第1部 第1章 第4節 国際的な取組の推進(3)
(3)我が国の国際協力
(我が国の取組)
我が国は、JICAを通じて、専門家派遣、研修員受入れ及び機材供与を効果的に組み合わせた技術協力、研修等を実施している(資料1-38、事例1-13)。令和6(2024)年度にはアルバニア及びボスニア・ヘルツェゴビナでの防災・減災対策やインドネシアでの気候変動緩和策に関し、新たに森林・林業分野の技術協力プロジェクトを開始した。
また、JICAを通じて開発資金の低利かつ⾧期の貸付け(円借款)を行う有償資金協力による造林、人材の育成等の活動支援や、供与国に返済義務を課さない無償資金協力による森林管理のための機材整備等を行っている。
このほか、林野庁は補助事業を通じて開発途上国における森林減少の抑止や持続可能な森林経営等の取組を支援するとともに、生態系を活用した防災・減災機能の強化に資する技術開発等を推進している。
事例1-13 パプアニューギニアにおける森林の減少と劣化に由来する温室効果ガス排出削減のための支援
パプアニューギニアは、国土面積が約4,600万ha、森林面積が約3,600万haと国土の約78%が森林であり、そのうち木材生産を目的とした生産林が約1,200万haとなっている。
森林から産出された丸太の輸出は同国の収入や雇用を支える一方で、商業伐採等による森林の減少と劣化は温室効果ガスの主な排出源となっており、持続可能な森林経営の実施が求められている。
我が国は、2010年から同国への気候変動対策支援の一環として実施してきた森林資源情報を把握・解析するための機材を提供する「環境プログラム無償資金協力」や、それらの機材を活用した森林資源のモニタリング能力の向上と、森林資源情報を管理するシステムの構築・活用、REDD+関連の情報整備等の取組を通じて、持続可能な森林経営に向けた環境整備の支援を行ってきた。
2022年に開始されたJICA技術協力プロジェクトでは、林野庁職員を含む専門家を派遣し、同国の森林公社による、1)商業伐採における伐採関連規則の遵守、2)伐採後の森林資源の回復、3)伐採事業により排出される炭素量のモニタリング手法開発の3つの分野で技術協力が進められており、森林公社職員や伐採事業体職員への研修等も実施されている。
本プロジェクトによる商業伐採におけるモニタリングの強化等を通じて、森林の減少と劣化が改善され、温室効果ガス排出削減に貢献することが期待されている。
(国際機関を通じた取組)
国際熱帯木材機関(ITTO)(*90)は、熱帯林の持続可能な経営の促進と熱帯木材貿易の発展を目的として1986年に設立された国際機関であり、横浜市に本部を置いている。加盟国は、生産国と消費国の計75か国及びEUである。2024年12月時点で、我が国は、ITTOへの資金拠出を通じて、計25件の生産国でのプロジェクト等を支援している。
2024年12月に開催された第60回国際熱帯木材理事会(ITTC60)では、ITTOの設置根拠となる「2006年の国際熱帯木材協定」の再交渉に向けたプロセスの方向性等が決定された。我が国は、東南アジアでの展開に続き、インドにおける「持続可能な木材利用の促進」プロジェクトへの支援を表明した。これらのプロジェクトを通じ、各国内の木材需要の開拓や市場ニーズに沿った木材製品の開発に向けた関係者の能力構築等による木材産業の安定化とアジアにおける地球温暖化対策に貢献することとしている(*91)。また、コートジボワールにおける食料生産等と調和した持続可能な森林経営の促進プロジェクト等への支援も表明した。
さらに、我が国はFAOへの拠出を通じ、森林保全と農業を両立し森林減少の抑止に有効なアプローチを浸透させる取組を支援している。2024年7月のFAO林業委員会(COFO27)のサイドイベントでは、当該取組により開発された、農業に関連した森林減少を引き起こす要因に対する解決策を政策担当者が学習するための研修モジュール等が紹介された。また、森林再生及び持続可能な森林経営と木材利用による、気候変動対策や生物多様性保全上の効果に関する調査・分析、その情報発信を支援している。
(*90)ITTOを通じた合法性・持続可能性が確保された木材等の流通及び利用の促進については、第3章第1節(4)148-149ページを参照。
(*91)林野庁ホームページ「第60回国際熱帯木材理事会の結果について」
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