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第1部 特集 第1節 持続可能な社会の実現に向けた世界的潮流と我が国の森林資源の充実(1)

(1)持続可能な社会の実現に向けた世界的潮流

(気候変動や生物多様性に関する動向)

持続可能な社会の実現に向けて、気候変動や生物多様性の損失など地球規模の課題への対応が急務となっている中、森林、土壌、水、大気等の自然由来の資源である「自然資本」の重要性に対する認識が広がっている。気候変動対策や生物多様性の保全については、1992年に採択された気候変動に関する国際連合枠組条約(国連気候変動枠組条約)と生物の多様性に関する条約(生物多様性条約)の下で、国際的な取組が進められてきた(資料 特-1)。

資料 特-1 気候変動と生物多様性をめぐる動き

気候変動対策については、2015年の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において、2020年以降の国際的な枠組みとしてパリ協定が採択された(*1)。同協定では、世界全体の平均気温の上昇を産業革命以前と比較して2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑制する努力を追求し、今世紀後半に人為的な温室効果ガスの排出と吸収源による除去の均衡(ネット・ゼロ)を達成することを目指している。これを受けて、我が国を含む多くの国が2050年ネット・ゼロ(*2)の実現を目標に掲げており、我が国においては、令和7(2025)年2月に閣議決定された地球温暖化対策計画等に基づく取組を進めている。農林水産省においても、令和7(2025)年4月に「農林水産省地球温暖化対策計画」を改定し、これに基づき、農林水産分野における気候変動の緩和策を推進している。

また、生物多様性の保全については、2022年の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)第二部において、それまでの「愛知目標(*3)」に代わる新たな目標として「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択された。同枠組では、2030年までに、生物多様性の損失を止め、反転させ、回復軌道に乗せるための緊急の行動をとるとの目標を掲げており、この考え方は、2021年のG7の合意文書において「ネイチャーポジティブ(自然再興)」と呼ばれている。これを受けて、我が国においては、令和5(2023)年3月に「生物多様性国家戦略2023-2030」が閣議決定され、令和12(2030)年のネイチャーポジティブの実現を目指して同戦略に基づく取組を進めている。農林水産省においても、同月に「農林水産省生物多様性戦略」を改定し、これに基づき、生物多様性保全を重視した農林水産業を推進している。


(*1)パリ協定の採択については、「平成27年度森林及び林業の動向」トピックス4(5ページ)を参照。

(*2)2050年までに、人為的な温室効果ガスの排出と吸収源による除去の均衡を図り、排出を全体としてゼロにすること。

(*3)2020年までの短期目標「生物多様性の損失を止めるために効果的かつ緊急な行動を実施する」を達成するために定められた20の個別目標。



(気候変動対策や生物多様性の保全への森林・木材の貢献)

森林は、国土の保全、水源の涵(かん)養、林産物の供給等の機能を有することに加え、気候変動対策や生物多様性の保全においても、二酸化炭素の吸収源や生態系の構成要素として重要な役割を果たしている。森林は、光合成により大気中の二酸化炭素を吸収し、幹や枝などの形で炭素を固定しており、その吸収量は我が国における二酸化炭素吸収量の大部分を占め(*4)、地球温暖化防止に大きく貢献している。同時に、森林は多種多様な生物の生育・生息の場となっており、生物相が豊かな我が国にあって、陸域で最大の生物種の宝庫である。

また、森林から生産される木材を建築物等に利用することは、森林が固定した炭素を長期的に貯蔵することとなるほか、木材は製造・加工時のエネルギー消費が鉄やコンクリートなどの建築資材よりも比較的少ないことから、建築物等のライフサイクルを通じた二酸化炭素の排出削減にも貢献する。さらに、建築物等に利用された後の木材は、化石燃料の代替として利用することができ、二酸化炭素の排出削減に寄与する。


(*4)我が国の森林の二酸化炭素吸収量については、第1章第1節(1)50ページを参照。



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