について
戦前に国が管理していた森林の管理区分の一つに、「御料林」がありました。御料林は、宮内省の組織である帝室林野局が、皇室財産として管理していた約141万ha(昭和12(1937)年12月末時点)の森林で、北海道及び木曽地域を中心とする中部地方に多く分布していました。
御料林の一部には、明治時代末から「神宮備林」という特有の目的を持つ森林が設定されていました。神宮備林は、20年に一度、伊勢神宮の社殿を建て替えることを中心とした伝統行事である式年遷宮に必要となる大径材を、将来にわたって継続的に確保するため、木曽川流域に所在する、ヒノキを中心とした優良木からなる森林を指定したものです。
戦後の林政統一により、御料林は他の国有林と統合されることとなったことに伴い、神宮備林制度は廃止されましたが、旧神宮備林は、木曽ヒノキ大径材を長期的に生産する森林などとして、その後も引き続き管理されてきました。
現在でも、式年遷宮行事の際には、木曽森林管理署および東濃森林管理署の管内にある、かつての御料林・神宮備林において、伝統的な伐採行事を引き継ぐ御杣始祭(みそまはじめさい)(長野県木曽郡上松町)および裏木曽御用材伐採式(うらきそごようざいばっさいしき)(岐阜県中津川市)が行われています。

御料林位置図
※資料提供:中部森林管理局
出ノ小路(いでのこうじ)神宮備林(東濃森林管理署)
※資料提供:中部森林管理局
令和7年御杣始祭
※資料提供:中部森林管理局
国民からの要請の多様化(1970年~1990年)
レクリエーション需要
事例:レクリエーションの森について
昭和44(1969)年に開始した自然休養林制度では、都市周辺の国有林のうち、特に景観が優れ、日帰りで行楽のできる場所を対象に、国内10箇所を自然休養林として初めて設定し、国民の保健休養の場として開放しました。自然休養林では、野外レクリエーションに必要な休憩所、駐車場、トイレ、展望台等の施設の設置・整備を順次行いました。
昭和48(1973)年には、レクリエーションの森制度が創設され、令和7(2025)年4月1日現在、レクリエーションの森として国民の利用のため管理されている国有林は563箇所、総面積は24万haとなっており、年間の利用者数は延べ1億人を超えています。また、平成29(2017)年には、全国のレクリエーションの森のうち、特に景観等の優れた93箇所を「日本美しの森お薦め国有林」として選定し、多言語による情報発信や重点的な環境整備等に取り組んでいます。
持続可能な森林経営への転換(1990年~2026年)
公益重視の森林経営
事例:赤谷プロジェクト(関東)
「赤谷プロジェクト」は、群馬県みなかみ町北部、新潟県との県境に広がる約1万haの国有林「赤谷の森」を舞台として、平成15(2003)年から地域住民で組織する「赤谷プロジェクト地域協議会」、(公財)日本自然保護協会、林野庁関東森林管理局の3つのセクターが協働して生物多様性の復元と持続的な地域づくりを目指す取組です。
赤谷プロジェクトの特徴として、(1)「赤谷の森」の管理・運営において、各セクターが「現実の森林を将来に向けてどのような姿にしていくのか」などの意見を出しあい、地域を重視した合意形成・意思決定を行い、地域管理経営計画等の公的な計画に反映させる仕組みが確立、(2)生物多様性に係る課題を反映させるため、科学的取組を審議する「自然環境モニタリング会議」を常設し、普遍性を重視した管理体制の確立、(3)個別課題ごとに専門家・実務担当者によるワーキンググループを設置し、多様な主体とともにモニタリングなどの活動を推進する実行体制の確立の3点が挙げられます。
赤谷の森約1万haのうち、約3千haがスギやカラマツなどの人工林となっており、赤谷プロジェクトでは、人工林を伐採し、光環境や空間を確保しながらその場所の自然林を構成する多様な広葉樹の再生や侵入を誘導する取組や、小規模皆伐などの森林施業の実施により、赤谷の森に生息するイヌワシ(絶滅危惧IB類 (EN))やクマタカ(絶滅危惧IB類 (EN))の採餌環境を確保する取組など、生物多様性に富む豊かな森林環境を維持・向上する取組を進めています。
平成29(2017)年には、みなかみ町がユネスコエコパークに登録され、赤谷プロジェクトの取組がその理念と合致する地域の中核的な取組の一つとして位置づけられました。
参考:赤谷プロジェクトとは(関東森林管理局)
仙ノ倉山より臨む赤谷の森
※資料提供:関東森林管理局
事例:綾の照葉樹林プロジェクト(九州)
「綾の照葉樹林プロジェクト」は、学術的にも貴重な宮崎県綾川流域に残された日本最大級の原生的な照葉樹林を厳正に保護するとともに、この照葉樹林の周辺に存在する二次林や人工林を照葉樹林に復元するため、平成17(2005)年に九州森林管理局・宮崎県・綾町・(公財)日本自然保護協会・(一社)てるはの森の会の5者が、「綾川流域照葉樹林帯保護・復元計画-綾の照葉樹林プロジェクト-」の協定書に基づき、連携・協力・協働して取り組むプロジェクトです。
国有林約9千haを核に、隣接する県有林、町有林も加えた約1万haを舞台として、原生的な照葉樹林で保護する区域、二次林や人工林から照葉樹林に復元を図る区域、森林環境教育への利用を目指す区域、持続的な林業経営を行う区域にゾーニングし、適切に管理しています。
これらの区域においては、スギ・ヒノキ人工林を照葉樹林に復元するために、林内の明るさを高め、周辺の保護樹帯からの種子供給等により照葉高木種の発生・生育を促すための間伐を進めるとともに、シカ食害等から照葉樹林を保護するネットの設置などを地元企業のボランティアと連携して行うことで、50~100年後には保護林と復元された区域により6千ha以上の連続した広大な照葉樹林の復元を目指しています。
このような取組等が評価され、平成24(2012)年、綾の照葉樹林プロジェクトの森林が、綾ユネスコエコパークに登録されました。
令和7(2025)年5月に協定締結20年を迎えたことから、プロジェクトの理念やこれまでの取組について広く発信することを目的として、令和8(2026)年1月に20周年記念報告会等を開催しました。
参考:綾の照葉樹林プロジェクトとは(九州森林管理局) 
綾の照葉樹林
※資料提供:九州森林管理局




