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林野庁

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第1部 第4章 第2節 国有林野事業の具体的取組(3)

(3)「国民の森林(もり)」としての管理経営等

(ア)「国民の森林(もり)」としての管理経営

(国有林野事業への理解と支援に向けた多様な情報受発信)

国有林野事業では、国有林野を「国民の森林(もり)」として位置付け、国民に対する情報の公開、フィールドの提供、森林・林業に関する普及啓発等により、国民に開かれた管理経営に努めている。

また、国民の意見を聴取するため、一般公募により「国有林モニター」を選定し、「国有林モニター会議」や現地見学会、アンケート調査等を行っている。

このほか、SNSの活用やホームページの内容の充実に努めるとともに、森林管理局の新たな取組や年間の業務予定等を公表するなど、国民への情報発信に積極的に取り組んでいる。


(森林環境教育の推進)

国有林野事業では、森林環境教育の場としての国有林野の利用を進めるため、森林環境教育のプログラムの整備、フィールドの提供等に取り組んでいる。

この一環として、学校等と森林管理署等が協定を結び、国有林野の豊かな森林環境を子供たちに提供する「遊々(ゆうゆう)の森」を設定している。令和5(2023)年度末時点で145か所で協定が締結され、森林教室や自然観察、体験林業等の様々な活動が行われている。


(NPO、地域、企業等との連携)

国有林野事業では、NPO、地域、企業等と連携して国民参加の森林(もり)づくりを進めている。

森林(もり)づくりを行うことを希望するNPO等に森林(もり)づくりのフィールドを提供する「ふれあいの森」や、地域住民や民間団体等と合意形成を図りながら、協働・連携して地域や森林の特色を活かした森林整備・保全活動を実施する「モデルプロジェクトの森」を設定しており、令和5(2023)年度末時点で、それぞれ118か所、12か所となっている。

また、企業の社会的責任(CSR)活動等を目的とした森林(もり)づくり活動へのフィールドを提供する「社会貢献の森」、森林保全を目的とした森林パトロールや美化活動等のフィールドを提供する「多様な活動の森」を設定しており、令和5(2023)年度末時点で、それぞれ147か所、84か所となっている。さらに、分収林制度を活用し、企業等が契約者となって社会貢献、社員教育及び顧客とのふれあいの場として森林(もり)づくりを行う「法人の森林(もり)」も設定しており、令和5(2023)年度末時点で459か所となっている。

このほか、歴史的に重要な木造建造物や各地の祭礼行事、伝統工芸等の次代に引き継ぐべき木の文化を守るため、「木の文化を支える森」を設定しており、令和5(2023)年度末時点で23か所となっている(事例4-5)。

事例4-5 「木の文化を支える森」での歩道整備活動

岐阜県の東濃森林管理署は、歴史的建造物の修繕に必要な大径木の森づくりのため、管内の加子母裏木曽(かしもうらきそ)国有林において「木の文化を支える森」として裏木曽古事(うらきそこじ)の森を設定し、地域の協議会と協力しながら管理を行っている。この一環として、裏木曽古事の森の取組を数多くの人に広くPRするため、令和6(2024)年7月に、「初代大ヒノキ(注)」に至る歩道整備のボランティア活動が協議会の呼び掛けにより行われた。

歩道整備には地方公共団体やまちづくり協議会、区⾧会などから35名が参加し、案内看板の設置、腐食した丸太橋の架替え、転石除去など、60年以上前に作られた見学コースの修繕が行われた。また、活動後には地域の木の文化の魅力を発信してもらえるよう、参加者に対して学習会も併せて開催し、大ヒノキまでの道中の見どころや、地域の森林・林業の歴史に関する解説などを行い、多くの好評を得た。

東濃森林管理署では他にも、中津川(なかつがわ)市や岐阜県恵那農林事務所と共同で「なかつがわ山の日山DAY(さんデイ)」(山の日イベント)を開催するなど様々な活動を行っており、これらのイベントを通じてより多くの方に木曽のヒノキ林と歴史を知ってもらうことを目指している。

(注)江戸時代後期、焼失した江戸城再建のために幕府から派遣された役人により「ご神木」として残された木曽山随一の大檜のこと。昭和9(1934)年の室戸台風で折れてしまい、昭和29(1954)年に学術参考のため伐採された。切り株の直径は約2.2m、断面は2畳以上の広さがある。



(イ)地域振興への寄与

(国有林野の貸付け・売払い)

国有林野事業では、農林業を始めとする地域産業の振興、住民の福祉の向上等に貢献するため、地方公共団体や地元住民等に対して、国有林野の貸付けを行っている。令和5(2023)年度末時点の貸付面積は7.2万haで、道路、電気・通信、ダム等の公用、公共用又は公益事業用の施設用地が49.4%、農地や採草放牧地が13.9%を占めている。

このうち、公益事業用の施設用地については、FIT制度及びFIP制度(*11)に基づき経済産業省から再生可能エネルギー発電事業の認定を受けた事業者等も貸付対象としており、令和5(2023)年度末時点で349ha(*12)2の貸付けを行っている。

このほか、令和5(2023)年度には、ダム用地や道路用地等として、計257haの国有林野の売払い等を行った。


(*11)FIT制度及びFIP制度については、第3章第2節(3)168-169ページを参照。

(*12)林野庁ホームページ「国有林野の活用」



(公衆の保健のための活用)

国有林野事業では、優れた自然景観を有し、森林浴、自然観察、野外スポーツ等に適した国有林野について、令和6(2024)年4月時点で571か所(約24万ha)を「自然休養林」や「自然観察教育林」等の「レクリエーションの森」に設定している(資料4-10)。令和5(2023)年度には、「レクリエーションの森」において、延べ約1.1億人の利用があった。

「レクリエーションの森」では、地元の地方公共団体を核とする「レクリエーションの森」管理運営協議会を始めとした地域の関係者と森林管理署等が連携しながら、利用者のニーズに対応した管理運営を行っている。一部の地域では、利用者からの協力金による収入のほか、「サポーター制度」に基づく企業等からの資金も活用している。令和5(2023)年度末時点で10か所の「レクリエーションの森」において、延べ14の企業等がサポーターとなっている。

資料4-10 「レクリエーションの森」の設定状況

データ(エクセル:24KB)

(観光資源としての活用の推進)

日本美しの森 お薦め国有林

「レクリエーションの森」のうち、特に観光資源としての潜在的魅力がある93か所を「日本美(にっぽんうつく)しの森 お薦め国有林」として選定しており(*13)(資料4-11)、外国人観光客も含めた利用者の増加を図るため、標識類等の多言語化、歩道等の施設修繕などの重点的な環境整備及びホームページ等による情報発信の強化に取り組んでいる。令和7(2025)年3月に新たに剣山自然休養林(徳島県)を加え、全14か所の「日本美(にっぽんうつく)しの森 お薦め国有林」の魅力を伝える動画をホームページ等で公開したほか、SNS等に広告を掲載するなど、国内外の幅広い層に対して情報を発信している。また、環境省との連携を強化し、優れた自然の保護と利用の両立を図りながら、「レクリエーションの森」と国立公園が重複している箇所における更なる利便性の向上に取り組んでいる。

資料4-11 「日本美しの森 お薦め国有林」の例
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(*13)「日本美しの森 お薦め国有林」の選定については、「平成29年度森林及び林業の動向」トピックス4(8-9ページ)を参照。


お問合せ先

林政部企画課

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